FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

2020/06/01/15:13:37

日経平均株価:国内経済活動の再開期待から買い優勢

国内経済活動の再開期待が支えとなり米中対立警戒が一旦後退したとの見方も広がり海外投資家による先物への断続的な買いが入り上げ幅は一時280円を超え2月27日以来約3ヶ月ぶりに2万2000円台に乗せた。しかし、後場に入ると新規の売買材料が乏しく、直近で急ピッチに株高が進行したことを背景に短期的な過熱感が意識され、利益確定売りが出て上値を抑えた。結局、前週末比184円高の2万2064円と反発して終了した。

 

東京外国為替市場:全米各地に拡大する抗議デモを嫌気したドル売り

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りや日経平均株価の反発に支えられ、107.86円付近まで上昇した。しかし、29日のNY市場で付けた107.89円が上値の目処として意識されると、上げ幅は一服した。その後は、白人警官の暴行で黒人男性が死亡した事件をめぐり、抗議デモが全米各地に拡大していることが嫌気され、107.65円付近へじり安となった。午後は日経平均株価の伸び悩みや米長期金利の低下を眺めたドル売り・円買いが入り、107.52円付近まで軟化した。しかし、今晩発表される5月米ISM製造業景況指数を見極めたいとの雰囲気から下値を追う動きは限られ107.55円を挟んだもみ合いとなった。ユーロ/ドルは1.114ドル前後で小幅な値動きに終始した。欧州勢待ちの様相となった。

 

世界では国内企業を守る保護主義が台頭

新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷や中国の影響力拡大を背景に主要国で外国からの投資を制限する動きが強まっている。コロナ危機の発生以降、世界では自由市場を掲げる国が巨額の補助金を投入し、ハイテクや鉱山、製薬など、自国の有力企業を安値で買い上げようと狙う外国資本への防御策を強化している。
これまで国外の投資家を受け入れてきた英国もここにきて、中国系企業による国内ハイテク企業の買収を阻止し、こうした保護主義的な動きに加わった。

 

移行期間延長なければ英国のEUからの『合意なき離脱』のリスク高まる

英国のEU離脱を受けた新たな貿易協定の交渉が難航している中、年末までとなっている移行期間を延長するかどうかを決める期限が6月末に迫っている。今後の通商関係をめぐる交渉は続いているものの、ほとんど進展が見られていない。交渉は6月1日に再開する予定だが、交渉継続の是非を判断する6月の英・EU首脳会議まで交渉ラウンドは1回しか残されていない。英政府は今も移行期間の延長を要請しない姿勢を維持しており、ジョンソン英首相は6月の首脳会議まで十分な進展がない場合、交渉を打ち切る考えを示している。そうなると、移行期間内でEUとの貿易協定を結べず、『合意なき離脱』の状態になる。新型コロナの感染拡大で大きな打撃を受けている英経済は一層厳しい局面を迎えることが予想される。

 

南アランドの再下落には注意が必要

南アフリカも他国同様にロックダウンの水準をレベル4からレベル3に引き下げる。これにより800万人程度の労働者が仕事に復帰するとされている。新型コロナウィルス感染の第2波の恐れはあるが、目先は南ア株が上昇すればランド/円も先週同様に堅調に推移する可能性がある。しかし、南ア経済は決して回復傾向にはない。失業率も50%を超えると言われ、どの格付け会社からも投資不適格の烙印を押されたままで、株価や原油価格の上昇トレンドが停止すると、再びランド/円は下値模索の展開となりやすい。

 

米国ではロックダウン前後にも人種差別の事件

5月25日に米ミネソタ州ミネアポリスで無抵抗の黒人男性ジョージ・フロイドさんが、警察に膝で首を抑えられて死亡するという事件が起きた。そしてこれに抗議するかたちでミネアポリスでは暴動が起こった。しかし、このロックダウン前後にも、ジョギング中の黒人男性が白人親子に撃たれる事件、セントラルパークで犬を虐待している白人の動画を撮影している黒人に対し、その白人が警察に黒人に襲われていると通報した事件など、人種差別の事件が多数おこりどれも動画で拡散された。それ以前にも車に乗っているだけで撃たれるなど、白人警官の黒人に対する過剰暴力は問題になっていた。

 

米国のデモは頂門の一針になる可能性も

火元のミネソタの失業率は8.1%と全米で2番目に低い。それにもかかわらず炎上したのはデモの『聖地』として、州外から経済的な理由を含め様々な不満を募らせた人々が集まっためである。ミネソタ州セントポール氏のカーター市長は『暴徒化し逮捕された人は皆よそから来ていた』と語った。失業率上昇はトランプ政権批判につながる。当然、11月の大統領選で接戦が予想される州では与党不利・野党優位に働く。とりわけ、トランプ米大統領が前回2016年の選挙で辛うじて勝利したミシガンの失業率は22.7%、ペンシルべニアは15.1%と高く、各州に割り当てられた選挙人の数も比較的多い急所である。こうした州で、ひっくり返されるようなことになればトランプ氏の再選は厳しくなる。市場が再選は難しいとの判断に傾けば、株式市場の金融緩和期待は低下し、不況下の株高というバブルはしぼむ。コロナバブルに踊る市場にとって、米国のデモは頂門の一針になる可能性がある。

 

米国市場では5月ISM製造業景況指数が公表

4月実績は41.5だった。新規受注指数と雇用指数は大幅な低下を記録した。5月については、雇用指数がさらに低下する可能性があること、新規受注については、過半数の企業が4月実績との比較で大幅な改善は期待できないことから、全体的には4月実績をやや上回る水準にとどまる見込となっている。

 

欧米イベント

○16:00   5月トルコ製造業PMI
○16:50   5月仏製造業PMI改定値(予想:40.3)
○16:55   5月独製造業PMI改定値(予想:36.8)
○17:00   5月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:39.5)
○17:30   5月英製造業PMI改定値(予想:40.8)
○22:45   5月米製造業PMI改定値(予想:40.0)
○23:00   5月米ISM製造業景気指数(予想:43.5)
○23:00   4月米建設支出(予想:前月比▲6.0%)
○2日03:00   5月ブラジル貿易収支
○ノルウェー、スイス、ドイツ(聖霊降臨祭翌日の月曜日)、フランス(五旬祭翌日の月曜日)、休場

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

欧米タイム直前市場コメント!

2020/05/29/15:25:36

日経平均株価は下落:週末・月末を迎え調整売りがでやすい地合い

前日まで急ピッチで上昇して週末・月末を迎えたことから調整売りが出やすいタイミングだった。トランプ米大統領が中国に関する記者会見を予定していることも米中対立の先鋭化にチアする懸念を誘い上値が重くなった。ただ、日銀のETF買いに対する思惑や押し目買い観測などもあり、下押しも限定的だった。また、トランプ米大統領が29日に開く伝わっている米中政策に関する記者会見について『経済への影響を含めた内容を見極めたい』との声が聞かれ、様子見姿勢が強まった。結局、前営業日比38円安の2万1877円と5営業日ぶりに反落して終了した。東証一部の売買代金が4兆6423億円(概算)となり、2ヵ月半ぶりの高水準を記録した。

 

東京外国為替市場:米中関係悪化の警戒感からドル売り傾向

ドル/円は、本日予定されているトランプ米大統領の記者会見で、米中関係が一段と冷え込むとの警戒感から調整色が強まり、107.35円付近まで下落した。仲値にかけて国内輸出企業から月末に絡む大口のドル売り・円買いも観測された。午後もこの流れが続き、一時107.05円付近まで下落して18日以来の安値を付けた。しかし、心理的な節目の107.00円が視野入りすると、下げは一服した。その後は、日経平均株価の持ち直しを眺めたドル買い・円売りみ見られ、107.10円台を中心に取引された。ユーロ/ドルは、欧州委員会が提案している大規模な経済復興計画を期待したユーロ買い・ドル売りが続き、一時1.1110ドルまで上昇した。米長期金利が低下したことも、ドル売り要因となった。

 

日本株に個人マネーが向かう

相場急落時に買い向かった個人投資家の信用評価損益率が5月15日時点で約3ヶ月ぶり水準まで回復し、相場急落とその後の株価反発に上手く乗れた個人投資家の『買うから上がる、上がるから買う』の好循環が発現している。待機資金の受け皿MRF(マネー・リザーブ・ファンド)は5月25日時点で約11兆6000億円と昨年末から1兆円減少、現物株中心に日本株に個人マネーが向かい、インターネット証券大手5社合計の3月の新規口座開設数がコロナ感染前の1月比で倍増、新規層の記録的な流入も個人比率の上昇に繋がった。

 

歴史的な黒点極小期に突入:自然現象にも影響している可能性も

太陽は、2019年に、太陽黒点が出現しない日の比率が太陽観測史上で最大を記録したことで、歴史的な黒点極小期に突入している。米NASAは、次の太陽活動周期サイクル25は『過去200年間で最も弱くなる』という予測を発表している。太陽活動の停滞を意味する太陽黒点の減少は、地球の火山活動の活発化、地震の頻発化、海流パターンの変化に呼応する。 1921年の極小期の2年後の1923年には、関東大震災が発生し、1996年の極小期の1年前には、1995年の阪神淡路大震災が発生、2008年の極小期の3年後には、2011年の東日本大震災が発生した

 

メキシコ貿易赤字は過去最大

メキシコ国家統計地理情報局(INEGI)が25日に発表した4月メキシコ貿易収支は30.87億ドルの赤字となり、3月の33.98億ドルの黒字から大幅に悪化した。季節調整済みでは42.93億ドルの赤字となり、3月の18.73億ドルの黒字から悪化した。赤字幅は1991年の統計開始以降で最大を記録した。
内訳をみると輸出が37.7%の減少、輸入も21.9%の減少となっており、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかったことを示している。メキシコでは主要産業である自動車産業などが稼働再開に向けた動きを見せているが、市場では『世界的な需要の低下とサプライチェーンの混乱により、今後も輸出入は弱まる』との声も聞かれている。


トルコリラは他中銀との通貨スワップ設定・拡大の協議次第

トルコ中銀は4月外貨準備高・流動性報告で、市中銀行からの外貨借り入れ(1年未満の通貨スワップ)が3月から59億ドル増加し、355億ドルに達したことを明らかにした。この額はトルコ中銀の外貨準備高(グロス、金保有高を含む)の約4割に相当するとされた。その外貨準備高ですが、4月は前月比で15.5%減少し、かなり積極的なリラ買い・ドル売り介入を実施していたことがうかがえる。トルコ中銀の外貨準備高の減少傾向が止まらないなかで、為替介入も限界がある。他中銀との通貨スワップ設定・拡大の協議が進展しないようであれば、市場は再びリラ売りを強める可能性はある。

 

米国住宅市場では需要が回復している兆候も

全米不動産業者協会(NAR)が発表した4月の中古住宅販売成約指数は前月比‐21.8%となった。3月-20.8%から改善予想に反して一段と低下し、2010年5月来で最大の下落率となった。同指数は契約時点での統計となるため今後1.2カ月の中古住宅販売の先行指数をして注目される。新型ウイルスパンデミックの影響で外出が自粛されたことにより、一段と活動が鈍化した可能性が示唆された。2019年4月に比べて‐33.8%と、NARの統計開始以降、最大の下落率を記録した。一方で、需要がすでに回復している兆候が見られ、住宅市場にとり朗報となる。外出規制で在宅勤務が増え都会から郊外の家屋に買いかえる動きが活発化しているほか、雇用への不安は残るが住宅ローン金利が過去最低水準となっていることは住宅市場を支援する。

 

昨日の米国経済指標:1-3月期GDPは金融危機以来最大の落ち込み

米労働省が発表した週次新規失業保険申請件数は前週比‐32.3万件の212.3万件と予想210.0万件を上回った。過去10週間の申請件数は4000万超に達した。一方、失業保険継続受給者数は2105.2万人で、前回2491.2万人から増加予想に反して減少し、4月24日来で最低となった。米商務省が発表した1-3月期国内総生産(GDP)改定値は前期比年率‐5.0%と、予想外に速報値-4.8%から下方修正され2008年金融危機以来最大の落ち込みとなった。一方、1-3月期個人消費改定値は前期比年率-6.8%と、速報値-7.6%から予想以上に上方修正された。4月耐久財受注速報値は前月比‐17.2%と過去最低を記録した2014年8月来で最低となったものの予想-19.0%は上回った。変動の激しい輸送用機除いた4月耐久財受注速報値も前月比-7.4%と過去最低となった2009年1月来で最低となったが、予想-15.0%程、悪化しなかった。国内総生産(GDP)の算出に用いられる製造業出荷・資本財(航空機を除く非国防)速報値は前月比-5.4%と過去最低を記録した2009年1月来で最低。予想-12.2%は上回った。

 

欧米市場イベント

○15:00   4月独輸入物価指数(予想:前月比▲1.4%/前年比▲7.2%)
○15:00   4月独小売売上高指数(予想:前月比▲12.0%/前年比▲14.0%)
○15:00   4月南アフリカマネーサプライM3(予想:前年比7.60%)
○15:45   5月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比0.1%/前年比0.3%)
○15:45   4月仏卸売物価指数(PPI)
○15:45   4月仏消費支出(予想:前月比▲15.0%)
○15:45   1-3月期仏GDP改定値(予想:前期比▲5.8%)
○16:00   5月スイスKOF景気先行指数(予想:70.0)
○16:00   4月トルコ貿易収支(予想:39.6億ドルの赤字)
○16:00   1-3月期トルコGDP(予想:前年比4.9%)
○16:30   1-3月期スウェーデンGDP(予想:前期比▲0.3%)
○17:00   5月ノルウェー失業率(予想:6.9%)
○17:00   4月ユーロ圏マネーサプライM3(予想:前年比8.2%)
○18:00   5月ユーロ圏HICP速報値(予想:前年比0.1%)
○18:00   5月ユーロ圏HICPコア速報値(予想:前年比0.8%)
○19:00   外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)
○21:00   4月南アフリカ貿易収支(予想:105億ランドの黒字)
○21:00   1-3月期インドGDP(予想:前年同期比2.1%)
○21:00   1-3月期ブラジルGDP(予想:前年同期比▲0.3%)
○21:30   3月カナダGDP(予想:前月比▲9.0%/前年比▲3.4%)
       1-3月期カナダGDP(予想:前期比▲10.0%)
○21:30   4月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比▲2.0%)
○21:30   4月カナダ原料価格指数
○21:30   4月米個人消費支出(PCE、予想:前月比▲12.6%)
       4月米個人所得(予想:前月比▲6.5%)
       4月米PCEデフレーター(予想:前年比0.5%)
       4月米PCEコアデフレーター(予想:前月比▲0.3%/前年比1.1%)
○22:45   5月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:40.0)
○23:00   5月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、確報値、予想:74.0)
○24:00   パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、討議に参加
○トランプ米大統領、中国について記者会見

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欧米タイム直前市場コメント!

2020/05/28/15:14:17

日経平均株価:引けにかけて上げ幅拡大で終了

米国株の大幅高を素直に好感して寄り付きから3桁上昇した。米国同様に金融株が上昇の先導役となり、高く始まった後も上げ幅を広げた。アジア株が概ね堅調なスタートとなったことを確認すると一段と上方向への勢いを強め、高いところでは21900円台に乗せる場面もあった。一方、マザーズ指数は下落スタートから下げ幅を広げており、日経平均とは対照的な動きとなった。日経平均株価は引けにかけて上げ幅を拡大して終了した。結局、前営業日比497円高の2万1916円で終了した。東証1部売買代金も3兆円を超える大商いとなった。

 

東京外国為替市場:様子見ムード強く107円台後半でもみ合う展開

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りや日経平均株価の大幅高に支えられ、107.90円付近まで上昇した。しかし、前日の海外市場で付けた107.95円が上値目処と意識されると上げ幅は一服となった。その後は、香港情勢をめぐる米中の対立激化を警戒したドル売り・円買いも見られ、107.80円を挟んだもみ合い相場となった。午後は、日経平均株価やアジア主要株価を睨みながら、107.80円台を中心とした狭いレンジ内での展開となった。ユーロ/ドルは、1.10ドル台前半で小幅な値動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

日銀保有のETFに大規模含み損から含み益へ

日銀は27日、2020年3月期決算を公表した。3月末時点で保有していた上場投資信託(ETF)の時価と簿価の差額である評価損益は、3081億円の含み益となった。コロナウイルスの感染拡大を背景とする株価急落で一時3兆円規模の含み損が出ていたが、辛うじて損失を回避した格好だ。もっとも、昨年9月末時点では約4兆円の含み益を計上しており、コロナショックでその大部分が吹き飛んだ。

 

ジョンソン英国首相の支持率がマイナスまで急落

3月初旬20%台から30%に上昇し始めたジョンソン首相の支持率は、同月23日・ロックダウン(都市封鎖)が実施されたころには、指導力への期待から40%台まで上昇。しかしながらその後は4月8日(新型コロナに首相が感染し入院中)の47%をピークとし、支持率は低下傾向となる。英国で新型コロナ感染による死者数が増加し、死者数合計が2万人を超えた辺りから首相支持率も下落幅を広げ始めた。5月初旬に死者数合計が欧州最大となり、ついに3万人を上回ると支持率は20%台まで沈んだ。21日に10%割れまで下げた後はやや持ち直していたが、外出禁止違反(400キロ以上の長距離移動)をした首相側近のドミニク・カミングス上級顧問を擁護したことで、支持率はマイナスまで急落した。

 

ラガルドECB総裁発言から次回ECB理事会で追加緩和観測が浮上

欧州中銀(ECB)ラガルド総裁が27日開催の若者との対話集会でユーロ圏20年の実質GDP成長率がマイナス8-12%との見通しを示した。ECBは新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化の3つのシナリオとしてGDPマイナス幅を5%、8%、12%を提示し、これまでECBはマイナス5-12%を予想してきたが、経済活動再開の遅延により厳しい見通しとなり、8-12%の着地の可能性が高まり、6月4日の次回ECB理事会での追加緩和観測が浮上している。

 

香港及び台湾問題が米中対立の火種となる可能性も

米中両国は1月に『第一段階の合意』に至ったが、内需低迷による輸入鈍化で足下の中国の対米貿易黒字は拡大している。大統領選を控え、トランプ米大統領は対中制裁の「戦果」と期待した対中赤字の縮小が進まず、対中姿勢を硬化させる可能性が高まっている。 他方、ここ数年の米中間では人権問題も懸案事項となっており、昨年の香港での民主化デモ激化の動きはその流れを後押ししてきた。先週に開幕した全人代では中国政府が香港に対する『国家安全法』が審議されており、同法設立により『一国二制度』の形骸化が懸念される。 また、台湾問題でも中国政府は統一に向けて態度を硬化させる姿勢をみせている上、国防費増強はそれを後押しする懸念もある。米国では議会を中心に対中姿勢を硬化させる動きがみられ、香港及び台湾問題が対立の火種となる可能性にも要注意と言える。

 

米国消費者信頼感指数が景気後退の最終局面を示唆

米国5月消費者信頼感指数は86.6と、予想87.0を下回った。4月から上昇したものの、5月分は85.7と、速報値の86.9から下方修正された。現況指数の低下が全体指数を押し下げた。新型コロナウイルス感染拡大を回避する目的の経済封鎖で失業率の急増した。労働市場や経済の見通しが急激に悪化し現況指数は71.1と、2013年8月以降7年ぶり低水準に落ち込んだ。4月分は従来の86.9から85.7へ下方修正された。一方で、期待指数は96.9と、2カ月連続で上昇し2月以来の高水準を回復した。4月分は94.3と、従来の93.8から上方修正された。経済活動の再開が始まったことや株式相場、原油価格の反発に期待感が広がった。過去3回のリセッションのうち2回は、下降期の最終局面において消費者期待指数が現況を大幅に上回る傾向がある。このため、5月消費者信頼感は、今回のリセッションが終盤にあることを示唆している可能性があり注意深く楽観的になれる。ただ、ウイルスの見通しが不透明で、第2波に見舞われると、景気が一段と悪化、FRBも警戒する恐慌入りする可能性は警戒される。さらに、労働市場の急激な悪化も依然リスクとなり得る。

 

米国市場では1-3月期国内総生産(GDP)改定値が公表

参考となる速報値では個人消費と企業設備投資が急激に落ち込んでいた。改定値では企業設備投資か在庫投資が上方修正される可能性あるとみられているが、住宅投資は下方修正される可能性があるため、全体の成長は速報値と同水準にとどまる見込となっている。

 

米国市場では4月耐久財受注が公表

3月実績は前月比▲14.4%で予想以上の落ち込みとなった。民間航空機受注の大幅な減少が要因となった。民間設備投資の先行指標とされるコア資本財の受注は減少しなかった。4月は、国防関連を除く耐久財受注は企業設備投資の減少が予想されており、全体的に3月実績を下回る可能性が高い。コア資本財の受注も減少する見込み。

 

欧米イベント

○未定 ◇ 5月月例経済報告
○16:30   ビルロワ・フランス中銀総裁、講演
○18:00   5月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:70.3)
○18:00   5月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲18.8)
○18:30   4月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比0.1%/前年比2.7%)
○19:00   サンダース英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○未定   ポーランド中銀、政策金利発表(予想:0.50%で据え置き)
○21:00   5月独消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比▲0.1%/前年比0.6%)
○21:30   1-3月期カナダ経常収支(予想:100.0億カナダドルの赤字)
○21:30   1-3月期米国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比年率▲4.8%)
           個人消費(改定値、予想:前期比年率▲7.5%)
           コアPCE(改定値、予想:前期比年率1.8%)
○21:30   4月米耐久財受注額(予想:前月比▲19.0%/輸送用機器を除く前月比▲14.0%)
○21:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:210.0万件/2575.0万人)
○23:00   4月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲15.0%/前年比▲28.1%)
○24:00   EIA週間在庫統計
○24:00   ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加
○29日02:00   米財務省、7年債入札
○29日04:00   ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
○中国全国人民代表大会(全人代)閉幕

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欧米タイム直前市場コメント!

2020/05/27/15:12:31

日経平均株価:経済活動再開と第2次補正予算を好感した買い優勢

前日の米国株式市場が上昇したほか、引き続き国内での経済活動再開に対する期待が大きく、堅調な地合いが継続した。ただ、これまでの急速な上昇に対して警戒感も台頭、第2次補正予算の内容が明らかになったことを受けて上値を追う場面があったものの、前場引けにかけて上値が重くなった。午後からは買い継続的に入り上げ幅を広げる展開となった。結局、前日比148円高の2万1419円と3日続伸して終了した。

 

東京外国為替市場:107円台半ばでもみ合う展開

ドル/円は、日経平均株価の下げ幅が一時100円を超えたことが嫌気され、107円台半ばから107.37円付近へ下落した。しかし、22日に付けた107.32円が下値目処として意識されると、下げは一服した。その後は、国内輸入企業などがドル買い・円売りに動き、107.60円付近まで持ち直す展開となった。ただ、中国が『国家安全法』を香港へ適用する方針を示し、米中の対立激化が懸念されていることから伸び悩み、107円半ばで取引された。午後は、日経平均株価やアジア主要株価の動向をにらみながら、107.50円を挟んでもみ合い相場が続いた。ユーロ/ドルは、欧州委員会が本日発表する1兆ユーロ超えの復興計画を見極めたいとの雰囲気もあり、1.09ドル台半ばで小幅な値動きに終始した。

 

中国の経済はまちまちの回復

中国国家統計局が発表した4月の工業部門企業利益は、前年同月比4.3%減の4781億元(約670億ドル)となった。3月は34.9%減だった。1-4月の利益は前年比27.4%減の1兆2600億元となった。3月末時点の工業部門企業の負債は前年比6.2%増加となった。3月末時点は5.4%増だった。中国経済は厳格な新型コロナウイルス封じ込め措置からの再開が進む中、回復状況はまちまちとなっている。ただ、国内消費や投資が低迷し、雇用へのしわ寄せが強まる中、利益は引き続き圧迫される見込みとなっている。

 

米中通貨戦争の再燃リスクも

全人代が開幕した22日、2つの懸念材料が示されて人民元安の傾向が強まった。2020年の国内総生産(GDP)成長率目標の設定見送りと、香港が国家安全を維持するための法制度と執行メカニズムに関する議案の提案である。香港についてはトランプ米大統領が『強力に対処する』とけん制しており、香港経済日報(電子版)は『米中の力比べが白熱すれば、人民元はより大きな下落圧力に直面するだろう』と指摘する。基準値は、人民銀が取引の目安として毎朝発表しており、当局の意向が反映されていると市場は受け止める。元安には中国の輸出競争力を高める効果があるため、対米対立が深まる中で国内経済支援のため当局が元安を容認したとの見方がくすぶる。だが、元安が一気に進めば当局が恐れる資本流出が止まらなくなる事態にもつながりかねず、中国にはもろ刃の剣でもある。中国当局の意向がどうであれ、元安が一方的に進めばトランプ政権が反発を強める可能性は増すことになる。18年秋の元安進行時には、ムニューシン米財務長官が『通貨安の進展を特に懸念している』と中国をけん制した。『通貨戦争』の再燃が新たな火種になる恐れもある。

 

新型コロナウイルスのワクチン関連報道:米国株の買い要因

米製薬メルクは26日、新型コロナウイルスワクチン2種類の開発に向け、オーストリアのワクチンメーカー、テミス・バイオサイエンスを買収するほか、非営利研究団体IAVIと提携すると発表した。製薬大手の間で加速している新型コロナワクチン開発レースに参戦する。さらに、非上場バイオテク企業リッジバック・バイオセラピューティクスと新型コロナ治験薬開発で提携する方針も明らかにした。メルクはテミス買収に関する詳細は明らかにしていない。テミスがはしか予防接種技術を用いて開発したワクチン候補について、メルクは『数週間以内』にもボランティアへの接種を始めたい考えを示した。

香港はざわついているが、マーケットは完全に無視して、NYダウも1社のワクチン開発ニュースで大きく上昇する事態となっている。

 

トルコのリビア内戦への深入りはリラのリスク要因

トルコでは断食明けの祝日が終わり、本日からイスタンブール市場がオープンとなる。その中、複数のメディが伝えているが、長期化する北アフリカ・リビアの内戦では現在、トルコ対ロシアの代理戦争の様相となっている。最近はトルコ側が優位に立っているようだが、ロシアも戦闘機をリビアに派遣したとの報道もあり、混乱拡大への懸念が高まっている。トルコのリビア内戦への深入りが、今後はトルコリラのリスク要因の1つとなる可能性もある。

 

メキシコペソは買い材料のない上昇のため注意

欧州株式相場の上昇で投資家のリスク志向が改善したほか、原油先物価格の上昇を背景に産油国通貨とされるペソに買いが入りメキシコペソ/円は堅調に推移した。しかし、メキシコ国内からのポジティブな要因は伝わっておらず、投資家のリスク許容度が低下した場合はエマージング通貨であるメキシコペソは真っ先に売り込まれる通貨であることには注意が必要となる。米中の対立や香港情勢など世界的なリスク志向に影響を与えうる材料には注意しておく必要がある。

 

米国株は裏付けのない景気回復を織り込む上昇

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界の経済活動が止まった2ヵ月ほど前には考えられなかったことだが、S&P500は26日、心理的節目となる3000ポイントを一時的に突破した。3月の安値から37%の値上がりした形となる。しかし、株式市場は、現在のところデータの裏付けがない景気回復を織り込んでしまった可能性がある。一部の市場参加者は、株高は水準とスピードの両面で行き過ぎていると警鐘を鳴らしている。相場上昇の背景には、①米FRBと他の主要国中銀による異例なほどの積極的金融緩和、②米議会が承認した大規模経済策、③新型コロナウイルスのワクチンの早期開発で世界経済の停止が最悪の打撃をもたらす局面は終わったとの期待などがある。

 

欧米市場のイベント

○14:30   5月仏企業景況感指数(予想:69)
○14:30   5月仏消費者信頼感指数(予想:92)
○16:30   ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ECB主催のイベントに参加
○17:30   デギンドスECB副総裁、講演
○20:00   MBA住宅ローン申請指数
○23:00   5月米リッチモンド連銀製造業景気指数(予想:▲40)
○28日01:30   ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
○28日02:00   米財務省、5年債入札
○28日03:00   米地区連銀経済報告(ベージュブック)
○28日04:00   ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

欧米タイム直前市場コメント!

2020/05/26/15:10:49

日経平均株価:経済活動再開で出遅れ株への買い戻し

新型コロナウイルス感染に対する緊急事態宣言が全面解除され経済活動再開への期待が広がり空運株や鉄道株など出遅れ銘柄中心に買いが入り約3ヶ月ぶりに2万1000円台に乗せた。朝方から幅広い銘柄が買われ2万1000円台を回復、その後も一段高となった。市場では『節目と見られていた2万1000円を上抜け、買い戻しが入りやすい水準となった』との指摘があった。結局、前日比529円高の2万①②⑦1円と続伸して終了した。

 

東京外国為替市場:108.00円の上値の重さを確認

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りや日経平均株価の大幅高に支えられ、107.92付近までじり高となった。NY原油先物が時間外取引で上昇したことも、リスク選好の円売りを誘った。しかし、心理的節目の108.00円はドル売り・円買いオーダーが厚いとみられ、上げは一服した。その後は、短期筋の利食い売りも散見され、107.85円を挟んでもみ合いとなった。午後は、日経平均株価を睨みながら、107.80円台を中心とした狭いレンジで取引された。休場明けとなる米国の株式市場や経済指標を見極めたいとの雰囲気もあり、積極的な売り買いは手控えられた。ユーロ/ドルは、1.09ドル台前半で小動きとなった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

中国当局による人民元安誘導は円高要因になりやすい

中国では22-28日にかけて共産党政府が全国人民代表大会(全人代、国会に相当)を開催しているが、開会直後に香港に国家安全法の制定を義務付ける新たな法案が提出された。米トランプ政権は強く非難しているほか、香港では抗議デモが広がっている。全人代では28日の閉会前に採決が行われる予定であり、米中対立やデモの激化に神経質となる地合いが続いている。25日には中国人民銀行による人民元の基準レートが、12年ぶりの人民元安・ドル高水準に設定された。米中対立を受けた市場主導の中国からの資本流出懸念と人民元売り圧力のほか、中国当局による米国牽制と輸出テコ入れのための人民元安誘導という2つの側面が意識される。いずれにしても人民元の下落は、リスク回避の円高要因となりやすいので注意が必要となる。

 

欧米景気の先行き回復に対する期待感だけが市場を支える状態

引き続き欧米での感染の沈静傾向に大きな変化はない中で、景気の先行き回復に対する期待が市場を支えた。もっとも、足元の経済指標は、ロックダウン下で景気が記録的に落ち込んでいることを確認するものばかりで、先行きの回復が力強いものとなることを示唆する統計はまだ確認されていない。加えて、コロナ問題などを巡っての米中関係の悪化懸念なども一段と強まったこともあり、全般的には方向感に欠ける展開となっている。これまで発表されている経済統計からは、①. ロックダウン下の影響による景気の落ち込みは過去最大級で、おそらくは市場が織り込んでいた以上に厳しかったこと、 ②先行して経済活動がほぼ制限なく再開されている中国の経済指標からは、再開後の経済活動の回復が弱いことなどが見て取れる。こうしたことから、欧米において感染者のピークアウトが見え始めた4月中旬以降からの、年後半の景気のV字回復的な期待は、相当程度後退している。好材料を多く織り込み、追加の好材料が出てきにくい環境下のマーケットは、マイナス材料に過度に反応する傾向がある点には要注意となる。

 

メキシコの経済活動再開は早過ぎのリスクが潜在

国内情勢としては非常に厳しい状況となっている。自動車産業については徐々に活動を再開する動きを見せているほか、主力のビール産業も6月からの活動再開を目指している状況ですが、新型肺炎の感染ペースは留まるところを見せていない。欧米などは感染拡大が落ち着いたことを確認して経済を再開しているが、メキシコの場合、急ぎ過ぎていることを指摘する専門家が圧倒的多数となっている。そのようななか、自動車産業については、フォルクスワーゲンやアウディなどの主要工場があるプエブラ州が活動を再開できる状況ではないとの見解を先週末に示した。その発表に対して、自動車業界団体は段階的な再開を認めるようにプエブラ州知事に要請するなど政府内はもちろんのこと、州ごとでも新型肺炎に対する意識の違いが鮮明になっている。たしかに経済再開に伴う期待感がペソ相場を支えることは確かだが、今回の急ぎ過ぎた活動再開で払った代償を今後のリスクと捉える市場参加者が多いことも事実である。

 

米国の雇用回復遅れで景気回復に遅れも

この春に解雇された人々の大多数は、かなり早い時期に仕事に戻れると思っていた。しかし、多くの人にとってそれは都合の良い考えだったことが明らかになりつつある。全米各州が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)前の常態に戻るよう奨励するなか、飲食店や工場などは、再開を認められてもそうしないか、スタッフを減員して再開すると述べている。パウエル米FRB議長は米経済の回復に1年以上かかりかねないと警鐘を鳴らしている。

 

米国市場では5月消費者信頼感指数が公表

4月実績は86.9に急低下した。新型コロナウイルスの感染拡大や外出制限などの影響で経済情勢は大幅に悪化したことが要因だった。5月については経済再開への期待が広がっていることから、やや改善する見込みとなっている。

 

欧米市場イベント

○15:00   6月独消費者信頼感指数(Gfk調査、予想:▲18.9)
○18:00   ホールデン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○20:00   1-3月期メキシコGDP確定値(予想:前期比▲1.6%/前年比▲1.6%)
○21:45   レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○22:00   3月米住宅価格指数(予想:前月比0.5%)
       1-3月期米住宅価格指数
○22:00   3月米ケース・シラー住宅価格指数(予想:前年比3.4%)
○22:00   4月ロシア失業率(予想:5.5%)
○23:00   4月米新築住宅販売件数(予想:前月比▲23.4%/48.0万件)
○23:00   5月米消費者信頼感指数(予想:88.0)
○27日02:00   米財務省、2年債入札
○27日02:00   カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、討議に参加
○27日06:00   ポロズ・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁、証言
○トルコ(砂糖祭)、休場

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