ネガティブ要因と投資

ネガティブ要因と投資見出し

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)の岩井が作成したページです。
ロシアへの経済制裁が商品(コモディティ)相場に与える影響について分かりやすく説明しています。

ウクライナに軍事侵略したロシアに対して各国がおこなっている経済制裁は、ロシア経済に大きな影響を与えますが、経済制裁は諸刃の剣なので、西側諸国にも大きな影響を及ぼします。

例えば、ロシアに投資していたり、貿易をおこなっていた企業は多額の不良債権が発生するリスクがあります。3月1日、アメリカのエクソンモービルがサハリンでのエネルギー開発事業「サハリン1」から撤退するとの発表がありました。すでに「サハリン2」からは英国のシェルが撤退を表明しており、共同出資している日本企業にも大きな痛手となりそうです。

ロシアに投資している認識がない人でも、投資信託を保有している方は注意が必要です。例えば、全世界(オール・カントリー)型や新興国型の投資信託には、ロシアが組み込まれていることも多いので、資産が減少してしまう危険性があります。

現在の世界経済はウクライナ情勢に左右されやすい状態ですよね。今回は、ロシアがどんな国なのか。基本的なところからおさらいしてみたいと思います。

1.ポジティブとネガティブ

イメージ:ポジティブとネガティブ(天使と悪魔)

相場変動をポジティブとネガティブに分類すると株価はポジティブ、コモディティはネガティブに分類できます。私はポジティブな気分でコモディティ投資を行っているという方もいらっしゃるかもしれませんが、投資家の心情を表しているのではありません。

多少偏った考え方ですが、それぞれの相場が上げ材料として捉えるのは、株はポジティブな情報、コモディティはネガティブな情報になる傾向があります。

例えば、「ある企業で新商品が発売された。」「景気が好調で売上が期待できる。」「収益が上昇した。」「設備投資が実施され今後の生産量増加が期待できる。」など、明るいニュースが報道されると人々の投資意欲が刺激され株式の購入量が増加し株価が上昇する傾向にあります。

逆に戦争や侵略、テロ、暴動、災害などのネガティブな情報や不確実性の高い情報が報道されるとリスク回避の動きから実物を伴っているコモディティに資金が集まりやすくなります。

満期まで保有していた際に元本割リスクがない債券や、発行体リスクがない貴金属などの需要は、社会情勢がネガティブになればなるほど高まる傾向にあると言えます。

このようなネガティブな要素を「地政学的リスク」と言います。

相場情報やコメントを読んでいて「地政学的リスク」という言葉を目にしたことはありませんか?

2.地政学的リスクとは?

イメージ:地球

「地政学」とは、特定の国の地理的条件のもとに他国との政治的関係性にアプローチする学問です。特定の地域における政治的・軍事的緊張感の高まりによって関係する国・地域や世界全体の経済が不安定な状態になることを「地政学的リスク」といいます。

この地政学的リスク問題が頻繁に発生する地域が大きく分けて2つあります。一つ目がヨーロッパ、二つ目が中東です。

現在地政学的リスクとして報道されるトピックスのほとんどはどちらかの地域で発生しています。

 

① ヨーロッパでの衝突

イメージ:地球儀、東ヨーロッパとロシア

主にロシアとNATO・EUとの間で発生する衝突です。

NATO(北大西洋条約機構)は世界の主要国際機関の一つで、欧州および北米の30ヵ国が加盟する政治的・軍事的同盟です。設立は1949年で当初はソ連を中心とした共産圏に対抗する西側諸国の軍事同盟として発足しました。
ソ連が崩壊するまでは、ソ連と東ヨーロッパ諸国が結成した軍事同盟「ワルシャワ条約機構」との間で対立する構図となっていましたが、1989年に起きた東欧革命で東ヨーロッパの共産主義体制が崩壊した後、ワルシャワ条約機構は解体され、NATOは存在意義を失いました。その後、軍事的脅威の対象を周辺の紛争地域に拡げ、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける内戦やコソボ紛争などの際に軍事行動を行っています。

そして、今はNATOとロシアが対立する構図がより明確になっています。

ロシアと東ヨーロッパを地図上で見るとご覧のような位置関係に成ります。

東ヨーロッパとロシア

ロシア本土と陸地で接しているヨーロッパ諸国はフィンランド、ノルウェー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナの7ヶ国です。

そのうち、ノルウェー、エストニア、ラトビア、リトアニアの4ヶ国はNATO加盟国です。
フィンランドは長い間NATO、ロシア側のどちらにも属さない中立政策を取っていましたが、2022年に入ってからNATO加入の権利を主張し始めました。
残ったベラルーシ、ウクライナはNATO加盟国ではありません。

ベラルーシ共和国

ベラルーシは、民族的な近さもあり伝統的な親ロシア国でNATOへの加盟は考えられません。ベラルーシの首都ミンクスからロシアの首都モスクワまでの距離は僅か700km程度です。日本で言うと東京-岡山間くらいの距離です。

ベラルーシはロシアとNATO加盟国との緩衝地的意味合いを持っています。緩衝地は、いざ争いが発生した際に大国同士直接の争うのではなく、争いの場が緩衝地でおこなわれることで規模を縮小させることが期待できる国や地域を指します。

ベラルーシの南側に位置するのがウクライナです。

ウクライナ

ウクライナは2019年2月の憲法改正により、将来的にNATO加盟を目指す方針を確定させました。

ウクライナのNATO加入を良しとしないのがロシアです。ウクライナとロシアの国境からモスクワまでの距離は500km程度しかありません。これまで緩衝地として機能していたウクライナがNATOに加盟国に加盟することは、目と鼻の先にNATOの侵攻を許すことになってしまうので、ロシアとしてはこれを阻止したいはずです。

2022年1月26日現在、NATOメンバー国がロシアのウクライナ進行を阻止しようとしているのはそのような背景があります。

日本は、NATOのグローバル・パートナー国なのでNATO贔屓に物事を考えがちですが、緩衝地が無くなると、大国と大国が直接争うことになり大きな戦争に発展してしまう危険性が高まってしまいます。

力の均衡がとれた状態が理想的だと考えられます。

② 中東での衝突

宗教や考え方など様々な要因で常にいざこざが絶えない地域です。
たくさんの国がありますが、キーとなるのは、イラン、イスラエル、サウジアラビア、シリア、トルコの5ヶ国です。
中東で地政学的リスクが発生した際、ほとんどの場合でこの5ヶ国の名前が入っています。

どうして中東ではいざこざが絶えないのか。

イメージ:3枚舌外交(虫歯)

元をたどると第一次大戦中にイギリスが行った三枚舌外交が原因だと言われています。
三枚舌外交とはイギリスが第一次大戦中におこなった矛盾する3つの協定のことを指します。サイクス・ピコ協定、フサイン・マクマホン協定、バルフォア宣言の3つです。

  • サイクス・ピコ協定は、イギリス、フランス、ロシアで結ばれた秘密協定で、大戦終了後の領土分割を取り決めたもの
  • フサイン・マクマホン協定は大戦後、アラブ人独立国建設を支持すると約束したもの
  • バルフォア宣言は戦後パレスチナでのユダヤ人国家建設に同意したもの

オスマン帝国が治めていた中東は、この矛盾する3枚舌外交によって分断されました。
100年以上前にイギリスが引き起こした密約によって始まったこの問題は今も続いています。宗教や利権、領土など問題が絶えない地域です。

中東の地政学的リスクがもたらす影響

中東には世界有数の産油国が位置しています。そこには多くの利権が絡んでいます。
中東で起きた地政学的リスクはエネルギー供給に与える影響も大きなものになっています。

特に日本は原油消費量の89.6%を中東地域からの輸入に依存しているので、中東エリアで地政学的リスクが発生すると直接的影響を受けてしまいます。

グラフ:原油輸入量

※出典:経済産業省「資源・エネルギー統計」

他にもあるネガティブな材料

イメージ:米軍ヘリ

地政学的リスク以外でもネガティブな要因はいくつも存在します。

  • 台風の影響で製油所が使えなくなった。
  • パイプラインが爆破された。
  • タンカーが海賊に襲われた。
  • ハリケーンで畑に被害がでた。
  • 金鉱山でストが実施された。

これらはネガティブな情報ですよね。
企業から見ると供給が減少し、収益が減少するのでマイナス材料ですが、供給が減少するということは、供給量不足を引き起こすので、コモディティの価格にとっては上昇材料になります。

ネガティブな情報が報道された時、コモディティ投資ではチャンスになります。
ポートフォリオの一部にコモディティを組み込むことをお勧めします。


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