食料問題とロシアへの依存度
前回の記事「ロシアのウクライナ侵攻から1ヶ月」でもお伝えしましたが、ロシアのウクライナ侵攻への制裁からエネルギーや鉱山資源などで脱ロシアの動きが加速していますが、各国の事情があるようで、一筋縄にはいかない状況です。
特にドイツは、エネルギーの多くをロシアからの輸入に依存していたため、すぐに停止させることができず、新たなインフラ整備や再生可能エネルギーへの転嫁などの課題を抱えています。
身を切る覚悟でエネルギー使用量を制限すれば良さそうですが、現代の私達の生活は電気やガスなどのエネルギーを大量に消費することによって成り立っていますので、簡単にできることではありません。難しい問題です。
エネルギーと同様、人間が生きていく上で欠かせないものがあります。それが食料です。
以前お伝えしましたが、ウクライナは「欧州のパンかご」と呼ばれるほどの穀倉地帯ですが、実際はどうなのか。今回は食料品の輸出入データを元に分析してみたいと思います。
ウクライナとロシアの食料輸出状況
ウクライナとロシアの食料輸出割合(2019)
※出典:Our World in Data
ウクライナとロシアは様々な穀物を世界に輸出しています。特に輸出量が多いのが、ひまわり油、小麦、大麦、とうもろこしの4品です。ひまわり油に至っては、世界シェアの63.6%をこの2国でカバーしています。
問題は、これらの穀物がどこの国に輸出されているのかです。
順に見ていきます。
色の濃い国がウクライナ、ロシアの依存度の高い国です。
小麦
※出典:Our World in Data
北アフリカや中央アフリカに色の濃い国があります。特にウガンダは輸入の99.17%をウクライナ、ロシアからの輸入に頼っています。50%以上の依存度だったのは、ジョージア、ルワンダ、UAE、マルタ、リビア、ブルネイ、アルメニア、イスラエル、セネガル、オマーン、ギニア、レバノンなどです。
とうもろこし
※出典:Our World in Data
北アフリカと北欧に色の濃い国があります。50%以上の依存度だったのは、ラトビア、リトアニア、アルメニア、オランダ、イスラエル、リビア、チュニジア、フィンランド、デンマークなどです。
大麦
※出典:Our World in Data
北アフリカと中東に色の濃い国があります。50%以上の依存度だったのは、イスラエル、ヨルダン、レバノン、リビアの4ヶ国です。
ひまわり油
※出典:Our World in Data
北アフリカ、中東、アジアの国々が真っ赤です。世界シェアの63.8%がウクライナ、ロシア産だったこともあって、多くの国が両国からの輸入に頼っています。
依存度の高い国と低い国で差が激しい
輸出量の多い4品目を見てきましたが、この4品に共通しているのが、北アフリカ地域です。リビアやエジプトなどは、ロシアとウクライナからの輸入に大きく依存しており、輸入量の減少は、すぐに食料危機に発展しかねません。
現在、アメリカ、EU、イギリス、日本などの先進国は、ロシアに対して厳しい経済制裁を行っていますが、それはロシア産穀物への依存度が低いから行えることです。
例えば日本の場合、ロシア・ウクライナから輸入している食料の割合は、小麦が1.66%、とうもろこしが0.58%、大麦が7.2%、ひまわり油が20.57%です。これらが日本に入って来なくなってもそれほど困ることはないでしょう。
国連でロシアに関する決議が行われた際に、賛成する国、反対する国、棄権する国に分かれましたが、ロシア経済への依存度の高い国がロシアを否定することは考えにくいことです。
普段、私達が目にするニュースは、アメリカやイギリス、EUなどの先進国のメディアが発している情報です。経済制裁をしているとの報道があれば、世界中の国が行っているように感じてしまいますが、そうではない国がどのような行動をとり、その国でどのような報道がされているのかが伝えられることはほとんどありません。
ウクライナ、ロシア産穀物への依存度は、日本ではあまり報道されていない経済圏を表しているのかもしれませんね。
とうもろこしチャート
小麦チャート
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
・Our World in Data
金先物や原油先物などデリバティブ取引ならフジトミ証券のFITS
フジトミ証券株式会社が提供するオンライン商品先物取引「FITS」は、初めての人でも安心して取引できることを第一に考えて作ったオンライントレードシステムです。
投資家お役立ち情報
商品デリバティブ取引経験がない人でも解る初心者向けページ
- 初心者でもわかる!金先物取引のやり方
- はじめての原油先物取引
- イスラエル情勢と原油、金先物価格
- 金の値動きから戦略を考える
- 値動きの特徴(商品先物取引)
- サヤについてきちんと意識していますか?
- ロシアへの経済制裁と国内供給路の変化
- アメリカの政策金利と金(ゴールド)の価格
- 商品先物市場における為替の影響
- OPECの思惑(日量200万バレルの減産)
- 金の産地について
- 商品先物取引の単位(貴金属編)
- 政策金利とコモディティ価格
- ロシア ノルドストリーム
- 日本のロシア産エネルギー依存度
- サハリン2をロシアが接収???
- セブン-イレブンのコーヒー値上げとブラジルの生産減
- ○○が無いなら△△すればいいじゃない
- 下落基調時の対応方法
- 物価上昇とオイルショック
- 食料問題とロシアへの依存度
- ロシアへの制裁とプラチナ、パラジウム
- IEA加盟国が実施する石油備蓄放出と今後
- ロシアのウクライナ侵攻から1ヶ月
- LNG先物(液化天然ガス)2022年4月4日上場
- EU、ロシアからの石油・天然ガス・石炭の輸入縮小を検討
- ロシアへの経済制裁と商品先物相場
- ガソリン価格が高い理由
- ネガティブ要因と投資
- 資産運用として商品先物取引の活用方法
- コロナと先物取引への投資