EU、ロシアからの石油・天然ガス・石炭の輸入縮小を検討

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)の岩井が作成したページです。
このページでは現在EUで検討されているロシアからの可燃性燃料(石油・天然ガス・石炭)の輸入について、各国がおかれた状況を踏まえて説明しています。
EUがロシアから輸入している石油・天然ガス・石炭

本日のロイターニュースによると、10日(木)から11(金)に開催予定のEU首脳会議にてロシアからの可燃性燃料(石油・天然ガス・石炭)の輸入を徐々に縮小していくことで合意する見通しだと報道されました。
EUが消費するエネルギーにおけるロシアへの依存度は、天然ガスが約45%、石油が約33%、石炭が約50%と大きなウエイトを占めているため、これを削減するのは簡単なことではありません。ロシアへの経済制裁は、自国のエネルギー供給を止めることに繋がってしまいます。
天然ガス、石油、石炭は可燃性燃料と呼ばれるもので、火力発電の燃料として利用されています。
日本の場合、電力の76.4%を火力発電で賄っているため、電力と言えば火力発電をイメージしてしまいますが、その様子は国によって大きく異なるようです。
主要国の電力構成

出典:IEA
グラフの濃い青色で塗られた部分が可燃性燃料で占める割合です。日本は今回調査対象にした9国の中で最も可燃性燃料に依存している国だということがデータからもわかります。
火力発電に依存しない国があるのか?
火力発電への依存度が低い国がいくつか確認できました。それがノルウェー・スウェーデン・フランスの3国です。驚いたことに、ノルウェーは電力の90.2%を水力発電によって補っており、可燃性燃料への依存度は僅か0.9%しかありませんでした。EU加盟国では、スウェーデンとフランスの可燃性燃料利用率が低くなっています。スウェーデンは90%近く、フランスは85%近くを再生可能エネルギーと原子力で発電しています。
ヨーロッパにあるすべての国が優等生なのかと言えば、そんなことはありません。G7メンバー国であるドイツ・イタリア・英国は半分以上の電力を火力発電によっておこなっています。OECD加盟国(ヨーロッパ)の平均は47.9%でした。
今週、ロシアからの可燃性燃料輸入についてEU首脳会議が行われる予定ですが、スウェーデン、フランスなどとドイツ、イタリアなどでは国内電力供給に与える影響が大きく違うので簡単にはまとまらないのかもしれませんね。
日本はEU加盟国ではありませんが、経済や安全保障などあらゆる面で重要なグローバルパートナーです。EU首脳会議によってどのような削減プランが決定するのか分かりませんが、その内容次第では、日本国内でのSDGsが加速するのか、それとも棚上げになるのか。EUの決定が日本のエネルギー市場に中長期的な影響を及ぼすことになるかもしれません。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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