FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:リスク選好の動きが強まり大幅高

前週末の米国株式市場が下落したことを受けて、朝方は小安くなったが、次第に買い優勢の展開に変わり、一時600円近くまで上昇した。市場では、これまで警戒されていた緊急事態宣言が準備入りとなったことで、材料出尽くし感が台頭したとみる関係者が多い。そうした状況下、次第に幅広く物色され堅調に推移した。また、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な米NY州での死者数が前の日から減少したと伝わったことなどを受けて、海外の短期筋からの買いが優勢となった。後場終盤には、ロシアとサウジアラビアの原油減産合意が『非常に近い』と米CNBがロシアのソブリン・ウェルス・ファンドの責任者の話として伝えたことも追い風になった。結局、前営業日比756円高の1万8576円続騰して終了した。

 

東京外国為替市場:米国での感染拡大のピーク報道を好感したドル買い

ドル/円は、本邦実需勢などのドル買い・円売りや日経平均株価の続伸に支えられ、109.10円付近まで上昇した。一部海外メディアが『米国の一部地域で、新型コロナウイルスの感染拡大が近くピークに達する可能性』と報じたことも、ドルの押し上げにつながった。ただ、上値では利食い売りも見られ、108.80円台で推移した。午後は、日経平均株価の上げ幅拡大を眺めてドル買い・円売りが進み、109.13円付近までじり高となった。ユーロ/ドルは、このところの一本調子の下げが続いていたため、利益確定などのユーロ買い・ドル売りが入り1.0835ドル付近へ上昇した。

 

世界第2位のノルウェー政府年金基金も痛手を被る

日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に次ぐ世界2位のクジラであるノルウェー政府年金基金(NISF:The National Insurance Scheme Fund)は、ノルウェー王国のソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)である。ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG:資産規模約1.15兆ドル)の2019年12月末時点の収益は、+19.9%(@12=+20兆円)だった。しかし、2020年1-3月期は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により世界同時株安となったことで、収益は▲14.6%となり、運用資産は過去最大となる1130億ドル(約12兆1300億円)を失った。株式の投資リターンは▲21.1%、債券は+1.3%だった。さらに、ノルウェー政府は、新型コロナウイルス「COVID-19」による景気減速を受けて、ファンドの資金から670億ノルウェー・クローネ(64.9億ドル=約7000億円)を引き出した。保有株式の比率が、目標の70%から5%下回ったことで、債券を売却することでリバランスが行われた。

 

トルコを取り巻く環境は芳しくない

トルコでは3日までで新型コロナ感染者の合計が2万人を超え、世界全体でも9番目の規模まで増加した。エルドアン・トルコ大統領が経済活動停止による景気へのダメージを懸念し、ロックダウン(都市封鎖)宣言を躊躇したために感染が加速したとみらる。同大統領は3日、生活必需品の運搬を除く主要都市の封鎖や(これまでの65歳以上に加えて)20歳以下の外出制限を発表した。ただ、トルコ最大の都市・イスタンブールの市長であるイマモール氏は、感染対策で同市と国の連携が上手くいっていないと訴えており、今回の政府対策がどの程度まで効果があるか疑問視する声もでている。
 新型コロナの感染拡大により、(トルコ輸出の9割以上を占める)自動車・部品や機械の製造工場も操業停止に追い込まれるところが増えている。また、人の移動が厳しく制限される中でGDPの15%弱を占める観光セクターへの大打撃は避けられない。トルコ政府による追加の経済支援策が望まれるところだが、財政難のためこれ以上の積極的な景気刺激策を取るのは難しいとの見方もある。

 

ランドの上値は重いもののスピード調整には注意

格付け会社ムーディーズが南ア債の格下げをしたことで、多くの債権インデックスから南ア債を排除せざる終えない状況となっている。当面は南アに国外からの投資資金が回ることが考えられないことで、ランドを買い上げる材料は不足し上値は限られる。また格付け会社フィッチは『南アフリカの非常に密集して脆弱な社会構造のために、パンデミックに特にさらされている』と述べているように、南ア国内およびアフリカ諸国の新型コロナウィルス感染拡大を恐れている声が多いことも、ランドの売り要因になる。ただし、ランドは対円対ドルともに年初からすでに22%以上下落していることで、スピード調整が入る可能性には警戒しておきたい。なお、経済指標では8日に3月の南ア商工会議所(SACCI)企業景況感が発表される。2月は92.7となり1月の92.2よりもわずかに回復したが、依然として伸びていない。3月も鈍化が予想されている。

 

OPECプラス会合は9日に延期

OPECとロシアは6日に予定していたOPEC加盟国と非加盟産油国もうpり『OPECプラス』の会合を9日に延期した。トランプ米大統領は2日、原油の協調減産を巡りサウジとロシアの間を仲介したことを明らかにし、両国が日量1000万‐1500万バレルの減産に踏み切る可能性があるとの見通しを示した。同規模の減産にはOPECの枠組に加わっていない産油国の協力が必要になるとみられるが、米国やカナダなどでは、民間の石油会社の生産量について政府に決定権はない。

 

今後広がる米国の雇用危機

米経済の『エンジン』である個人消費を支えてきた雇用が危機に見舞われている。失業率の上昇に伴う成長率見通しの大幅な下方修正も相次ぎ、2020年4~6月期を底とする景気のV字回復は困難との見方が広がる。雇用統計の先行指標で、4月以降の雇用減少につながる週間の失業保険申請件数は3月28日までの2週間で1000万件だった。10年から今年2月までの景気拡大局面で増えた雇用者数である2500万人の4割相当が『失業予備軍』として控える。顕在化すれば2008年のリーマン危機で失われた雇用者数の870万人で短期間で上回る。今後1~2ヵ月は数百万件単位での申請が続くとみられ、5月までに2700万人が新たに失業するとの予想もある。その場合、過去10年間で生まれた雇用が消失する『雇用蒸発』の様相を呈する。米民間調査会社によると、米国特有の一時的な解雇(レイオフ)を含まない3月の人員削減も22万件と急増した。これらの失業者は直ぐに仕事が見つからない『長期失業者』になる可能性が高く、雇用の取り巻く環境悪化の根は深い。

 

欧米イベント

○15:00   2月独製造業新規受注(予想:前月比▲2.5%/前年同月比▲0.2%)
○17:30   3月英建設業購買担当者景気指数(PMI、予想:44.0)
○22:00   3月ロシア消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.7%)

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