コロナと先物取引への投資

このぺージではコロナ禍における先物市場の動向についてお伝えしています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的感染拡大と経済への影響

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的感染拡大によって私たちの生活は大きく変化しました。東京オリンピックの延期、テレワークの拡大、インバウンド需要の消滅など、これまでの価値観では考えられないような出来事が次々と起きました。

下のグラフは、経済産業省が発表した第3次産業活動指数、業種別の指数の推移です。ご覧のように突出して減少している産業があります。それが、生活娯楽関連サービスです。

第3次産業活動指数
グラフ-第3次産業活動指数

出所:経済産業省ホームページ(https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20200728hitokoto.html)

生活娯楽関連サービスには私たちに身近な様々なサービスが含まれ、生活関連には宿泊業、旅行業、飲食店、飲食サービス業などが、娯楽関連には映画館、競馬場、スポーツ施設、テーマパーク、パチンコなどが挙げられます。

4月から5月にかけて行われた緊急事態宣言によって人々の経済活動は制限されることになり、特に生活娯楽関連サービスの企業活動に大きな影響を及ぼしたことがこのデータからも見てとれます。投資家は、運用方法の選択を迫られる場面を迎えました。

生活娯楽関連サービスに限らず、多くの産業が大きな打撃を受け、残念ながら、経営困難の末、倒産に追い込まれる企業が出てきている訳ですが、すべての産業の業績が悪化した訳ではありません。

日銀短観
グラフ-日銀短観

出所:日本銀行ホームページ

巣ごもり需要の拡大によってインターネットビジネスへの移行は加速し、新しいビジネスモデルが生まれています。そのような新しいビジネスが日本経済をけん引する変化の大きい年だったのではないでしょうか。

リモートでの面談、テレワークの拡大など、ソーシャルディスタンスが当たり前の世の中に変化しました。

人々の活動量減少とエネルギー消費量

この変化は、日本国内に限った話ではなく、世界各国で同様の出来事が起きています。こうした人々の活動量や活動範囲が縮小したことに比例して減少したのがエネルギー消費量です。

下の表はOPECが発表した2020年から2021年にかけてのエネルギー消費量の推移です。

OPEC月報-世界
グラフ-OPEC月報-世界

特に新型コロナウイルス感染者数が世界最大であるアメリカのエネルギー消費量は大きく減少しました。ドライブシーズンである8月、観光産業は大打撃を受け、国外・国内共に航空や交通の大幅な減少を招きました。アメリカのエネルギー消費量は前年同月比でご覧のように大きく減少してしまいました。

OPEC月報-USA
グラフ-OPEC月報-USA

エネルギーの中でもガソリン、ジェット燃料、ディーゼルオイルなど交通手段として使われている消費量が大きく減少していることが解ります。8月の消費量は日量で合計272万バレルも減少してしまいました。

エネルギー消費量の減少は、エネルギー価格の下落を招き、産油国では大きな経済的損失になっています。

WTIチャート
グラフ-WTIチャート
(出所:TradingViewによるWTI原油チャート

2020年4月、WTI原油先物は供給過剰な状況に陥り、買い手不在の中、上場以来はじめてマイナス圏まで下落してしましましたが、その後はOPECプラスによる協調減産など産油国の生産調整により1バレル40ドル前後での取引が続いています。 原油価格は需給バランスの影響を受けて、供給過剰になると在庫量が増え、価格下落につながりやすくなります。今後、新型コロナウイルス感染者数の爆発的増加による緊急事態宣言やロックダウンはエネルギー消費量のさらなる減少を引きおこしかねません。 エネルギー価格下落によって会社の収益が減少してしまう産業に従事している人は、原油先物取引で売りポジションを作ることでヘッジするのも一つの手立てです。

コロナ禍で脚光を浴びた金(ゴールド)投資

史上初のマイナス価格で原油相場に注目が集まりましたが、コモディティ市場には価格上昇で脚光を浴びた銘柄があります。それが金(ゴールド)です。新型コロナの感染拡大前の金価格は1トロイオンスあたり1500ドル台で推移していましたがコロナの感染拡大に合わせて上昇し、9年ぶりに高値を更新し、2000ドル台の大台に乗せました。

NY金チャート
グラフ-NY金チャート
(出所:TradingViewによるNY金チャート

アメリカをはじめとした主要国の超低金利政策や世界的なリスク回避の動きが金の支援材料になりました。金の世界的な投資需要を知る上で有効な指標があります。それがSPDR®ゴールド・シェアが発表する信託金残高です。一般には金ETF残高とも言われています。

金ETF残高
グラフ-金ETF残高

新型コロナウイルス感染が世界的に広まり始めた4月以降、金ETF残高は増加し7月には1200トンまで残高が膨らみました。ウィルス感染拡大後の世界経済の不透明さを反映して、資金の避難先として投資家が金を選んだことが伺えます。 8月以降は、金ETF残高の伸びは停滞していますが、同様に8月以降停滞しているのがNY金先物の価格です。

2020年前半は、株式相場と金相場が同一方向に動いていましたが、後半にかけては、その関係性は崩れてきています。

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために各国政府で実施された予防策や経済対策は、恩恵を受けた企業とそうではない企業を2分しました。巣ごもり需要の恩恵を受けた企業、Go toキャンペーンなど、特需の恩恵を受けた企業はありますが、それらは少数派であり、業績は両極端な結果をもたらしています。そのため、投資家が取れる選択肢は以前よりも少なくなっています。 一部の銘柄、金融商品への資金流入・流出は、投資家の多くが同じ行動をする展開になりやすい状況になっており、上昇、下落いずれの相場を形成するにしてもトレンド形成しやすい環境になっているのかもしれません。

今後の感染状況と対応策について

北半球では、これから冬本番を迎える訳ですが、寒く空気が乾燥した状態がつづくことで新型コロナやインフルエンザに感染するリスクが高まり、感染者数が増加することが懸念されます。冬の間、感染拡大がどの程度広がるかは、今後のコモディティ市場の動向にも大きな影響を及ぼします。 冬場の感染拡大が起きた時、株価はどうなるか。原油価格はどうなるか。金価格はどうなるか。事前に備えておくことが重要ではないでしょうか。

まとめ

このページでは世界的に認知度が高いWTI原油とドル建てで取引されているNY金先物取引を使って説明しましたが、日本国内では、日本取引所グループの大阪取引所にて金の先物取引、東京商品取引所にて原油先物取引が取引されています。もちろんどちらも円建てで取引可能です。ご興味をお持ちの方はフジトミ証券のオンライントレード部までお問合せください。


参考文献

経済産業省ホームページ
日本銀行ホームページ
OPECホームページ
TradingView
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