FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

2022/03/11/15:13:23

日経平均株価:金利上昇からグロース株の売りに押される展開

米国株安を受けて、200円近く下げて始まった。前日に大幅高となったこともあって、安寄りした後、しばらくは下げ渋る動きが見られた。しかし、ウクライナ情勢や米インフレの加速を警戒した売りがかさんだ。また、マザーズ指数が大きく値を崩したほか、レーザーテックやソフトバンクGなども大幅安となるなど、グロース株が世界的な金利上昇に神経質な反応を示したことから、次第に売りに勢いがついた。下げ幅は700円を超えて心理的節目の2万5000円を割る場面もあった。結局、前営業日比527円安の2万5162円と大幅反落して終了した。

 

東京外国為替市場:ドル/円は5年2ヵ月ぶりのドル高・円安

ドル/円は、前日に発表された2月米消費者物価指数(CPI)の強い数字でインフレ圧力が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めペースが加速するとの思惑からドル買い・円売りが進み、116.30円台へ上昇した。仲値にかけて国内輸入企業のドル買い・円売りも通常より多く観測された。午後に入っても堅調地合いは続き、日米金融政策スタンスの違いが鮮明となっているとで一時116.74円付近まで急伸し、およそ5年2ヵ月ぶりのドル高・円安をつけた。原油などエネルギー価格の上昇で、日本の貿易赤字が拡大していることも円売り要因となった。ユーロ/ドルは、週末を控えた持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが一巡すると、1.1000ドルを挟んで方向感に欠ける値動きとなった。緊迫化するウクライナ情勢の動向を見極めたいとのムードが広がった。

 

22年ロシア経済は15%のマイナス成長か:国際金融協会

国際金融協会(IIF)は10日、ロシアの経済成長率は2022年が前年比で15%のマイナスになるとの予測を発表した。従来は3%のプラス成長を見込んでいた。ウクライナ侵攻に伴う日米欧らの経済・金融制裁で金融環境が急速に引き締まっており、成長率のマイナス幅はリーマン・ショックに見舞われた09年の2倍に達するという。今回は紛争とエスカレートはしないという基本シナリオのもとで予測した。リポートでは『通貨ルーブルの急落やロシア株の下落、国債利回りの急上昇でロシアの金融環境は急激に悪化している』と指摘した。他の新興国への影響については『ロシアの経済規模は小さく国債金融市場から孤立しようとしているため波及は見込んでいない』との認識を示した。だが、紛争が激化すれば、ロシア産資源の不買運動が起こり『ロシアの輸入余力が落ち込んで不況が深刻化する可能性がある』とも説明。新興国諸国から資本流出が加速し『安全資産としてドルが買われ、市場は混乱することになる』との見方を示した。

 

ECBは政策金利の据え置きを決定:年内の利上げは除外せず

欧州中央銀行(ECB)は定例理事会で市場の予想通り政策金利の据え置きを決定した。インフレがECBの目標である2%で安定する可能性が高まったため、インフレの中期見通しが現状通りなら量的緩和を7-9月期に終了すると、想定より早く金融刺激策を終了する計画を示した。年内の利上げの可能性も除外しなかった。 その後、ラガルド総裁が会見で、『金融引き締めではない』と主張した。

 

トルコは米国やイスラエルとの関係改善へ

ロシアとウクライナの間をトルコが取り持った外相会談は、国際社会が期待していたような結果を出すことはできなかった。昨日はエルドアン大統領はバイデン米大統領と電話会談を行い、トルコによる戦争当事国の対話維持の重要性を訴えた。地域の存在感を高めるうえでも、今後もロシアとウクライナの仲介にトルコは努めることになる。また他の外交では、イスラエルの国家元首が10年以上ぶりにトルコを訪問した。ここ数年は不安定だった両国関係が改善に向かうようであれば、貿易やエネルギーなどでトルコの助けになるかもしれない。

 

南アの経常収支は市場予想下回る

昨日発表された、南アの10‐12月経常収支は市場予想や前回を黒字額が減少した。原油価格の高騰、ランド安、外国産品の需要が旺盛だったことが要因となった。市場の反応は限られたが、今後も原油高の影響が出てくることが予想される。

【昨日の指標結果】      (結果)   (予想)
10-12月期南アフリカ経常収支 +1200億ランド +1500億ランド

 

メキシコ中銀は7会合連続の利上げ予想:国内経済への影響を懸念

2月メキシコ消費者物価指数(CPI)は前年比で+7.28%と前月の+7.07%から上昇し、昨年11月に付けた+7.37%に再び迫るインフレ高進を示した。また、エネルギーと農産物を除いたコア指数は前年比で+6.21%と2001年6月以来の高水準を付けるなど、足元の原油高騰だけが国内インフレに影響を与えているだけでなく、価格全体が上昇していることが窺える。この結果を受けて市場では月後半24日に予定されているメキシコ中銀の金融政策決定会合では政策金利を0.50%引き上げ、6.50%と7会合連続での利上げを実施するとの予想が大勢を占めている。ただ、最近ではヒース副総裁やエスキバル副総裁が積極的な利上げに対して難色を示し、国内経済への影響を懸念するなどネガティブな反応を示している。

 

米国ではヨウ素剤が在庫切れ:広がる核への警戒感

米国では目下、放射線の被爆から身を守るとされるヨウ素剤(ヨウ化カリウム)の在庫切れが相次いでいる。ロシアによるウクライナ侵攻がエスカレートし、核を巡る衝突や放射能漏れを招く事故が起こりかねないとの市民の警戒感を色濃く反映している。米食品医薬品局(FDA)からヨウ素剤の販売を承認されている数少ないメーカーの1社であるアンベックスでは、2月24日の週に注文が殺到。月末までには完全に売り切れとなった。

 

欧米市場イベント

○16:00   2月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.9%/前年比5.1%)
○16:00   1月英国内総生産(GDP、予想:前月比0.2%)
○16:00   1月英鉱工業生産(予想:前月比0.1%/前年比1.9%)
○16:00   1月英製造業生産高(予想:前月比0.2%)
○16:00   1月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:126.00億ポンドの赤字/24.00億ポンドの赤字)
○16:00   1月トルコ経常収支(予想:73.0億ドルの赤字)
○16:00   1月トルコ鉱工業生産(予想:前月比▲2.2%)
○17:00   レーン・フィンランド中銀総裁、講演
○19:00   センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演
○21:00   1月インド鉱工業生産(予想:前年同月比1.5%)
○21:00   2月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比10.50%)
○21:00   1月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比▲0.4%)
○22:30   10-12月期カナダ設備稼働率(予想:82.2%)
○22:30   2月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化16.00万人/失業率6.2%)
○24:00   3月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:61.4)
○欧州連合(EU)首脳会議(最終日)
○13日 米国が夏時間に移行

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欧米タイム直前市場コメント!

2022/03/10/15:11:56

日経平均株価:自立反発を期待した買いが活発化

高騰していた原油相場の落ち着きのほか、米国株市場での大幅上昇やウクライナ情勢の好転期待が支えとなった。日経平均は前日までの4営業日で1800円超下落したため、このところ売られていた銘柄を中心に自立反発を期待した買いが活発化した。結局、前営業日972円高の2万5690円と5営業日ぶりに大幅反発して終了した。上げ幅は2020年6月16日以来の大きさだった。3月第1週(28日~4日)の海外投資家(外国人)は2692億円の売り越しとなり、2週連続となった。個人投資家は2941億円の買い越しとなり、3週連続となった。信託銀行は1407億円の売り越しとなり、6週ぶりとなった。

 

東京外国為替市場:日本株の急反発でリスク選好の円売り優勢

ドル/円は、本邦輸入勢などがドル買い・円売りに動き、116.10円付近へ上昇した。日経平均株価が急反発で、リスク選好が高まったことも円売りを支えた。午後に入っても堅調地合いは続き、アジア株高にも支えられてさらにドル買い・円売りが進み116.20円付近までじり高となった。ただ、2月10日につけた116.34円が視界に入ると上値目処として意識されると上げは一服となった。その後は、利益確定などのドル売り・円買いも見られ、116.10円台を中心とする狭いレンジでもみ合いとなった。ユーロ/ドルは、欧州時間に予定されている欧州中銀(ECB)理事会やロシアとウクライナ・トルコ外相会談を控えて様子見ムードが広がり、1.10ドル台半ばで小動きに終始した。

 

2月の国内企業物価は過去最大の上げ幅

日銀が10日発表した2月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数(2015年=100.0)は前年比プラス9.3%となった。ウクライナ情勢の緊迫化などで資源価格に上昇圧力がかかった。上昇率は前月(8.9%)から拡大し、比較可能な1981年以降で過去最大の上げ幅となった。国内企業物価指数の上昇は12ヵ月連続。指数の110.7は、1985年5月(110.8)以来の高水準となった。

 

欧州市場ではECB定例理事会:予想は各種政策金利は現状維持

欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事は3月2日、『エネルギーなどの供給におけるショックによって引き起こされている現在のインフレ高進について、ECBは忍耐強く対応すべき』と述べた。2月ユーロ圏消費者物価指数速報値は、前年比+5.8%、同コア指数は+2.7%と高い伸びを記録したが、ウクライナ情勢の悪化を考慮して金融政策は現状維持となる可能性が高い。

 

原油価格は値上がりの可能性あり株式には下落余地:クレディ・スイス

株式相場の急落を押し目買いの好機とみるのは時期尚早だと、クレディ・スイス・グループのストラテジストらが指摘した。クレジットスプレッドが拡大しているほか、企業の業績見通しは総じて下方修正されているためだという。ロシアがウクライナを侵攻し、原油価格はバレル当たり120ドルを突破、インフレは高止まりが続いている。欧州および米国の株価は今週に入り低迷していたが、9日には反発している。クレディ・スイスのストラテジストによれば、原油価格は140ドルから160ドルまで値上がりする可能性があり、株価にはまだ下落余地がある。
アンドルー・ガースウェイト氏は『われわれの株式リスクプレミアムのモデルは今も上向きではない』とリポートで指摘した。1990年に起きたイラクのクウェート侵攻では、原油価格がピークに達したのは侵攻から2カ月後だったと説明した。クレディ・スイスのストラテジストはウクライナ危機を理由に、欧州の今年の経済成長率予想をわずか1%と予想。従来の2-2.5%予想から下方修正した。

 

トルコ南部で露外相とウクライナ外相で停戦協議

トルコ南部のリゾート地アンタルヤでは、今週11日から3日間の予定で政府主催の外交フォーラムが開かれる。その前日10日に、ラブロフ露外相とクレバ・ウクライナ外相がチャブシオール・トルコ外相も交えて、停戦に向けた話し合いをする。そのトルコで、ウクライナとロシアの戦争に関する最近の世論調査によれば、調査対象の7割以上がウクライナ情勢を懸念していると答えた。対立する2カ国へのスタンスとしては、『約78%がトルコは中立を保つべき』と考えていることが分かった。ロシア側につくべきとするのは2%強、トルコが加盟している北大西洋条約機構(NATO)側につくべきとしたのは20%弱に留まった。3者会談では大きな進展は期待できないかもしれないが、もし今回のトルコ仲介が露ウクライナ停戦へのきっかけとなれば、中立を望んでいた国民からエルドアン政権への支持が高まるかもしれない。

 

南ア1-3月期の企業信頼感指数は市場予想上回る:新規自動車販売が寄与

昨日発表された1-3月期南ア経済研究所(BER)の企業信頼感指数は市場予想を上回る結果となった。ただし、ロシアがウクライナに侵攻する前に調査結果の大部分が提出され、原油高騰も調査結果に反映されていない。よって、今回の結果では市場は動意づくのは難しい状況だった。なお、5つの調査産業インデックスのうち、3つ(自動車、卸売、製造業)の改善が同指標を押し上げた。特に新規自動車販売が今年の序盤好調だったことも寄与している。

 

メキシコでは原油価格の上昇は痛しかゆし

メキシコ財務省は6日、ガソリンおよびディーゼル燃料に対する補助金をさらに積み増す方針を発表した。燃料価格に対する補助金はすでに法律で定められている上限に達しているが、財務省は『小売価格に影響を与えないよう、さらなる努力が必要だと考えている』として、価格差を補うためのさらなる補助金を提供するとしている。政府のこうした姿勢は燃料価格の高騰に苦しむ国民には歓迎されるが、外側から見ると政府負担のさらなる増加が国家財政に与える影響も気になるところ。『産油国』として知られているメキシコだが、自国の燃料需要を国内でまかなうことができていない『石油製品の輸入国』でもあるため、原油価格の上昇は痛しかゆしといったところである。

 

米1月JOLT求人件数は過去最高:米FOMCの3月利上げを正当化

米労働省が発表した1月JOLT求人件数は1126.3万件と、予想1095.0万件を上回り過去最高を記録した。12月分は1144.8万件と、1092.5万件から上方修正された。雇用統計に続き労働市場のひっ迫を示す新たな証拠となり、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げを正当化する。

 

米国市場では2月消費者物価コア指数(CPI)が公表:予想は前年比6.4%上昇

2月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+6.4%と予想されておりインフレ進行を示唆する数字になりそうだ。ただし、市場予想を下回れば金融引き締め加速の思惑はやや後退し、ドル売りの要因となる。

 

欧米市場イベント

○16:00   1月トルコ失業率
○16:00   2月ノルウェーCPI(予想:前月比0.6%/前年比3.2%)
○18:00   10-12月期南アフリカ経常収支(予想:1500億ランドの黒字)
○21:00   1月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比▲2.7%)
○21:45   欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:0.00%に据え置き)
○22:30   ラガルドECB総裁、定例記者会見
○22:30   2月米CPI(予想:前月比0.8%/前年比7.9%)
      エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比0.5%/前年比6.4%)
○22:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.6万件/145.0万人)
○11日03:00   米財務省、30年債入札
○11日04:00   2月米月次財政収支(予想:2120億ドルの赤字)
○ロシア・ウクライナ・トルコ外相会談
○欧州連合(EU)首脳会議(11日まで)

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欧米タイム直前市場コメント!

2022/03/09/15:12:07

日経平均株価:ウクライナ情勢を巡る不透明化強く引けにかけ売り強まる

前日まで3営業日で日経平均は1700円下落しており、自立反発を期待した買いが支援した。一方、資源価格高騰によるインフレ高進が消費や企業業績を圧迫し、インフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションに向かいかねないとの警戒感も市場ではくすぶっており、戻りを試す展開となったが上値の重い展開だった。ウクライナ情勢を巡る不透明感は根強く、大引けにかけて売り圧力が強まり下げに転じた。結局、前営業日比73円安と2万4717円と4日続落して終了した。信用評価損率は4日申し込み時点でマイナス13.0%と、前の週のマイナス14.32%からマイナス幅が1.32ポイント縮小し、改善は3週ぶりとなった。

 

東京外国為替市場:心理的節目の116.00円を上値目処として意識

ドル/円は、本邦輸入勢などがドル買い・円売りや日経平均株価が買い先行で始まったことに支えられて一時115.92円付近まで上昇し、約1ヵ月ぶりの高値を付けた。原油先物価格の上昇を眺めた資源国通貨高・円安が波及した面もあった。ただ、心理的節目の116.00円に接近すると上げは一服した。その後は、利益確定などのドル売り・円買いも見られ、115.80円台を中心にとする狭いレンジで取引された。午後は、日経平均株価や米長期金利を睨みながら、115.80円を挟んでもみ合いとなった。ユーロ/ドルは、1.09ドル台前半で小動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

本邦勢の2月外債売り越しは1年10ヵ月ぶりの高水準

財務省が8日発表した対外証券投資によると、国内投資家は2月に海外の国債など中長期債を2兆6754億円売り越した。欧州中央銀行(ECB)が金融緩和を縮小するとの観測が広がったことで2月上旬に世界的に金利が上昇(債券価格は下落)。国内投資家の多くが決算期を迎える3月末を前に含み損の拡大を避ける目的で債券売りを進めた。

 

ニッケル相場の踏み上げ

ステンレスなどに使うニッケルの国際価格が一段と急騰した。指標となるロンドン金属取引所(LME)の3ヵ月先物価格は8日に1トン10万ドルを突破し、過去最高値を更新した。LMEは8日、ニッケルの取引を即日停止する異例の措置をとり、再開時期を示さなかった。ブルームバークは8日、「中国商品業界の『大物』に数十億ドルもの評価損を突きつけている」と報じた。世界最大のニッケル生産会社である青山控股集団の創業者、項光達氏は青山が積み上げたショートポジションの一部を既に手仕舞ったほか、残りのショートポジションを全て解消するかどうかについても検討しているといい。青山や同社のショートカバーを手掛けたブローカーの買い戻しが急騰につながった可能性があるといい、7日の最高値で計算すると損失が1日に20億ドルを超える可能性があるとみられることで、市場では警戒する見方が出ていた。

 

過去最悪のオイルショックを警戒:ゴールドマンサックス

ゴールドマンサックスは7日に発表した顧客レポートの中で、2022年、2023年の原油価格予想を引き上げた。同時に、ウクライナ戦争を受け、世界経済は過去最悪のエネルギーショックに直面することになるだろうと警告。同社のアナリストは22年の価格予想を従来の98ドルから135ドルへ、23年を105ドルから115ドルへそれぞれ引き上げた。
7日付レポートによると、すでに3月のロシア産の原油は半分以上が売れ残りとなっており、このペースが続けば1日で300万バレルのロシア産原油の供給減になり、月ベースでの供給削減規模は、第2次世界大戦以降で5番目に大きなものとなると指摘している。

 

商品価格の高騰がトルコ経済の足かせでリラの重石

露・ウクライナ戦争に端を発した商品価格の高騰は止まらず、トルコ経済成長の足かせになるとの見方がリラ売りに繋がっている。今後もしウクライナとロシアが停戦協議に前向きとなった場合でも、実際に停戦に至るまでには時間がかかると思われ、資源大国ロシアへの制裁は継続される。エネルギー価格は高止まりすることが十分予想され、ただでさえ高騰しているトルコのインフレの抑制はますます難しくなった。政治圧力でトルコ中銀が金融引き締めに舵を取れないため、通貨価値の低下を止めるのはなかなか難しい状況である。 西側諸国によるロシアに対する制裁で、ロシアとの人やモノの行き来がかなり制限されている。こちらも観光業や農産物の輸出でロシアに頼るところが大きいトルコにとってダメージとなる。重要な外貨獲得手段を失う期間が長引くようだと、リラの低水準も長期化してしまう恐れがある。

 

南アの10-12月GDPはほぼ予想通りの結果

南アの10‐12月国内総生産(GDP)は予想にほぼ沿ったものだった。10-12月期GDPでは、農業、林業、漁業は第4四半期に最も力強い成長(+12.2%)となり、個人向けサービス、貿易、製造業も成長を牽引した。一方で電力・ガス・水道などのインフラがマイナスとなっている。1年を通すと鉱業が+11.8%、農業が+8.3%、製造業が+6.6%、貿易が+6.0%となり南ア経済を引っ張った。プラチナやパラジウム産出国の南ア買い(ランド)への買い意欲もある。しかし、南アのインフレ懸念で今後の経済が不安視されていることや、南アがロシアに対して制裁を科していないことなども国際社会からの非難に繋がりランドの重石となる。

 

メキシコ中銀メンバーの中でハト派色を強める動き

昨日アジア時間で一部通信社がメキシコ中銀副総裁が『経済実績は好ましくない。政府はまもなく22年成長予測を修正しなければならないだろう』と発言した。具体的な名前は公表されていないが、副総裁はエスキバル氏かヒース氏のどちらかであり、ヒース氏は先日にも『一段の利上げは景気回復を遅らせる可能性がある』と弱気な見方を示していただけに、中銀メンバーのなかでハト派色を強める動きが出始めていることは確かである。

 

欧米市場イベント

○19:00   1-3月期南アフリカ経済研究所(BER)企業信頼感指数(予想:47)
○21:00   MBA住宅ローン申請指数
○21:00   2月メキシコCPI(予想:前年比7.23%)
○10日00:30   EIA週間在庫統計
○10日01:00   2月ロシアCPI(予想:前月比1.2%)
○10日03:00   米財務省、10年債入札

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2022/03/08/15:14:51

日経平均株価:心理的節目となる2万5000円割れで終了

朝方はロシアとウクライナの停戦交渉の難航や原油価格の高止まりが嫌気され、心理的節目である2万5000円を下回る水準での動きが続いた。ただ、2万5000円近辺では値ごろ感を意識した買いも入り、売り一巡後は下げ幅を縮小した。しかし、その後は再び売られて下げ幅を広げるなど相場が振らされた。目立った手掛かりを欠く中で、週末の先物・オプションの特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にしたポジション調整の動きとの声も聞かれた。結局、前営業日比430円安2万4790円と3営業日続落し、2020年11月以来1年4ヵ月ぶりに2万5000円を下回って取引を終了した。

 

東京外国為替市場:ドルは115円半付近で底堅い展開

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りや日経平均株価の持ち直しに支えられ、115.51円付近まで上昇した。米長期金利が上昇したことも、ドルの押し上げにつながった。ただ、4日の海外市場でつけた115.55円が上値目処として意識されると上げは一服した。その後は、利益確定や戻り待ちのドル売り・円買いも見られ、小幅に値を下げて115.40円を挟んでもみ合いとなった。午後は、日経平均株価や米長期金利を睨みながら、115.40円台を中心とする狭いレンジで取引された。ユーロ/ドルは、ロシアへの制裁強化やウクライナ危機によるエネルギー価格の急騰で、欧州経済が深刻な打撃を受けるとの思惑からユーロ売り・ドル買いが優勢となり1.0860ドル付近へ下落した。

 

本邦の原油と天然ガスの購入先国とシェア

2020年の、国連商品貿易統計データベースのを基にした数値ですが、本邦のロシアからの原油輸入は、ロシアはサウジアラビア(39.55%)、アラブ首長国連邦(31.56%)、クウェート(8.93%)、カタール(8.57%)に次ぎ5位(4.14%=約18.0億ドル)となっている。2006年まではトップ10にも入っていなかったが、徐々に輸入額は増え、2015年には一時13.28%を占め2位にまで一時上昇している。また、天然ガス(LNG)は、1位がオーストラリア(40.21%)、2位マレーシア(13.13%)、3位カタール(11.26%)に次いで4位にロシア(7.83%=約23.8億ドル)に位置している。原油同様に2008年まではトップ10外だったが、徐々に上昇し、この7-8年は3-4位をキープしている。

 

ロシアのデフォルトリスクの高まりがトルコ債券にも影響

米欧を中心としたロシアに対する制裁強化により、ロシアがデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高まってきた。他新興国の債券市場もその余波を受け、ロシア軍のウクライナ侵攻前に21%前後で推移していたトルコ10年債利回りなどは一時26%近くまで上昇した。信用リスクを示すトルコ5年物国債CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も、2008年以来の水準まで高騰している。昨年末時点ではトルコの公的債務残高はGDP比で約4割程度とされているため、同国のデフォルトは現実的ではないが、通貨リラの買いづらさに繋がるのは確かである。

 

南アはスタグフレーションの懸念からランド買い難い

南ア国内での問題としては、原油と小麦の急騰により、インフレが懸念され、今月と5月の南ア準備銀行(SARB)・金融政策委員会(MPC)では0.50%ずつの利上げもあるのではないかとの声が高まっている。もっとも、南アは金利上昇下での景気後退(スタグフレーション)を懸念する声が多く、金利高がランド買いにはつながりにくい状況である。なお、本日は10-12月期南アフリカ国内総生産(GDP)が発表される。通常であれば非常に重要な経済指標だが、昨年の10‐12月期と今年の1-3月期では、ロシアのウクライナ侵攻による原油価格などの高騰により経済状況に相当の変化が生じているため、今回に限れば反応は限定的になりそうである。

 

米国のレギュラーガソリン平均価格が過去最高

CNNは7日、『全米自動車協会(AAA)の全米ガソリン価格は収集算出している石油価格情報サービス社によれば、米国のレギュラーガソリン平均価格が現在4.14ドルとなり過去最高(4.11)ドルを上回った』と報じた。ロシア軍が2月24日にウクライナに侵攻して以降、0.60ドル’(17%)上昇したことを意味する。AAAによれば、1年前の平均価格(2.768ドル)からは49%上昇している計算で、米個人消費への悪影響が警戒される。

 

米FRBの金融政策の舵取りはさらに困難に

対ロ制裁の一環として米国、同盟国は対ロ産原油の輸入禁止を検討している。バイデン大統領は7日、仏、独、英首脳とビデオ会談を予定している。ただ、欧州にとり、対ロ産原油が不可欠で、ドイツはこの案に反対姿勢を示している。米国は、かわりにべネスエラ、サウジからの輸入などを検討している模様である。供給不安から、石油を始め、商品価格が高騰しており、インフレをさらに押し上げる可能性がある。原油価格は2008年以降ほぼ14年ぶり高値を更新。NY原油先物は一時130ドル台となった。金も一時、20年来の2000ドル台を記録した。同時に、景気後退入りの確率を高めるため、FRBの金融政策の舵取りはさらに困難となる。

 

米国市場では1月貿易収支の公表:予想は▲872億ドル

12月の実績は▲807億ドルで赤字幅は市場予想を下回った。旅行や運輸を中心にサービスの輸出が増加した。ただ、財の貿易赤字は1000億ドルを超えており、過去最大となった。資本財と消費財の輸入が過去最大となった。1月については、資本財と消費財の輸入額が12月に増加した反動で輸入額はやや減少するとされるが、消費財の輸出は伸び悩む可能性があるため、貿易収支は悪化する可能性がある。

 

欧米市場イベント

○16:00   1月独鉱工業生産(予想:前月比0.5%/前年同月比▲1.7%)
○18:30   10-12月期南アフリカ国内総生産(GDP、予想:前期比1.3%/前年同期比1.7%)
○19:00   10-12月期ユーロ圏GDP確定値(予想:前期比0.3%/前年比4.6%)
○未定   ポーランド中銀、政策金利発表(予想:3.25%に引き上げ)
○22:30   1月カナダ貿易収支(予想:16.0億カナダドルの黒字)
○22:30   1月米貿易収支(予想:871億ドルの赤字)
○24:00   1月米卸売売上高(予想:前月比1.0%)
○9日03:00   米財務省、3年債入札
○ロシア(国際婦人デー)、休場

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欧米タイム直前市場コメント!

2022/03/07/15:12:33

日経平均株価:資源高による世界景気の悪化リスクを警戒

米国株先物3指数はそろって1%超安の下落となり、市場全体がリスク回避に傾く展開となっている。市場では、ユーロの急落や原油先物相場の急騰を受け、パニック的な動きが波及した。アジア市場で香港ハンセン株価指数や上海総合指数が大幅下落となるなど、世界同時株安の様相が広がっている。下げ幅は一時900円を超え、節目の2万5000円に近づく場面があった。結局、前営業日比764円安の2万5221円と続落した。

 

東京外国為替市場:114円台後半で小動きの展開

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りに支えられ、115.06円付近まで上昇した。しかし、ウクライナ情勢が一段と緊迫しているため、上値を追う動きは限られた。その後は、日経平均株価の大幅安や米長期金利低下を眺めたドル売り・円買いに押され、114.80円台へ下落した。午後は、手掛かり材料難から積極的な売り買いは目立たず、小幅に上げて114.90円台を中心とする狭いレンジで取引された。今週予定されている2月米消費者物価指数(CPI)を控えて、ポジションを積極的に傾けにくくなっている。ユーロ/ドルは、1.08ドル台後半で小動きの展開となった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

ウクライナの緊張激化で予防的利上げの機会を逸する

ウクライナ情勢の緊迫化でECBの年内利上げ観測が急速に後退している。10日の理事会で、年後半の利上げ開始に向けた資産買い入れの前倒し終了まで踏み込むかは、向こう1週間の金融市場の緊張度合いに左右される。ウクライナ情勢が早期に沈静化した場合も、利上げ開始の最短日程は12月の理事会とみる。混迷が長期化した場合、原油急騰時を除けば、予防的な利上げの機会を逸し、賃上げっや価格転嫁を確認するまでは利上げが難しくなる。

 

原油と天然ガスの価格上昇が止まらずトルコのインフレ高進に追い打ち

資源供給国であるロシアを世界経済から遮断しようとする動きが続き、原油や天然ガスの価格上昇は止まらず、トルコのインフレ高進に追い打ちをかけている。2月トルコ消費者物価指数(CPI)は前年比54%台まで上昇し、米投資銀行は年央にかけて60%超えまでの伸び率加速を予想した。トルコ中銀が金融政策を引き締めることができないため、通貨価値の減少は止められない。トルコは欧米や日本などが強化している対露制裁に参加していないが、ロシアと独自に交渉して国際的な存在感を示そうとしている。ロシアとウクライナの外相会談をトルコで開催することを提案し、ロシア側からは歓迎するとの発言も伝わった。ただしプーチン露大統領の強硬姿勢に変わりがなければ、停戦に向けた進展はそれほど見込めない。

 

南アでは原油価格急騰でインフレ加速が問題視

南ア国内では原油価格が急騰しているため、インフレ加速が問題視されている。通常では、インフレ高進による政策金利の引き上げは通貨高につながる。しかしながら、今回はインフレ上昇の速度がかなり速いことが想定されるため、南ア経済にとっては大きな痛手となる。毎週、南ア政府が国内石油の基準値を発表しているが、すでに貧困層の中では対処できないほどの上げ幅になってきている。今週の経済指標では8日に10-12月期国内総生産(GDP)、9日に1-3月期南アフリカ経済研究所(BER)企業信頼感指数、10日に10-12月期経常収支が発表されます。通常、ランドはGDPなどには反応しますが、昨年10-12月と今年の1-3月期では市場の動向が全く違っているため、経済指標では動きにくい。

 

メキシコ中銀が利上げに対して慎重な見方の出始めていることに留意

国内のイベントとしては、目立ったものは9日の2月メキシコ消費者物価指数(CPI)のみである。すでに先日2月前半CPIの結果が+7.22%であることが明らかになっている。昨年11月に+7.37%のピークを付けて以降は2カ月連続で鈍化していたが、おそらく前月よりも上昇することが見込まれている。欧州をはじめとした各国がロシアに制裁を科しているが、先週末にはロシア産石油の輸入禁止も検討していることが伝わると、週明けのアジア市場では原油先物相場が高騰しているので、メキシコ国内のインフレも今後は一段と進みそうである。そうなると、メキシコ中銀による利上げ期待が高まるが、ヒース副総裁が先週、『一段の利上げは景気回復を遅らせる可能性がある』と弱気な見解を示していただけに、利上げに対して慎重な見方も出始めていることには留意が必要そうである。

 

米政権は単独でもロシア産原油の禁輸の実施を検討

ロシア産原油の輸入禁止を巡り関係者の話として『米バイデン政権は、少なくとも当初は欧州同盟国の参加がなくても、米国への輸入禁止を実施するかどうかを検討している』と報じた。報道によると、禁輸はまだ決定しておらず時期や規模は流動的という。ブリンケン米国務長官は6日のテレビインタビューで『欧州の同盟国・有志国とロシアから原油輸入を禁止する可能性について協調して検討するよう協議している』と表明していた。

 

米2月雇用統計は予想を上回り3月FOMCの利上げ正当化へ

米労働省が発表した2月雇用統計で失業率は3.8%と、1月4.0%から予想以上に低下し、2020年2月以降で最低となった。非農業部門雇用者数は前月比67.8万人と、伸びは1月+48.1万人から減少予想に反し増加し、21年7月以降で最大となった。1月分は46.7万人から+48.1万人に1.4万人上方修正された。12月分は51万人から58.8万人に上方修正され、12月、1月2カ月分で9.2万人の上方修正となった。平均時給は前月比横ばいと、1月+0.6%から伸びが鈍化。予想も下回った。前年比では+5.1%と、伸びは1月5.5%から拡大予想に反し鈍化した。労働参加率は62.3%と、62.2%から予想外に上昇した。不完全雇用率は7.2%と、7.1%から上昇した。米雇用統計の結果はFRBの3月FOMCでの利上げを正当化する。一方で、米国債相場はロ軍のウクライナ攻撃激化に加えて、雇用統計で雇用が予想以上に鈍化したものの時給の伸びが予想外に鈍化したため堅調推移となった。

 

欧米市場イベント

○15:45   2月スイス失業率(季節調整前、予想:2.5%)
○16:00   1月独小売売上高(予想:前月比1.9%/前年比9.5%)
○16:00   1月独製造業新規受注(予想:前月比1.0%/前年同月比5.8%)
○24:00   カンリフ英中銀(BOE)副総裁、講演
○8日05:00   1月米消費者信用残高(予想:245億ドル)
○ロシア(振替休日)、休場

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