ロシアへの制裁とプラチナ、パラジウム

イメージ:ロシアへの制裁とプラチナ、パラジウム見出し

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。
ウクライナに侵攻したロシアへの制裁がプラチナ、パラジウムにも影響を及ぼしています。今回はプラチナとパラジウムに起きている変化について簡単にまとめました。

ロンドンのLPPMがロシアのプラチナ・パラジウム製錬業者を認定ブランドから除外

イメージ:NG

ロンドンのLPPM(London Platinum and Palladium Market)は、ロシアのプラチナ・パラジウム製錬業者を認定ブランドから除外することを決定しました。

今回除外されたのは「Krastsvetmet」「PZCM」の2社で、どちらもロシア政府が所有する企業です。

ロシアへの経済制裁の波が鉱山資源にも押し寄せてきました。
今回の認定除外では、インゴット(地金)が製造された日時が重要です。2022年4月8日よりも前に製造された白金とパラジウムはこれまでどおり取引できますが、2022年4月8日以降に製造されたプラチナとパラジウムについては当面の間、LPPMでの取引ができなくなってしまいました。

この決定は、日本の投資家にも大きな影響を及ぼす可能性があります。現在、日本でプラチナ(白金)、パラジウムの先物取引が行われている大阪取引所は、両社の製造した地金を受渡供用品として認めています。LPPMが除外を決めたことを受け、大阪取引所も受渡供用品からの取消しを検討しています。

このことは世界的にみてどのくらいの影響があるのでしょうか。2019年のPLATINUM GROUP METALS SURVEYによると2019年の供給は次のような状況でした。

プラチナ供給

南アフリカ鉱山 130.7
ロシア鉱山 21.2
北米鉱山 11.5
その他鉱山 17.7
自動車触媒リサイクル利用 44.5
宝飾品リサイクル利用 24.4

※単位:t
※出典:PLATINUM GROUP METALS SURVEY(2019)

プラチナ需要

プラチナ需要

自動車触媒 99.8
宝飾品 64.7
化学 22.5
エレクトロニクス 7.4
ガラス 7.9
石油 6.3
その他産業 25
小口投資 8.9

※単位:t
※出典:PLATINUM GROUP METALS SURVEY(2019)

パラジウム供給

ロシア鉱山 82
南アフリカ鉱山 77.5
北米鉱山 32
その他鉱山 17.4
自動車触媒リサイクル利用 73.7
宝飾品リサイクル利用 1.6

※単位:t
※出典:PLATINUM GROUP METALS SURVEY(2019)

パラジウム需要

自動車触媒 276.2
エレクトロニクス 24.6
化学 16.2
歯科 11.4
宝飾品 8.1
その他産業 3.2
小口投資 0.9

※単位:t
※出典:PLATINUM GROUP METALS SURVEY(2019)

世界の鉱山の内、プラチナの12%、パラジウムの39%がロシア産です。LPPMの決定では4月8日以降に製造された地金の取引を制限するとしていますので、大きな問題になってくるのは、今鉱山で採掘されている貴金属が市場に流通し始める頃です。例えばパラジウムの場合ロシアは年間で82トン生産しています。1ヶ月あたりでは6.8トン、1日あたり225キロのパラジウムを生産している訳ですが、これが市場に出回らなくなると大問題です。

プラチナ、パラジウム共に一番の使用用途は自動車触媒です。プラチナはディーゼル車の触媒、パラジウムはガソリン車の触媒として大量に利用されています。現在、環境問題への取り組みから電気自動車(EV)の開発・実用化が行われていますが、普及率はまだ数パーセント程度なので、ガソリン、ディーゼル車に頼るしかない状況です。ロシアからの輸入制限によって本当の需給ひっ迫が起きるのはこれからです。今後、プラチナ・パラジウム不足から自動車生産台数が大幅に落ち込むかもしれません。

現在の価格推移はご覧のとおりです。

プラチナチャート

パラジウムチャート

今後のプラチナ・パラジウム市場はどうなっていくのでしょうか。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

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