日本のロシア産エネルギー依存度

イメージ:サイコロに座る人

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

「サハリン2」問題とロシアへの依存度

先週末、ロシアのプーチン大統領は「サハリン2」の事業主体である「サハリン・エナジー」の資産を、ロシアの新会社に無償で引き渡すことを定めた大統領令に署名しました。

日本人からするとものすごく理不尽な決定ですが、このようなカードが切られた以上、今後、ロシアとどう付き合っていくのか、日本は大きな決断に迫られていると思います。

ロシアからエネルギーの供給が停止した場合、日本にどのくらいの影響があると思いますか。

次のグラフは、2022年5月の日本の原油輸入状況を国別にみたものです。

日本の原油輸入相手(2022年5月)

イメージ:日本の原油輸入相手(2022年5月)

出典:石油統計速報-経済産業省

日本は、原油輸入量の45%をUAEから輸入し、34%をサウジアラビアから輸入しています。ロシアからの原油輸入量は全体の1%程度でしかありません。

ロシアによるウクライナ侵攻前と比べるとどうなのでしょうか。

1年前の原油輸入状況は次のとおりでした。

日本の原油輸入相手(2021年5月)

イメージ:日本の原油輸入相手(2021年5月)

出典:石油統計速報-経済産業省

日本が輸入していた原油の6%がロシアから輸入されたものでした。ロシアへの経済制裁からロシア産原油の輸入量が大幅に減少したことが分かります。

地域・国名 2022年5月 2021年5月 前年同月比
UAE 5,748,201 4,633,979 1,114,222
サウジアラビア 4,302,238 4,064,756 237,482
カタール 882,539 1,268,868 -386,329
クウェート 882,034 862,689 19,345
エクアドル 324,099 324,099
オマーン 238,026 79,477 158,549
メキシコ 157,285 157,285
ロシア 103,468 696,531 -593,063
合計 12,828,203 11,908,957 919,246

出典:石油統計速報-経済産業省

ロシアからの輸入量は1年間で59万kl減少したため、全体の輸入量がどう変化したのか気になるところですが、日本の原油輸入量は、この1年間で91万kl増加していました。

全体の輸入量の増加分は、UAEからの輸入量を増やしたりエクアドルやメキシコといった新たな輸入元を加えたことでカバーできています。

日本は、ロシアからの輸入量が減った分を他の産油国から補填することができているのでライフラインが止まってしまう心配はなさそうですね。

ちなみに5月のロシア産天然ガス輸入量は昨年より6万トン減少しましたが、全世界からの輸入量は60万トン増加しています。

日本の場合、天然ガスの供給をオーストラリア(43%)とマレーシア(16%)に大きく依存していますので、ロシアからの天然ガス輸入量が減少しても他の産油国からの輸入量を増やせればカバーできてしまいます。

ロシアとの関係をどうするのか、決断に迫られていますが、大切なのは、他の産油国と良好な関係を維持しエネルギーを安定的に確保することです。

ウクライナ情勢からエネルギー需給に関するニュースを目にする機会が多いと思いますが、局地的事象だけではく全体ではどうなっているのか。そちらに注目すべきなのでしょうね。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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