ロシアへの経済制裁と国内供給路の変化

イメージ:世界の流通網

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

12月4日に開催されたOPECプラスの会合にて、1日あたり200万バレルの協調減産を継続することが決定しました。

通常であれば、OPECプラスの生産量が200万バレル協調減産されましたという話なのですが、話をややこしくしているのがOPECプラスの主要メンバーにロシアがいることです。

ご存じのようにG7メンバー国は、ロシアに対して経済制裁を実施しています。12月5日、制裁内容が強化され、EUはロシア産原油の輸入を原則禁止し、G7の7ヶ国はロシア産原油の取引上限価格を1バレル60ドルに設定しました。

12月5日現在、WTI原油の取引価格は80.94ドルですので市場価格より20ドル以上安い価格が上限価格として設定された訳です。

一見するとロシア産原油を割安で購入できそうに思えてしまいますが、そんな単純な話ではありません。

例えば日本の場合、上限価格を超えた価格で取引されたロシア産原油の輸入を禁止(サハリン2で生産されたものを除く)しており、上限価格以下での原油輸入については経済産業大臣の事前確認を要するものとしました。また、上限価格を超える価格で取引されたロシア産原油をタンカーで運んだり、信用状を発行したり、火災保険や損害賠償責任保険を引き受けるなどの海上輸送に関するサービスも許可制になりました。

くわしくは、経済産業省のホームぺージをご覧ください。

◆対ロシア等制裁関連-経済産業省

今回、ロシアに対する経済制裁が強化された訳ですが、ここで気になってくるのが実際にどの程度の輸入が行われているのかです。 経済産業省が2022年11月30日に発表した10月の原油輸入量は次のとおりでした。


国別原油輸入量

2022年10月 2021年10月
UAE 5,385,910 4,059,858
サウジアラビア 5,016,464 4,358,060
クウェート 1,238,104 1,332,586
カタール 703,139 395,363
アメリカ合衆国 381,507 -
バーレーン 153,857 76,338
オマーン 146,522 79,219
エクアドル 106,894 142,019
アンゴラ 82,396 -
中立地帯(カフジ) 70,767 61,854
ベトナム 47,526 -
ブルネイ 46,017 -
オーストラリア 40,075 68,742
タイ 7,257 7,196
ロシア - 817,477
メキシコ - 114,870
マレーシア - 32,659
スーダン - 31,669
パプアニューギニア - 15,942
アルジェリア - 7,487
合計 13,426,435 11,601,339

出典:経済産業省

2022年10月のデータをみると最も多いのがUAEとサウジアラビアが圧倒的ですね。この2か国だけで国内供給量の80%弱を賄っています。日本はエネルギーの大部分を中東に依存していることが良くわかります。

今回注目したいのがロシアからの輸入量です。2022年10月ロシアからの輸入はありませんでした。昨年(2021年10月)には国内供給量の7%に相当する817,477KLがロシアから輸入されていましたが、今はそれがなくなっています。

ロシアに変わって確認されたのがアメリカ合衆国からの輸入です。2022年10月は国内供給量の2.8%に相当する381,507KLがアメリカから輸入されています。

全体の輸入量については昨年10月が1160万KLだったのに対して今年の10月は1342万KLと増加しています。

数字を見る限り、原油に関しては脱ロシアが成功しているようです。今回の一件が日本国内の供給不安を引き起こすことはなさそうですね。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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