OPECの思惑(日量200万バレルの減産)

イメージ:バルブ

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

2022年10月5日、OPECと非OPEC主要産油国で構成されるOPECプラスの第33回閣僚級会議がオーストリアのウィーンで開催され、11月からの生産量を日量200万バレル減産することで合意しました。

世界経済と石油市場を取り巻く環境の不確実性と、長期に渡る石油市場への影響力を強化する必要性を鑑み、先手を打った対応を取ったということが今回協調減産を決定した理由です。

OPECプラスが原油生産量を調整したのは、エネルギー価格の高止まりを狙ったものですが、これはアメリカなどインフレを抑制するために利上げをおこなっている国の政策と真逆の行動です。利上げによるエネルギー需要の減少を図ってもその分の供給が制限されてしまえば、需給バランスは均衡が保たれるため、供給過多になることがなく原油価格は高止まりしてしまう訳です。

2022年、世界のエネルギー需要は、前年よりも日量310万バレル増加し日量1億バレルに達すると見られています。今回決定した日量200万バレルの減産は、総需要の2%に相当する量の制限です。

アメリカのバイデン大統領が減産に失望したコメントを出すのは無理もありません。

今回決定した各国の生産量は次のとおりです。

11月からOPECプラスの生産量がどう変化するのか

イメージ:タンクローリー

OPECプラスメンバー国の原油生産量

OPEC加盟状況 国名 2022年8月時点の生産量 減産量 2022年11月以降の生産量
OEPC サウジアラビア 11,004 -526 10,478
ロシア 11,004 -526 10,478
OEPC イラク 4,651 -220 4,431
OEPC アラブ首長国連邦 3,179 -160 3,019
OEPC クウェート 2,811 -135 2,676
メキシコ 1753 0 1,753
OEPC ナイジェリア 1,826 -84 1,742
カザフスタン 1,706 -78 1,628
OEPC アンゴラ 1,525 -70 1,455
OEPC アルジェリア 1,055 -48 1,007
オマーン 881 -40 841
アゼルバイジャン 717 -33 684
マレーシア 594 -27 567
OEPC コンゴ 325 -15 310
バーレーン 205 -9 196
OEPC ガボン 186 -9 177
南スーダン 130 -6 124
OEPC 赤道ギニア 127 -6 121
ブルネイ 102 -5 97
スーダン 75 -3 72
OPEC加盟国 26,689 -1,273 25,416
非OPEC 17,167 -727 16,440
OPEC+合計 43,856 -2,000 41,856

出典:OPEC

今回決定した生産枠は、2023年12年まで継続される予定です。

OPECプラスメンバー国の中でもっとも多く生産しているのがOPEC加盟国のサウジアラビアと非加盟国のロシアです。今回の会合で日量200万バレルの減産が決まりましたが、サウジアラビアとロシアがそれぞれ52.6万バレルずつ減産するので、減産量の半分以上をこの2か国が受け持ちます。

現在、ロシアは西側諸国から経済制裁を受けている訳ですが、ロシアからするとアメリカやNATO加盟国の経済にダメージを与えられる行為をすることは、当然といえば当然です。また、輸出品の93%が原油であるサウジアラビアは、原油価格を高止まりさせるため産油国間の協調減産を強力に押し進めました。

ちなみに最近の原油価格の推移は次のとおりです。

WTI原油(2022年10月6日時点)

チャートWTI原油

(出所:TradingViewによるWTI原油チャート
チャートは直近1年間のものですが、100ドル/バレルを挟んだ展開が続いていました。
100ドル/バレル程度の価格がOPECプラスの産油国にとって丁度良い価格なのかもしれません。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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