FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

2018/11/16/15:18:22

日経平均株価:半導体関連株下げで相場全体を押し下げ

米中貿易戦争の休戦合意期待から前日のNYダウが208ドル高の5日ぶり反発となるも、米GPU(画像処理半導体)大手エヌピディアの業績鈍化懸念から東エレクや信越化といった半導体関連株が売りが出て相場全体を押し下げた。結局、前日比123円安の2万1680円と続落して終了した。

 

東京外国為替市場:株安を受けてリスク回避の円買い

ドル/円は、英国のEU離脱交渉を巡る政治の混乱を警戒したドル売り・円買いが入り、113.35円へじり安となった。日経平気株価の下げ幅が100円を超えたこともリスク回避の円買いを誘った。午後は、日経平均株価や上海総合株価指数をにらみながら113.30円台を中心とした狭いレンジでもみ合い相場となった。ユーロ/ドルは、予算案を巡るイタリア政府とEUの対立が解消に向かうとの観測から、持ち高調整などのユーロ買い・ドル売りが入り一時1.1340ドル台へ値を上げた。

 

混迷を深める英国のEU離脱:合意なしのEU離脱の可能性も

英国のラーブEU離脱担当相は15日、メイ首相の離脱協定案に抗議するため辞任した。ラーブ氏はツイッターの声明文で『EU離脱協定案に関する昨日の閣議を受け、私は遺憾ながら辞任しなければならない』と述べた。ラーブ氏は協定案を指示することができないと述べており、メイ首相の協定案では英国の一体性が脅かされるとの見方を示している。ラーブEU離脱担当相の辞任によって離脱協定案が議会で承認される可能性は低下しており、与党・保守党の離脱推進派はメイ党首の不信任投票を求める可能性があるとの見方も浮上している。なお、ラーブ氏の辞任表明後にマクベイ雇用・年金相も辞任を表明していおり、英国政治の不確実性は一段と高まっている。議会における採決や討論の方法については、議員からの提案を踏まえて今後決定される見込み。規定では『閣僚は欧州議会が投票する前に議論を行う努力をすべき』となっているが、協定案についての採決をすみやかに行うことは難しくなっており、市場関係者の間では『英国は合意なしのEU離脱を選択するかどうかの瀬戸際に追い詰められている』との声が聞かれている。状況の進展次第では、もう一段のポンド安の可能性もある。

 

米中貿易戦争で改めて世界経済先行き懸念

経済成長の鈍化は否応なく企業業績に反映される。実際、7-9月期の米企業決算の利益見通しが冴えない理由として、米中『関税報復』合戦をあげる企業が増えつつあり、米中貿易戦争が長期化すればするほど、企業利益の伸びが鈍化すると予想される。とりわけ、米中貿易戦争の株式市場への影響が懸念されるのは、ハイテク関連と一般消費財セクターとされるが、もちろん月末の米中首脳会談で摩擦緩和へと事態が動けば、その恩恵を最も大きく受けるのも同セクターであることは言うまでもない。
BOAメリルリンチ11月投資家調査が、『世界経済の減速を懸念する投資家が増えており、米株式相場は既に天井を打ったとみる投資家が増えた』と報じた。
同投資家調査(2-8日実施)によれば、世界経済の成長が今後12ヶ月間で『減速する』から『しない』とみる投資家を引いた値が44%と08年11月以来の水準に悪化した。19年の中国減速を『見込む』から『見込まない』とみる投資家を引いた値は54%と16年9月以来の高水準となった。要するに米経済の成長鈍化に中国の景気減速を見込む投資家が増え、改めて世界経済の先行き懸念が強まっていることが示唆された。

 

欧米イベント

○16:00   10月独卸売物価指数(WPI)
○16:00   9月トルコ鉱工業生産(予想:前月比0.3%)
○17:30   7-9月期香港域内総生産(GDP、予想:前期比0.6%)
○17:30   ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○19:00   10月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比2.2%)
○22:00   バイトマン独連銀総裁、講演
○22:30   9月対カナダ証券投資
○22:30   9月カナダ製造業出荷(予想:前月比0.3%)
○23:15   10月米鉱工業生産指数(予想:前月比0.2%)
       設備稼働率(予想:78.2%)
○17日01:30   エバンズ米シカゴ連銀総裁、講演
○17日06:00   9月対米証券投資動向
○16-19日   10月ロシア鉱工業生産(予想:前年比2.3%)
○17日 APEC首脳会議(ポートモレスビー、18日まで)

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欧米タイム直前市場コメント!

2018/11/15/15:17:32

日経平均株価:押し目買いで下値切り上げ

前日のNYダウが205ドル安の4日続落やナスダック指数増楽が投資家心理を冷やして売りが先行し一時下げ幅を200円超に広げたものの下値では好業績銘柄中心に押し目買いが入って下げ幅を縮めた。結局、前日比42円安の2万1803円と反発して終了した。

 

東京外国為替市場:113円半ばでもみ合い

ドル/円は、本邦実需筋などのドル買い・円売りに支えられ一時113.66円付近へ上昇した。しかし、米株価の下げが続いていることもあり、ドルの反発は限られた。その後は、上値が重さを嫌気したドル売り・円買いが持ち込まれ、113.45円近辺へじり安となった。午後は、日経平均株価や上海株価指数をにらみながら113円台半ばでもみ合いとなった。今晩発表される米10月小売売上高を控え、様子見ムードが広がった。ペンス米副大統領が『シンガポールで、中国当局者と会う予定はない』と発言したものの、市場の反応は限定的だった。ユーロ/ドルは、英国のEU離脱高所うが進展するとの期待から持ち高調整などのユーロ買い・ドル売りが入り1.1340ドル付近へ上昇した。

 

イタリアの財政問題を巡りEUとの対立は長引く可能性も

イタリアは13日、欧州連合(EU)が求めていた2019年予算案の修正を拒み、財政規律ルールの順守を求めるEUとの対決路線を堅持した。EUは制裁をちらつかせて方針転換を迫る方針だが、『反EU』で支持拡大を目指すポピュリスト(大衆迎合主義)政権にはむしろ追い風で、対立は長引く可能性が高い。金利上昇で資本不足に陥る銀行が相次ぎ、イタリアの金融不安が再燃するリスクも意識され始めた。イタリアが予算案の修正を拒んだのを受け、次はEUの執行機関である欧州委員会の判断に焦点が移る。欧州委は21日、予算案に対する最終判断を公表する予定となっている。

 

原油下落要因とCFTCの原油先物ポジション

サウジの減産観測は、日本時間12日の時間外取引での原油先物に買い戻しを誘ったが、過剰在庫や需要減退への警戒感が強く、サウジアラビアの『口先介入』がNY原油底入れ反発を招くとの見方は限られている。原油先物の『弱気相場』入りには次の要因が指摘される。①米経済制裁によるイラン原油供給減不安の後退、②米シェール企業等の増産による過剰在庫と洋上備蓄放出、③米中『貿易戦争』等による世界減速に伴う需要減退、④新興国の需要減とイラン周辺国の供給増見通しなどがある。10日に米国商品先物取引委員会(CFTC)が発表した原油先物のポジション状況では、投機的ネットポジションは40万枚のネットロングと前週より約2万8000枚ロングが縮小した。9月下旬の56万枚程度のネットロングからは、原油価格の低下とともにロングの縮小傾向が続いている。 2016年2月には16万枚程度までネットロングが減ったこともあるため、まだ潜在的な売り余力は残っている。

 

FOMCの緩やかな利上げは正当化される可能性

米労働省が発表した10月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%、前年比+2.5%と、それぞれ市場予想通りとなり、9月+0.1%、+2.3%から上昇した。前月比では1月来で最高となった。一方、FOMCがインフレ指標として注視している変動の激しい食料品やエネルギーを除いたコアCPIは前年比+2.1%と、予想外に9月+2.2%から低下し、4月来で最低となった。 そのため、原油価格の急落を受け、11月の総合インフレは低下が予想されている。また、今後数カ月間のコアCPIも再び2%を割り込む可能性も指摘されている。 しかし、市場では依然、2019年のコアインフレ率がFOMCの目標値である2%を若干上回ると予想している。失業率がさらに緩やかに一段と低下することに加えて、インフレの上昇がFOMCの緩やかなペースでの金融政策の正常化を正当化すると見ている。

 

米10月小売売上高が公表

9月実績は前月比+0.1%にとどまった。ただ、コア売上高は前月比+2.2%で市場予想通りとなった。9月はハリケーンによる被害の影響が大きかったとみられる。10月については9月に大きく落ち込んだ飲食店の売上高は反動増となる見込みだが、その他の項目では小幅な伸びにとどまる可能性があるため、市場予想の前月比+0.5%は妥当な水準となる。

 

欧米イベント

○16:00   8月トルコ失業率(予想:11.2%)
○17:30   10月スウェーデン失業率(予想:6.1%)
○18:30   10月英小売売上高指数(自動車燃料含む、予想:前月比0.2%/前年比3.0%)
○19:00   9月ユーロ圏貿易収支(季節調整前)
○21:15   クーレ欧州中央銀行(ECB)理事、講演
○22:10   プラートECB専務理事、講演
○22:30   11月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:20.0)
○22:30   11月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:20.0)
○22:30   10月米小売売上高(予想:前月比0.5%/自動車を除く前月比0.5%)
○22:30   10月米輸入物価指数(予想:前月比0.1%)
○22:30   前週分の米新規失業保険申請件数(予想:21万2000件)
○23:35   デギンドスECB副総裁、講演
○24:00   9月米企業在庫(予想:前月比0.3%)
○24:00   クオールズFRB副議長、米上院銀行委員会で証言
○16日01:00   EIA週間在庫統計
○16日03:00   ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○16日04:00   メキシコ中銀、政策金利発表(予想:8.00%に引き上げ)
○16日05:00   カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
○ブラジル(共和制宣言記念日)、休場

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欧米タイム直前市場コメント!

2018/11/14/15:26:51

日経平均株価:中国景気減速への警戒感強く上値の重い展開

前日に500円近い大幅安となったことで、自律反発期待の買いが先行した。しかし、上値には戻り待ちの売りが多く中国10月小売売上高の伸び鈍化に中国景気減速への警戒感から前引けにかけて下げ幅を広げたものの企業の自社株買いなどに下げ渋った。結局、前日比35円高の2万1846円と小反発して終了した。

 

★東京外国為替市場:米政権による輸入自動車関税先送りを好感したドル買い

ドル/円は、本邦実需筋などのドル買い・円売りに支えられ113.99円まで上昇した。一部メディアが『トランプ米政権は輸入自動車への新たな関税適用当面保留する見込み』と報じられたことも円売りを誘った。ただ、前日の欧州市場でつけた114.14円が視界に入ると、上げは一服した。その後は、日経平均株価のさえない動きをながめ、利益確定売りなどに113.80円台へ押し戻された。午後は、今晩の10月消費者物価指数や米株動向を見極めたいとのムードが広がり、113.90円前後で方向感に乏しい値動きとなった。ユーロ/ドルは、2019年度予算案を巡るイタリア政府とEUの対立を警戒したユーロ売り・ドル買いが持ち込まれ1.1290ドル付近へじり安となった。

 

中国経済指標に米中貿易摩擦の影響がじわりと見られる

米中首脳会議まで人民元の下げは一段落する可能性はあるが、中国景気鈍化懸念で戻りは鈍い。中国経済の勢いはここ数カ月に軟化している。先週発表された10月の消費者物価指数(CPI)は9月から横ばいの前年比+2.5%となったが、同生産者物価指数(PPI)は前年比+3.3%と、4カ月連続で鈍化した。原材料需要が弱まり、製造業が減速するなど、米中貿易摩擦の影響が見られている。また、中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した10月末時点の中国の外貨準備高は3兆530億ドル)で、前月比339億2700万ドル減少した。3カ月連続で減少し、2017年4月以来の低水準となった。外貨準備高の減少は中国当局が、急激な元安を阻止するために外貨準備を使用し、ドル売り・元買い介入を行ったためだとの見方もある。本日発表された中国の10月小売売上高は市場予想を下回り、改めて貿易摩擦などによる中国経済の減速が警戒されている。一方で、鉱工業生産や固定資産投資に関しては、市場予想を小幅に上回る底堅さが示された。

 

パウエル米FRB議長の討論会に注目:タカ派姿勢緩和期待も

米FRBのパウエル議長が14日にダラス連銀主催の討論会に出席する。パウエル議長は前回9月のFOMCで発表されたドットプロット(予測)を変更する可能性は少ないと見られている。9月のメンバーの金利予想では年内あと1回となる12月の利上げ、2019年3回の利上げが平均値となっている。市場の展開を強調する可能性も低いと見る。
パルエル議長は政策が指標次第であるとしながらも、金融状況が見通しに与える影響に言及するかどうかに焦点が集まる。世界経済の減速観測を背景とした需要鈍化懸念を受けた原油安、株安を受けて、一部の市場参加者は議長が『金融政策は中立に程遠い』とした先の発言を緩和する可能性もあると期待している。議長が『中央銀行は利上げのサイクルを過剰に加速しない』と、確認してくれることを期待している。
議長の発言やFOMCのメンバーの『中立水準以上に達するまで利上げを継続する』との見通しを受けて、FRBの利上げが行き過ぎる、または、FRBの政策の間違いへの警戒感も最近の株安の一因となっている。

 

欧州市場では7-9月期ユーロ圏域内総生産改定値を公表

速報値はは前期比+0.2%、前年比では+1.7%にとどまった。域内景況感の海瀬は遅れており、成長率は4-6月期との比較で鈍化する可能性が高いと予想されている。イタリア、ドイツの成長率鈍化などが要因となっている。改定値については、速報値から上方修正される項目が少ないことから、速報値から上方修正される項目が少ないことから、速報値と同じ成長率にとどまる可能性が高いと予想される。

 

米国市場では10月消費者物価コア指数が公表

9月実績は前年比+2.2%で市場予想通りとなった。家賃の伸びや鈍化しており、物価上昇率で突出している項目はなかった。10月については家賃上昇率の伸びは引き続き鈍化する可能性があるものの、上昇率は鈍化している項目は少ないことから、2%超のコアインフレ率となる可能性が高い。

 

欧米イベント

○15:30   10月インド卸売物価指数(WPI、予想:前年比5.00%)
○16:00   7-9月期独GDP速報値(予想:前期比▲0.1%/前年同期比1.3%)
○16:45   10月仏消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.1%/前年比2.2%)
○17:30   10月スウェーデンCPI(予想:前月比横ばい/前年比2.4%)
      コア指数(予想:前月比横ばい/前年比2.6%)
○18:30   10月英消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.2%/前年比2.5%)
      小売物価指数(RPI、予想:前月比0.2%/前年比3.4%)
○18:30   10月英卸売物価指数(PPI、食品とエネルギーを除くコア指数、予想:前年比2.4%)
○19:00   9月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比▲0.4%)
○19:00   7-9月期ユーロ圏GDP改定値(予想:前期比0.2%/前年比1.7%)
○20:00   9月南アフリカ小売売上高(予想:前年同月比2.2%)
○21:00   MBA住宅ローン申請指数
○22:30   10月米CPI(予想:前月比0.3%/前年比2.5%)
      エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比0.2%/前年比2.2%)
○24:00   クオールズFRB副議長、米下院金融委員会で証言

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欧米タイム直前市場コメント!

2018/11/13/15:21:45

日経平均株価:米貿易摩擦緩和期待から下げ幅縮小

前日のNYダウが2.32%安にナスダックも2.8%安の大幅下落を嫌気して売りが先行した。海外短期筋の先物への売りに一時下げ幅を785円に広げたものの香港英字紙が『貿易交渉を担当する中国副首相が訪米する予定』と報じて米中貿易摩擦緩和期待や1ドル=114円への円安を好感した買戻しに下げ幅を縮めた。結局、前日比459円安の2万1810円と大幅反落して終了した。

 

東京外国為替市場:ドル/円はもと直しの展開

ドル/円は、日経平均株価の下げ幅が700円を超えたことを嫌気され、一時113.58円まで下落した。ただ、心理的節目となる113.50円が意識されると、下げ幅は一服した。その後は、本邦実需筋などのドル買い・円売りや上海総合株価指数の持ち直しに支えられ、113.70円台へ切り返した。午後には、一部メディアが『中国の劉鶴副首相が貿易問題の解決に向けて訪米する見通し』と報じた。これを受けて、米中貿易摩擦を巡る過度な懸念が後退、ショートカバーが持ち込まれて114.04円近辺まで上昇した。日経平均株価が下げ幅を縮小したことも、過度なリスク回避姿勢を和らげて円売りを誘った。ユーロ/ドルは、一本調子の下げに対する警戒感から持ち高調整などのユーロ買い・ドル売りが入り、1.1250ドル近辺まで値を上げた。

 

13日がイタリア予算案の再提出期限

イタリアのEUへの2019年予算案の再提出を目にユーロ安が続いている。イタリアは13日までに再提出する予算でEUの定める財政規律ルールを守るよう求められているが、前途多難な状況となっている。イタリアの再提出予算について①期限までに提出されない、②期限内に提出され、EUから見て十分かつ実現可能な赤字削減計画が示される、③期限内に提出されるが不十分な内容となる、の3つのケースが想定される。そのうえで『不十分な予算案』の可能性が最も高い。期限までに提出されない場合は文句なしでイタリア財政への懸念が強まり、ユーロ売りが膨らむ可能性が高いが、イタリア政府が提出しない選択をする公算は小さい。現実味のある赤字削減計画を盛り込めればユーロは買い戻される公算が大きいものの、市場では『実現可能な策が出せるならこんなギリギリになる前に提出しているはず』との冷ややかな声が多い。不十分であっても再提出した予算に対し、イタリア政府は今後発表するEUの意見を多少は織り込むかもしれないが、『玉虫色』のまま年内にぎかいを通す見込み。仮にEUの財政規律を守れなくても、議会の多数派であるポピュリズム『五つ星運動』が予算案を否決するとは考えられない。再三財政規律を守るように求めてきたEUも、イタリア議会を止める法的な力はない。そのため、『年内に予算案は通る』というのがメインシナリオとなっている。イタリア景気の下振れや金融機関の経営悪化などの中長期的な懸念は継続する半面、イタリアがただちにEU離脱にかじを切るといった波乱が起こるわけではない。ショックとあく抜け感のないまま、だらだらとユーロ安が進む可能性が意識されている。

 

ヘッジファンドの運用不振で解約売り増加か

10月の世界同時株安で運輸尾成績が記録的に悪化したヘッジファンドが、年末で資金を引き揚げようとする投資家からの償還請求(解約)に対応するための売りを膨らませているとの見方が出ている。そのため、今年は『45日ルール』への警戒感が高まっている。米調査会社ヘッジファンド・リサーチが算出する、世界のヘッジファンドの運用成績を示す『グローバル・ヘッジファンド指数』は10月にマイナス3.1%と2011年8月以来の低水準となった。12日時点で年初来の運用成績はマイナス4.3%で、このまま年末を迎えれば2011年(マイナス8.9%)以来7値ぶりの低水準となる。世界のヘッジファンドからは9月まで6ヵ月連続で資金が流出し、その額は340億ドルにのぼる。世界同時株安で10月以降も資金流出が続いている可能性が高い。解約通知は30日前や90日前と様々な契約があり、必ずしも『45日前』だけではない。しかし、10月の運用成績が記録的に悪化したことで、償還請求やそれに伴うファンドの閉鎖による株売りが警戒さているのは事実。ただ、換金売りが今週で峠を越えるとすれば、『来週以降は需給的に売り圧力は弱まる』可能性がある。

 

米2年債金利が利上げの有無とドル/円の行方を左右

為替相場では引き続き米国債金利の上昇動向が波乱要因となる。前週は米FRBによるFOMCで12月や来年にかけての利上げ継続姿勢が示されたほか、米国の10月PPI(生産者物価指数)が6年ぶりの高い伸び率を示し、先行きのインフレ懸念が米国債金利の高止まりを支援している。今週はFRB幹部の講演や米国のCPI(消費者物価指数)などの経済指標により、米債金利が一段と上昇となるか否かが注視される。米債金利の上昇はドル/円でドルの下支え要因となる反面、米国発の世界株安によるリスク回避の円高要因として警戒される。ただし、あくまでドル/円に限れば、米国の政策金利FFに先行する2年債金利は『来年にかけての利上げ持続』を織り込む形で、前年比での上昇傾向が堅持されている。1980年代以降の過去実績として、米2年債金利の前年比プラス化が維持されている限り、翌年にかけての利上げ継続とドル/円でのドル高トレンドが持続するパターンが繰り返されてきた。反対に米2年債金利が前年比マイナスに転じてくると、翌年にかけての利上げ打ち止めとドル/円でのドル反落が遅行観測されてきたが、現在はそうした変調シグナルは尚早となっている。

 

欧米イベント

○16:00   10月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.2%)
○16:00   7-9月期ノルウェー国内総生産(GDP、予想:前期比0.6%)
○17:00   プラート欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○17:15   10月スイス生産者輸入価格(予想:前月比0.1%)
○17:45   ラウテンシュレーガー欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○18:30   10月英雇用統計(失業保険申請件数推移/失業率)
○18:30   7-9月英失業率(ILO方式、予想:4.0%)
○19:00   11月独ZEW景況感指数(予想:▲25.0)
○19:00   11月ユーロ圏ZEW景況感指数
○20:00   9月ブラジル小売売上高指数(予想:前年同月比1.6%)
○24:00   カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
○24:00   ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○14日04:00   10月米月次財政収支(予想:980億ドルの赤字)
○14日04:00   デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演
○14日04:20   ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
○13-14日   7-9月期ロシア国内総生産(GDP)速報値(予想:前年比1.4%)
○2019年度伊予算修正案の欧州委員会への提出期限

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欧米タイム直前市場コメント!

2018/11/12/15:15:19

日経平均株価:上海株高と円安を好感して底堅い展開

前週末のNYダウが201ドル安やハイテク株安を受けて売りが先行し一時下げh場を204円へと広げたものの、上海株が底堅く推移し投資家心理の悪化が和らいだ。また、1ドル=114円前後の円安を好感した買い戻しに上げに転じた。結局、前週末比19円高の2万2269円と小反発して終了した。

 

東京外国為替市場:日本株と上海株にらみの展開で114円台回復

ドル/円は、本邦実需筋などのドル買い・円売りや日経平均株価がマイナス圏からプラス圏へ転じたことに支えられ114.00円付近へじり高となった。上海総合株価指数をにらみながら114.00円近辺でのもみ合いが続いた。本日はベテランズデーの振り替え休日で、米債券市場が休場となるため、説教的な売り買いが手控えられた。ユーロ/ドルは、2019年予算案を巡るイタリア政府とEUの対立を警戒したユーロ売り・ドル買いが進み、一時1.1309ドル付近まで低下した。

 

米中貿易摩擦の影響に怯える本邦企業の業績見通し

上場企業の2018年9月中間連結決算発表が9日、ピークを迎えた。同日までに決算を公表した1140社を対象に集計したところ、9月中間純利益は前年同期比10.0%増と好調だったが、下半期は米国と中国の貿易摩擦、人件費などのコスト増で減速した。通期(19年3月期)予想は前期と比べ0.7%減と小幅マイナスに転じる見通しとなった。
各社が懸念しているのは、米中貿易摩擦と人件費、物流費、原料価格などの高騰となっている。足元の円相場は前期111円円安に比べ114円前後と円安方向にある。そのため、事業には追い風のはずだが、中間決算発表時に通期の業績予想を下方修正したのは196社と上方修正(181社)を上回った。 

 

米中間選挙の狩猟後も米中貿易摩擦激化する可能性が高い

 米中貿易摩擦は9月末に「第3弾目」に突入し、中国の輸出入への悪影響が懸念されている。しかし、9月の輸出は発動直前の駆け込みで押し上げられる一方、輸入は制裁による下押しが鮮明となる対照的な動きがみられ、貿易制裁にもかかわらず対米黒字が拡大した。 ただし、10月以降は貿易制裁の影響の顕在化が懸念され、米国では中間選挙を経ても対中強硬姿勢が変わる可能性は低く、中国の外需には不透明要因が山積となっている。ただ、10月の輸出額は前年比+15.6%と加速した。対米輸出には下押し圧力が掛かったが、その他向けの輸出の堅調さが全体を押し上げた。人民元安に伴う輸出競争力向上に加え、世界経済の自律回復も押し上げに寄与したとみられる。
 一方で、足下では米中貿易摩擦の激化を受けて、製造業のみならず、非製造業も輸出向け新規受注の悪化を示唆しており、輸出が勢いを維持出来るかは極めて見通しにくい状況にある。 輸入額も前年比+21.4%に加速した。対米輸入は前年割れが続く一方、代替輸入の活発化などが輸入を下支えする。ただし、加工組立関連の素材・部材などの輸入は軒並み頭打ちするなど、先行きの生産鈍化が懸念される。
 その一方、景気下支えに向けた輸入関税引き下げやインフラ投資拡充の動きは輸入を下支えしており、今後は効果発現も期待される。当面は外需向け需要と、景気対策向け需要とのせめぎ合いが続く。 輸出入の堅調を背景に貿易黒字は拡大したが、対米黒字は前月から縮小した。先行きの黒字縮小は緩やかなものに留まり、米国の対中強硬姿勢の改善も見込めず、米中貿易摩擦は一段と激化する可能性が高い。

 

中国は資産効果薄れ新車販売台数の減少止まらず

中国汽車工業協会は、10月の中国の新車販売台数が前年同月比11.7%減の238万100台だったと発表した。4ヵ月連続の前年割れで、1~10月の累計販売台数がマイナスに転じた。2018年通年でも28年ぶりにマイナス成長となる見通しとなっている。不動産価格の高騰が収まったことなどで高額消費にブレーキがかかっている。単月の新車販売台数が2ケタ減となるのは、2ヵ月連続となる。株安や不動産価格の高騰が収まっていることで資産効果が薄れ、自動車が代表とされる高額消費が伸び悩んでいる。中国の個人投資は1億4000万人以上いるとされるが、中国の株価は年初から焼く2割下落している。

 

イタリアの財政問題でユーロの上値の重石

イタリアのトリア経済・財務相は9日、欧州委員会から修正を求められている予算案について、主な柱は変更しないと述べた。 同相は議会の公聴会で『政府はこのところ、予算で特に問題視されている点について、欧州委員会への回答書の作成で忙しい。予算の主要な柱を政府は確認することになる』と述べた。欧州委員会は今月13日までに新たな予算案を提出するようイタリア政府に求めている。
同相は、2019年の財政赤字を国内総生産(GDP)比で最大2.4%とする計画を順守する決意を示し、景気減速によって、拡張的予算の重要性が増したと主張している。明日の欧州時間からイタリアの財政問題でユーロのボラティリティが高まりやすい。

 

英国のEU離脱では最後まで北アイルランド問題がネックに

メイ英政権を支える北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は9日、英国の欧州連合(EU)離脱交渉を巡り、英国を分断する合意を支持しないと表明した。合意は少なくとも95%で達成されているものの、当局者らによると、英領の北アイルランドと陸続きのアイルランドの国境の扱いで依然もめている。
リークされたDUP宛てのメイ首相の書簡を基に英タイムズ紙が報じたところによると、EUは合意なしのブレグジットとなる場合には、北アイルランドのあるアイルランド島と英国本土のグレートブリテン島を隔てるアイリッシュ海に、関税に関する境界を設けることを望んでいる。 メイ首相はDUPに対し、このような英国の分断が発生することは決して容認しないと伝えた。

 

欧米イベント

○18:00   デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演
○21:00   9月インド鉱工業生産(予想:前年同月比4.3%)
○13日04:30   デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演
○米国は債券市場が休場(ベテランズデーの振替)
○カナダはバンクホリデー(リメンバランス・デーの振替)

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

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