ロシアへの経済制裁と商品先物相場

イメージ:ロシア国旗

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)の岩井が作成したページです。
ロシアへの経済制裁が商品(コモディティ)相場に与える影響について分かりやすく説明しています。

ウクライナに軍事侵略したロシアに対して各国がおこなっている経済制裁は、ロシア経済に大きな影響を与えますが、経済制裁は諸刃の剣なので、西側諸国にも大きな影響を及ぼします。

例えば、ロシアに投資していたり、貿易をおこなっていた企業は多額の不良債権が発生するリスクがあります。3月1日、アメリカのエクソンモービルがサハリンでのエネルギー開発事業「サハリン1」から撤退するとの発表がありました。すでに「サハリン2」からは英国のシェルが撤退を表明しており、共同出資している日本企業にも大きな痛手となりそうです。

ロシアに投資している認識がない人でも、投資信託を保有している方は注意が必要です。例えば、全世界(オール・カントリー)型や新興国型の投資信託には、ロシアが組み込まれていることも多いので、資産が減少してしまう危険性があります。

現在の世界経済はウクライナ情勢に左右されやすい状態ですよね。今回は、ロシアがどんな国なのか。基本的なところからおさらいしてみたいと思います。

1.ロシアはどんなものを世界に輸出しているのか。

イメージ:ウラジオストック

2020年ロシアが世界に輸出した品目は次のとおりでした。

 

ロシアの輸出(2020年)

品名 輸出
鉱物製品 172,862
(燃料・エネルギー製品) 167,610
金属および同製品 34,890
貴石・貴金属および同製品 30,360
食料品・農産物 29,585
機械・設備・輸送用機器 25,120
化学品・ゴム 23,930
木材・パルプ製品 12,362
繊維・同製品・靴 1,484
合計 337,105

※単位:100万ドル 出典:JETRO、連邦税関局

年間で3,371億ドル(約37兆円)規模の輸出が行われており、その半分は燃料・エネルギー製品などの鉱物製品です。エネルギー以外では金属や貴金属などが多く輸出されています。

 

世界の原油生産量(2019年)

イメージ:地球

※出典:今日の石油産業2020(石油連盟)

2019年のデータですが、ロシアの原油生産量は1145万バレル/日で、世界の供給量に占める割合は、12.1%でした。日本の場合、原油はサウジアラビア、UAE、カタールなど中東から輸入しているので、直接的な影響はありませんが、地球全体で見れば、世界のエネルギー供給量が大幅に減少することになり、価格への影響は避けられそうにありません。

2.資源大国であるロシア

イメージ:地球

ロシアから世界に供給されていた資源はエネルギーだけではありません。どのような資源が輸出されているか。生産量が多い資源をわかる範囲でまとめてみました。

 

① アスベスト

アスベスト生産量(2021年)

1 ロシア 720,000
2 カザフスタン 250,000
3 中国 120,000
合計 1,200,000

現在日本では、アスベストの利用は禁止されていますが、世界では年間120万トンほど消費されています。世界シェアの6割がロシア産です。

② 工業用ダイヤモンド

工業用ダイヤモンド生産量(2021年)

1 ロシア 15
2 コンゴ 11
3 オーストラリア 8
合計 45

ロシアは世界一工業用ダイヤモンドを生産する国で、その在庫量も世界一です。世界シェアの3分の1がロシア産です。

③ 宝石原石

宝石原石生産量(2021年)

1 ロシア 18,000
2 カナダ 13,000
3 ボツワナ 12,000
合計 63,000

ロシアは世界で最も宝石が採掘される国です。世界シェアの29%がロシア産です。

④ 金(Gold)

金(ゴールド)生産量(2021年)

1 中国 370
2 オーストラリア 330
3 ロシア 300
合計 3,000

現在日本では、アスベストの利用は禁止されていますが、世界では年間120万トンほど消費されています。世界シェアの6割がロシア産です。

⑤ 窒素(固定)-アンモニア

窒素(固定)-アンモニア生産量(2021年)

1 中国 39,000
2 ロシア 16,000
3 アメリカ 14,000
合計 150,000

窒素は植物の育成に欠かせない主成分です。とうもろこしの大量生産など窒素資料の需要が継続的に維持されています。ロシアの生産量は世界第2位です。

⑥ 白金(プラチナ)

プラチナ生産量(2021年)

1 南アフリカ 130,000
2 ロシア 19,000
3 ジンバブエ 15,000
合計 180,000

日本では結婚指輪などの装飾品として人気ですが、世界的には工業品としての需要が多い貴金属です。主に自動車触媒、宝飾品などで利用されています。ロシアの生産量は南アフリカに次いで世界第2位です。

⑦ パラジウム

パラジウム生産量(2021年)

1 南アフリカ 80,000
2 ロシア 74,000
3 カナダ 17,000
合計 200,000

パラジウム需要の80%が自動車触媒に利用されます。プラチナがディーゼル車の触媒に利用されているのに対し、パラジウムはガソリン車の触媒に利用されています。ロシアの生産量は南アフリカに次ぐ2位です。上位2か国で世界需要の約80%をカバーしています。

⑧ 炭酸カリウム

炭酸カリウム生産量(2021年)

1 カナダ 14,000
2 ロシア 9,000
3 ベラルーシ 8,000
合計 46,000

ガラスの原料や石鹸などに利用されています。ロシアとベラルーシを合わせると世界生産の37%にもなります。

⑨ 硫黄

硫黄生産量(2021年)

1 中国 17,000
2 アメリカ 8,100
3 ロシア 7,500
合計 80,000

火薬、マッチ、医薬品などの原料として利用されています。ロシアの生産量は世界第3位です。


ロシアでは、色々な天然資源が採掘されていますね。
自動車や家電などの製品は、世界中の工場で生産されていますので、どこかの工場で供給が停止したとしてもその分を別の工場で生産することも可能ですが、天然資源の場合はそういきません。天然資源は採掘できる場所が決まっているため、簡単に代替地を見つけることができない訳です。ロシアへの制裁によって、世界に供給される天然資源の量が大幅に減少します。天然資源を加工して作られる商品、肥料として作られる農産物など色々な価格に影響がでてきそうですね。

3.直接影響を受けそうな国内商品先物銘柄

イメージ:先物取引

日本の先物市場で取引されている、原油、金、プラチナ、パラジウムの4銘柄については、ロシアへの依存度が高いため、大きく影響してきそうです。

 

原油

(出所:TradingViewによる原油チャート

 

金(ゴールド)

(出所:TradingViewによる金チャート

 

プラチナ

(出所:TradingViewによる白金チャート

 

パラジウム

(出所:TradingViewによるパラジウムチャート

ご覧のような値動きになっています。
天然資源の宝庫であるロシアへの経済制裁は、日本の商品先物市場にも大きな影響を及ぼしています。
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