商品先物市場における為替の影響

イメージ:ニューヨーク

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

皆さんは、資産運用をおこなう際、「」で取引していますか。それとも「ドル」で取引していますか。

この記事をご覧になっている方のほとんどは「」で取引していると思います。何を当たり前のことを言っているんだ、と言われてしまいそうですが、お客様と会話するとドル建て相場の話を熱心にされる方がいらっしゃいます。

たしかに、ニュースを見るとWTI原油が「100ドル」を割り込んだとか、NY金が「2,000ドル」まで上昇した、といった具合にアメリカ市場の話がよく報道されています。

2022年10月28日現在、アメリカのWTI原油先物は、88.13ドル/バレル、NY金先物は、1668.1ドル/トロイオンスで取引されています。特に原油に関しては最近のエネルギー問題に直結しているので、投資をしていない方でもおおよその価格を知っている人が多いのではないでしょうか。

では、問題です。


日本市場で取引されている原油(プラッツドバイ原油)の価格はおおよそいくらでしょうか?


正解は、75,620円/キロリットル(2022年10月28日現在)でした。


ほとんどの方が答えられなかったと思います。

因みにWTI原油というのは、アメリカのテキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油で一日あたり50万バレル程度しか産出されていません。当然のことながら、日本には輸入されていません。

海の向こうの原油価格がだいたい何ドルなのかを知っているのに、自分の国で取引されている原油価格を知らないなんて不思議なことだと思いませんか。当社を含め、メディアでのプロモーションが足りないことが原因なのかもしれませんね。

話が少し脱線してしまいましたが、一般投資家が投資するうえで重要なのは、その価格変動がどうなったかですよね。

次のチャートは、WTI原油と東京商品取引所で取引されている原油価格を比較したものです。

グラフ1.WTI原油とTOCOM原油(2021年10月28日=100)

イメージ:WTI原油とTOCOM原油チャート
(出所:TradingViewによる原油チャート

1年間で価格がどのように変化したのが解るよう、今日から1年前の価格を100としています。オレンジの線が「WTI原油」、青の線がTOCOMで取引されている「プラッツドバイ原油」の価格です。両者を比べるとプラッツドバイ原油の方が高値で推移していることがわかります。2022年10月28日に観測した年間パフォーマンスはWTI原油が6.29%のプラスだったのに対してプラッツドバイ原油は38.74%のプラスでした。プラッツドバイ原油の方が好成績だった訳ですね。

どうしてこのような結果になるのか。

最大の要因は為替相場の変動が大きな影響を及ぼしているからです。先ほど見たグラフ1.に為替相場の変動を追加したものが次のグラフ2です。

グラフ2.WTI原油とTOCOM原油と為替(2021年10月28日=100)

イメージ:WTI原油とTOCOM原油と為替チャート
(出所:TradingViewによる原油チャート

ピンクで表示したのが為替(米ドル円)相場の変動です。1年前と比べて28.92%も円安に振れています。理論上、ドル建ての価格に為替レートを掛けたものが円建てのレートなので、ドル建ての変動率に為替レートの変動率を掛けると円建ての変動率になります。

ドル建ての変動率  ・・・6.29%のプラス
為替レートの変動率 ・・・28.92%のプラス

両者を掛け合わせたものが理論上の円建て変動率になるので、現在、日本の相場変動に与えている影響は原油そのものの変動よりも為替の影響の方が大きいと言えます。

原油相場は、世界中で人気のあるコモディティ投資です。今話題になっている電気・ガス料金やクルマのガソリン代など、原油価格の変動は私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。日本での円建ての原油価格は、為替が円高に振れないのであれば、しばらくは高止まりするのかもしれませんね。

原油をトレードする際は、為替変動に注意してください。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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