サハリン2をロシアが接収???

イメージ:樺太

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって4カ月が経過しました。

日本のメディアではウクライナ情勢に関してあまり報道されなくなってきているので戦火は落ち着いたと誤解してしまいそうですが、今でもウクライナ東部ルハンシク州では、ロシアによる攻撃が続いており、戦争は長期化しています。

ウクライナ問題が長引けば長引くほどロシアと西側諸国との隔たりはより深くなり、エネルギー・食料に関する問題もより深刻なものになってしまいます。

改めてお伝えすると2021年時点でロシアは世界最大の天然ガス輸出国でした。
年間230bcmの天然ガスが世界に輸出されており、そのうち70%以上が欧州で消費されていました。特にドイツ、イタリア、フランスなどは大量にロシア産天然ガスを輸入していました。今になってみればとても平和な関係だったんですね。

戦争への制裁として欧州がロシアからの輸入を停止させることは、自国経済に大きなダメージを与えることになってしまうため、簡単にはできませんでした。

ちなみロシアから国外に向けて設置されている天然ガスパイプラインのほとんどは欧州につながっています。

日本の場合はロシアとパイプラインで直接つながっている訳では無いので、気体状態の天然ガスをマイナス162℃まで冷却し、液化させたLNG(液化天然ガス)をガスタンカーを使って輸送していました。

その為、日本が輸入していた天然ガスの量はそれほど多くありませんでした。

今日になって新たな問題が発生しました。それが「サハリン2」の問題です。

「サハリン2」とは北海道の北側、樺太で行われていた石油および天然ガスの開発プロジェクトです。11億バレルの原油と18兆立方フィートの天然ガスが採掘可能と推定されていました。

このサハリン2プロジェクトは、サハリン・エナジー・インベストメント社が事業主体を担っていました。会社の設立は1994年4月で、ロシアのガス大手「ガスプロム」が50%、イギリスの石油大手シェルの子会社が27.5%、三井物産の子会社が12.5%、三菱商事の子会社が10%の出資をおこなっていましたが、シェルはロシアがウクライナに侵攻して早々、サハリン2から撤退することを表明していました。

サハリン2は、樺太で開発を進めていたプロジェクトなので、日本までの距離も短く、実現すれば日本は大きな恩恵があったはずです。

そんなサハリン2がとんでもないことになってしまいした。

なんと、ロシアのプーチン大統領は6月30日、運営会社資産をロシアが新たに設立する会社に無償で引き移すことを定めた大統領令に署名し、サハリン2プロジェクトが接収されてしまいました。

これまでの出資分がどうなるのかは分かりませんが、このような大統領令が出されたことを考えると今までどおりとはいかなそうです。

現在のエネルギー市場は、ロシアの行動・ロシアへの制裁に振り回される不安定な状況が続いています。

現在、エネルギー価格のベンチマークであり、ニューヨークで取引されているWTI原油は約4カ月の間100ドルを上回る水準での取引が続いています。

WTI原油

日本市場では東京商品取引所のエネルギー市場にドバイ原油が上場しています。

ドバイ原油

WTI原油は、アメリカで採掘される原油、日本の先物市場で取引される原油は中東産原油を取引対象としていますが、どちらも原油には変わりがないのでどちらも同じような値動きをするのですが、チャートを見くらべると少し形が違って見えると思います。

この違いは、WTI原油がドル建てで取引されているのに対して、日本のドバイ原油は円建てで取引されていることによるものです。

現在のドル円相場は20年ぶりの円安が続いており、その影響からドバイ原油は高値水準での取引が続いています。

今の値段が一時的なものなのか。それともこの水準での取引が続くのかは分かりませんがロシア情勢が落ち着くまでは不安定な相場展開が続くと考えられます。

原油価格の変動と相関性が高い商売をおこなっている方は、原油先物取引を使ったヘッジを検討してみてはいかがでしょうか。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

金先物や原油先物などデリバティブ取引ならフジトミ証券のFITS

フジトミ証券株式会社が提供するオンライン商品先物取引「FITS」は、初めての人でも安心して取引できることを第一に考えて作ったオンライントレードシステムです。

投資家お役立ち情報

商品デリバティブ取引経験がない人でも解る初心者向けページ