LNG先物(液化天然ガス)、2022年4月上場

イメージ:EU国旗

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成したページです。
このページでは 2022年4月4日(月)、東京商品取引所のエネルギー先物市場に上場する「液化天然ガス(LNG)先物」について説明しています。

液化天然ガス(LNG)って何?

イメージ:パイプライン

LNGとは、Liquefied Natural Gasの略で、日本語では液化天然ガスと言います。天然ガスは常温では気体で、それを冷却して凝縮(液化)したものが液化天然ガスです。

地中深くから採掘された天然ガスは、気体の状態でパイプラインを通って各地に運ばれます。ユーラシア大陸や北米大陸には、パイプラインが整備されており、これを使って輸送するのが主流です。パイプラインが通っていない地域に輸送する際に利用されるのがLNGです。ガス田で採掘された天然ガスはパイプラインを通って、まず液化プラントまで運ばれます。

液化プラントまで運ばれた天然ガスをマイナス162℃まで冷却するとガスは気体から液体に変化します。天然ガスは液化することで体積が約600分の1に凝縮されます。それが「液化天然ガス(LNG)」です。

天然ガスを液体にすると、同じ容積で600倍の天然ガスを運ぶことができます。ガスタンカーで輸送する際やタンクに貯蔵する際に天然ガスを液化するのはそのためです。効率良く運搬するために、液化プラントは湾岸近くに構えられています。

 

LNGの取引単位

東京商品取引所に上場する液化天然ガス(LNG)の取引単位は1,000㎜Btuです。 ※㎜Btuはmillion British thermal unitの略です。Btuは英国熱量単位を表しています。1 Btuは、1ポンド(453.6グラム)の水を華氏60.5℉から1度上昇させるのに必要な熱量です。
1Btuをエネルギー量で表すと1.054kJ、カロリーで言うと0.252kcalです。millionなので、これを100万倍がしたものが1mmBtuになります。
1mmBtuはエネルギー量では1,054MJ、カロリーで言うと252,000kcalです。1mmBtuの天然ガスの容積では25キロリットルです。原油1Lのエネルギーは38.26J、9,139kcalなので、1mmBtuのエネルギー量は原油27.54リットルとほぼ変わりません。

液化天然ガスは、液化されることで25KL(25,000L)あった体積が41.6Lに凝縮されます。重さは18.7kgです。水の半分くらいの軽さです。

1mmBtuについてのまとめ
  •  1mmBtuをジュールで表すと1.054KJ
  •  1mmBtuをカロリーで表すと252,000kcal
  •  1mmBtuの天然ガス(気体)の容積は25KL
  •  1mmBtuの液化天然ガス(LNG)の容積は41.6L
  •  1mmBtuの液化天然ガス(LNG)の重さは18.7kg
  •  1mmBtuのエネルギー量は原油27.54L相当

世界ではどのくらいの天然ガスが利用されているのか

イメージ:パイプライン

2020年世界で生産された天然ガスは4014bcmでした。

bcmというのは、天然ガスで使用される体積の単位でBillion Cubic Metersの頭文字を取ってbcmと表現します。1bcmは1立方kmです。2020年に生産された天然ガスは4014立方kmでした。一年間で琵琶湖の水146杯分の天然ガスが生産されました。

天然ガスはどこで取れるのか。

 

天然ガスの生産国

生産国 bcm %
米国 949 23.6
ロシア 722 18
イラン 235 5.9
中国 191 4.8
カナダ 184 4.6
カタール 167 4.2
オーストラリア 148 3.7
ノルウェー 116 2.9
サウジアラビア 99 2.5
アルジェリア 92 2.3
その他の地域 1,111 27.5
  4,014 100

出典:IEA

現在世界で最も天然ガスを採掘している国はアメリカ、ロシアの順です。アメリカは世界最大のエネルギー消費国ですが、世界最大の天然ガス生産国でもあります。ウクライナ情勢で注目が集まっているロシアは、世界で生産される天然ガスの18%を生産しています。
ロシアが生産する天然ガスが世界経済に与える影響はとても大きなものになっていることが、データからも解りますね。

どの国が輸出しているのか

 

天然ガスの輸出(2021)

輸出国 bcm
ロシア 230
カタール 127
ノルウェー 111
オーストラリア 103
米国 77
トルクメニスタン 56
カナダ 47
アルジェリア 41
ナイジェリア 27
マレーシア 22
その他 176
合計 1,017

出典:IEA

アメリカの天然ガス生産量は世界全体の23.6%(949bcm)を占めますが、国外に輸出された量は77bcmに過ぎません。米国は生産した天然ガスのほとんどを自国で消費してしまいます。
2021年、世界で最も天然ガスを輸出している国はロシアでした。世界で輸出されている天然ガスの20%以上がロシアによるものです。
今後、ロシアへの経済制裁によって輸出量が減少することが予想されますが、代替国を探すのは簡単な事ではなさそうですね。
2位のカタールは2019年にOPECを脱退したことで有名です。カタールは原油輸出国から天然ガス輸出国に変貌を遂げています。

どこの国が輸入しているのか。

天然ガスの輸入(2021)

  bcm
中国 125
日本 105
ドイツ 83
イタリア 66
メキシコ 64
韓国 54
トルコ 47
フランス 37
イギリス 34
インド 34
その他 324
合計 973

出典:IEA

天然ガスを多く輸入している国は中国、日本、ドイツの順で続きます。世界最大の天然ガス生産国であるアメリカを除けば、GDP規模の大きい国が輸入国上位に並びます。

世界で2番目の天然ガス輸入国日本

イメージ:パイプライン

日本は中国に次いで世界で2番目の天然ガス輸入国ですが、どうやって天然ガスは日本まで運ばれているのでしょうか。

日本は島国なので、大陸のようにパイプラインによる天然資源の輸送ができません。そこで利用されるのがLNG(液化天然ガス)です。天然ガスをマイナス162℃まで冷却し、体積を600分の1に圧縮し、液体になったLNGをLNGタンカーという特殊な船舶で日本まで運んできています。

では、日本は輸入した天然ガスを何に使っているのでしょうか。

 

日本の天然ガスの用途別消費量

日本の用途別天然ガス使用量

※出典:エネルギー白書2021(資源エネルギー庁)

日本では天然ガスの59.6%が発電に利用され、33.8%が都市ガスに利用されます。

日本に運ばれたLNG(液化天然ガス)は一度LNGタンクに貯蔵された後、再び気化され、発電所や都市ガスに利用されています。

都市ガスとして利用する際には、熱量の調整と臭い付けが行われています。天然ガスは無色透明無臭ですから、そのままの状態でガス漏れしても私たちは気が付くことができず、大きな事故になる可能性があります。そうならないように都市ガスにはわざと臭い付けがされています。私たちが不快な臭いだと思っていたのは、後から付け加えられた成分(メルカプタンなど)の臭いだったんですね。

都市ガス製造プラントから送り出された都市ガスは、ガス管を通って、工場や一般家庭に送られます。

地球環境にやさしい天然ガス

イメージ:パイプライン

地球温暖化対策への取り組みとして、温室効果ガスの排出量を抑制することは大きな課題です。
天然ガスには、他の化石燃料と比較して、燃焼された時に排出される温室効果ガスの排出量が少ない特性があります。

例えば石炭を100とした際の温室効果ガスの排出量は次のとおりです。

 

天然ガスの環境特性

天然ガスの環境特性

出典:日本ガス協会

地球温暖化の原因とされている硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)などの排出量が他の化石燃料と比較してとても少なくなっています。

火力発電所で使用する燃料を石炭や石油から天然ガスに変更することで、排出する温室効果ガスの排出量を減らすことができるので、SDGsの観点からもLNGは、地球環境にやさしい資源だと言えます。特に硫黄酸化物(SOx)は全く排出されません。

世界の資源別エネルギー供給量(2019)

EJ ウエイト
石炭 162.4 26.8%
石油 187.4 30.9%
天然ガス 140.8 23.2%
原子力 30.5 5.0%
水力 15.2 2.5%
バイオ燃料・廃棄物 56.8 9.4%
その他 13.5 2.2%
全世界 606.6 100.0%

※出典:IEA

世界のエネルギー供給量を資源別にみると石油、石炭に次いで多いのが天然ガスです。1年間の供給量は140.8EJでエネルギー市場におけるシェア率は23.2%でした。現在天然ガスは私たちの生活に必要な重要資源のひとつとなっています。地球温暖化対策を加速するためには、天然ガスのウエイトを拡大していく必要があります。

※単位のEJは、エクサジュールと読みます。
E(エクサ)は倍率を表し、J(ジュール)はエネルギーの大きさを表しています。

倍率の考え方は、パソコンの容量と同じで、
K(キロ)→M(メガ)→G(ギガ)→T(テラ)→P(ペタ)→E(エクサ)の順番で大きくなっていきます。E(エクサ)は10を18乗したものです。

Jジュールは、102.0g(単1マンガン電池程度)の物体を1m持ち上げるエネルギー量を指しています。

LNG先物取引について

イメージ:パイプライン

今回上場される銘柄は、「液化天然ガス先物」、正式名称は「LNG(プラッツJKM)先物」です。

 

プラッツJKMとは

プラッツJKMとは、S&P Global Plattsが評価・発表しているLNGのスポット価格指標です。JKM というのは、Japan Korea Markerの略で日本、韓国など東アジア地域に届けられるLNG価格が価格評価の対象です。LNGの現物取引はスポット取引と3ヶ月、6ヶ月以上といったターム(中長期)契約に分類できます。ターム取引では原油価格に連動して取引価格を決定していますが、スポット取引では、その時のLNG需給によって価格を決定する特徴があります。
今回上場するLNG(プラッツJKM)先物は、東アジア向けスポットLNGの指標価格です。

液化天然ガス先物/LNG(プラッツJKM)先物の取引概要

取引対象 日本及び韓国を仕向け地とする仕向港着船渡条件でスポット取引されるLNG
取引単位 1,000mmBtu
呼値の単位 0.1円
限月取引 15限月制
最終取引日 当月限が属する月の前月15日(15日が休業日にあたるときは順次繰り上げ) ※2022年6月限の場合、2022値5月13日(金)
取引時間 8時45分-15時15分、16時30分-6時00分
決済方法 現金決済
最終決済価格 プラッツが日々発表するJKM価格の月間平均(前々月16日-前月15日)の円換算値

私たち人類が抱えている様々な問題が天然ガス市場に関係してきています。現在発生しているロシアのウクライナ侵攻問題の行方によっては、急激な価格変動がおきる可能性がありますので、お取引の際にはリスク管理に十分ご注意ください。

LNG取引についてのお問合せは、フジトミ証券、オンライントレード部までお願いします。

金先物や原油先物などデリバティブ取引ならフジトミ証券のFITS

フジトミ証券株式会社が提供するオンライン商品先物取引「FITS」は、初めての人でも安心して取引できることを第一に考えて作ったオンライントレードシステムです。

投資家お役立ち情報

商品デリバティブ取引経験がない人でも解る初心者向けページ