政策金利とコモディティ価格
この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。
「どっちでも一緒でしょ。」
そう言われてしまいそうですが、この記事のタイトルを「政策金利とコモディティ価格」とするか、「コモディティ価格と政策金利」とするか悩んだ結果、「政策金利とコモディティ価格」にしました。
国語が苦手だったのであまり自信がありませんが、「あなたと私」「私とあなた」この二つの表現はニュアンスが違うような気がします。「あなた」なのか「私」なのか、先にきた方が“主”で、後になった方が“従”になるように感じませんか?
「コモディティ価格」は「政策金利」の影響を受けて変動しているので、「政策金利とコモディティ価格」とした方がしっくりくると思います。
政策金利がコモディティ価格に与える影響
前置きが長くなってしまいましたが、7月のFOMCが開催され、アメリカの政策金利はこれまでよりも0.75ポイント高い2.25-2.50%に引き上げられました。
政策金利の変更は、金(ゴールド)や原油などの国際商品(コモディティ)の価格にどのような影響を及ぼしているのか。
値動きから見ていきたいと思います。
金先物(COMEX)
(出所:TradingViewによる金先物(当限つなぎ足)チャート)
チャート上の青い縦線はFOMCの利上げ決定日(3/16、5/5、6/16、7/28)を表しています。
金の値動きを見ると利上げが確定する数週間前から値下がりしていることにお気づきでしょうか。
政策金利は発表されるまで確定しませんが、アナリストによる事前予想が発表されているため、金利が何%になるのかを相場に織り込みながら金価格は変動します。
保有していても金利を生まない金は、金利上昇局面では魅力が薄れてしまいますので、そのことが値動きとして表れています。
2月に始まったロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まりから3月には2,000ドルを超える水準まで上昇した金価格ですが、その後は度重なる利上げの影響で値下がりしてしまいました。
WTI原油先物(NYMEX)
(出所:TradingViewによる軽質スイート原油(当限つなぎ足)チャート)
原油先物価格については、先に見た金先物のような規則性を確認することはできません。
「政策金利と原油先物価格」
この二つは全く関係ないようですが、そもそもなぜ世界で利上げが始まったのかという理由を考えるとその関係性が見えてきます。それは、利上げの目的が物価上昇を抑えることだということです。
次のグラフは、アメリカ労働省が発表した消費者物価指数(CPI)の年間変動率です。
米消費者物価指数(前年同月比)
出典:米労働省
全体を通じて物価が上昇していますが、他の商品と比べ物にならない程上昇しているのが「エネルギー価格」です。6月時点で前年同月比41.6%も上昇してしまっています。
現在起きている世界的な物価上昇を引き起こしているのは「エネルギー価格」の上昇ですので、エネルギー価格が下がらない限り物価全体が下がることはありません。
もう一度WTI原油先物(NYMEX)のチャートをみてください。
前回6月前半に付けた高値以降、合計で1.5ポイントの利上げが実施されていますが、その効果が出て、原油価格はピークから20ドル以上値下がりしています。
政策金利とWTI原油価格は密接な関係にあると言えますね。
利上げの効果を確認するのであれば、WTI原油価格がどうなっているのかを見ることが手っ取り早い方法なのかもしれません。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
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