FITS エコノミックレポート

良好な10月米雇用統計でイールドスプレッド縮小がドル/円の重石!

10月30日付シカゴIMM投機筋の対ドルでの差引き持ち高は、円ショート(円売り)持ち高が前週から減少し3週連続減少となった。これで20週連続の円ショートポジションとなっている。10月23日付け▼92,804枚の円ショートから10月30日付け▼91,620枚と1,184枚の円ショートポジションの減少となった。(円の建玉の単位は1枚=12,500,000円)
 週末に発表された米労働省が発表した10月の雇用統計では、前月比+25万人と、市場予想を上回り再び20万人台の雇用が再燃した。また、失業率も3.7%と、9月に続き1969年以降49年ぶり低水準を維持した。さらに、注目されていた平均時給も前年比で+3.1%と2009年4月以降9年ぶりの大幅な伸びを記録した。不完全雇用率(U6)も7.4%と9月7.5%から低下した。労働参加率も62.9%と、予想外に9月62.7%から上昇し、7月来の高水準となった。そのため、強い雇用と賃金の伸びが確認されFOMCの利上げ軌道が正当化されたことを確認した。一方、11月7-8日に連邦公開市場委員会(FOMC)会合が開催されるが、現行の政策金利の据え置きを決定する公算となっている。強い雇用統計を受けて目先の利上げ継続方針に関しては一致しているものの、不安定な株価動向や世界的な景気減速感を受けて、12月利上げには一部から懐疑的な見方も浮上していることから、声明の内容が注目される。良好な米雇用統計を受けて、先行き米長期金利が上昇しやすい地合いとなる。10月に米国株の大幅調整下落となったが、その要因の一つに米長期金利上昇により株価の割高感が要因となった。この割高感を探る手掛かりとなるのが、以前コメントした『イールドスプレッド』である。これは、米国10年物国債金利とS&P500の割高・割安を示す指標となる。2013年以降のイールドスプレッドは▼2.5%~▼4.0%で推移しているが、10月5日には▼2.33%まで縮小したことで米国株に割高感が生じた。割高感を解消するには、①米長期金利低下、②株価下落で調整、③米国企業の業績改善でPERを下げることで解消される。そのため、10月以降は株価の大幅下落を受けリスク回避の債券買い(利回り低下)によって調整され、10月26日にはイールドスプレッドが▼3.02%まで拡大し割高感は解消された。しかし、その後の株価持ち直しと米長期金利上昇から11月2日にはイールドスプレッドは再び▼2.82%まで縮小してきている。良好な雇用統計を受け先行き米長期金利が上昇傾向を強めると、米国株が再び下落調整しやすくリスク回避の動きによりドル/円の上値の重石となりやすい。今までは米長期金利が低位安定していたことや、米国の法人税減税で企業業績が良好だった。そのため、米国株が上昇してもイールドスプレッドによる割高感は生じにくい状態だったが、今後は割高感から米国株下落リスクが高まりやすい。

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