下落基調時の対応方法
この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。
NY株式市場は、企業業績悪化懸念から主要3指数とも下落基調が続いています。いずれも年初来安値に近い水準で取引が続いており、もう一段下げる毎に安値を更新する展開になっています。
最近では、株価指数を取引対象としたインデックス投資をおこなっている投資家が増えていますが、今の価格水準を見る限り、ここ最近取引を開始した人の多くは含み損を抱えているのではないでしょうか。
損失が膨らんでくると決済するべきかどうか、とても悩みますよね。
アメリカの企業業績を悪化させている要因は何なのでしょうか。よく言われているのが消費者物価指数(CPI)の上昇です。4月の値は、前年同月比8.3%でした。現在の状況は、過去2回起きたオイルショック以来の上昇となっています。(グラフ1参照)
グラフ1:米消費者物価指数(CPI)
出典:米労働省労働統計局
現在、WTI原油は、ウクライナ情勢の関係から100ドルを上回る取引が続いており、ロシア産天然資源の供給停止問題は更なる需給ひっ迫を招いています。まさに、第3次オイルショックと呼べる状態です。
過去オイルショックによってもたらされた1974年と1980年の物価上昇は、株価にどう影響したのか。
気になったので調べてみました。
1.米株価指数(インデックス)の変動
チャート1:NYダウ
(出所:TradingViewによるNYダウチャート)
第1次オイルショックの時、株価は大きく下落しています。1973年1月に付けた1067ドルから1974年12月の570ドルまで下落しました。下げ幅は46%です。
一方、第2次オイルショック時(1980年)には株価の下落を確認できませんでした。
チャート2:NADSAQ
(出所:TradingViewによるNASDAQチャート)
チャートは、終値の折れ線グラフです。
先に見たNYダウ同様、第1次オイルショックの時、NASDAQは大きく下落しています。ピークからの下落率は58%でした。一方、第2次オイルショック時(1980年)、株値は上昇しています。
チャート3:S &P500
(出所:TradingViewによるS&P500チャート)
第1次オイルショックの時、S&P500も大きく下落していました。ピークからの下落率は、50%です。
第2次オイルショック(1980年)に株価の下落は確認できませんでした。
次のグラフはオイルショック時に発生した騰落率と現在の騰落率を比べたものです。
2.株価指数の騰落率
グラフ2:株価の騰落率
現在、株価は下落基調ですが、第1次オイルショックの時の下落と比べるとまだまだ下落余地が残っています。仮に第1次オイルショックの下落が再現されるとすると、いずれの銘柄もあと30%ほど下げることになります。
どのような行動を取るのが正解なのでしょうか。まず、NADSAQですが、すでにピークから31.2%下げています。第1次オイルショック時に記録した下落率58%との差は26.8%なので想定下落率の半分以上下落してしまった計算です。どのラインを底値に想定するかにもよりますが、すでに大きく下げてしまっている以上、離脱するには、タイミングとしてはすこし遅いのかもしれません。
下落率が少ないNYダウではどうでしょう。現在の下落率は第1次オイルショックと比べて3分の1程度、底値46%まで30%以上のギャップを残しています。底値までの下落を想定しているのであれば、一度離脱して、底値で買い直すのも手立てです。
ただし、別の考え方もできます。今回は物価変動と株価変動にフォーカスをあてましたが、第2次オイルショックによって物価が上昇した時、アメリカの株価下落は確認できませんでした。
アメリカには石油メジャーと呼ばれている巨大な石油会社が存在します。原油価格の上昇は、物価を上昇させてしまいますが、石油会社の売上も増加するはずです。
現在、シェールオイルが産出できるアメリカは世界No1の産油国です。石油価格の上昇は、シェブロンやエクソン・モービルなどアメリカの石油産業に大きな富をもたらします。物価の上昇は多くの消費者にとってマイナスですが、一部の企業にはプラス要因です。
まだまだ物価上昇、金利上昇は続きそうですが、それをプラスにできる企業のウエイトを増やすのも防御策のひとつです。
インフレに強い企業、インフレ対策ができる商品。そのような銘柄を増やすのも一つの手段なのかもしれませんね。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください
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