FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:ショートカバーと海外勢の実需買い

前日の米国株式市場が上昇し、中東情勢は米中対立に比べてリスク回避の要因としては小さいとの見方があるほか、ドル/円相場が108円台半ばまで円安に振れたことが好感された。幅広く買われ、ほぼ全面高商状となった。先物市場でショートカバーが活発化する一方、昨年まで相場をリードした銘柄が個別に物色されるなど、海外勢などの実需買いの流入も観測された。結局、前日比370円高の2万3575円と大幅反発で終了した。

 

東京外国為替市場:米長期金利上昇でドル買い優勢

ドル/円は、国内輸入企業などのドル買い・円売りや日経平均株価の大幅高に支えられ、108.50円近辺までじり高となった。米長期金利が小幅上昇したことも、ドル買いにつながった。午後は、日経平均株価や上海総合株価指数をにらみながら、108.40円台を中心とした狭いレンジでもみ合いとなった。米国とイランの対立が続き、中東情勢の先行き不透明感が強まっているため、積極的な売り買いは手控えられた。ユーロ/ドルは、新規の手掛かり材料に乏しく、1.11ドル台後半で小動きとなった。

 

今週の注目点

米軍によるイラン司令官の暗殺に対するイラン側の報復措置が懸念されるなか、その有無を含めたイラン政府の動向と米政府の対応に注目が集まっている。緊張の高まりが原油高に繋がっているが、足元の世界経済は製造業での減速を堅調な個人消費を背景にした非製造業がカバーしているだけに、原油価格の上昇がどこまで進むのかは景気を左右する極めて重要なポイントとなる。今週は、このほかにも金曜日に米雇用統計の発表を控えている。ISM製造業景気指数が市場の期待を裏切る冴えない内容だっただけに、雇用統計の結果はインパクトが大きくなる。弱めの結果となれば、市場のリスクオフの流れが加速しかねない。この場合、とくに金利低下圧力は非常に強まると予想され、米金利の一段の低下と円高ドル安が(一時的にせよ)大幅に進む可能性もある。なお、週末には台湾総統選挙が行われる。こちらも中国・香港情勢と絡んで、その後の展開が気になる。

 

米国とイランの本音は軍事衝突や戦争は回避したい事情

今回のイラン司令官殺害については、トランプ氏の狙いとして、昨年12月末の米国大使館襲撃に対する報復の意味合いのほか、①自身の弾劾裁判に対する関心をそらす、②大統領選に向けて、反イランのイスラエル(ユダヤ系など)やサウジアラビア関連などからの支援・協力を固める、③北朝鮮の非核化難航による失政批判や、米中通商『第一段階』合意に伴う対中国弱腰批判をかわす、といった思惑も取り沙汰されている。さらに米国とイランの対立が軍事衝突や戦争に発展した場合、トランプ氏の再選にマイナスとなる可能性もある。具体的には、①原油高騰や長期金利の急上昇、②米国の株安や経済の悪化、③米国内での反戦運動の高まり、といったリスクを抱えている。
かたやイランも経済制裁による景気悪化や大幅なインフレ昂進などにより、『戦争への余裕は乏しく、国民理解も得られにくい』との見方が少なくない。実際にイランは5日、核合意で定められた遠心分離機の数の上限を順守せず、無制限にウラン濃縮を進めていく方針を表明したが、その一方で『IAEA(国際原子力機関)には、これまで通り協力する』、『米国が制裁を解除すれば、核合意を履行する』として、完全な孤立化は回避させている。その意味で紆余曲折はあっても、最終的には軍事対立の回避が見込まれそうだ。

 

金融不安が抑制されると金上昇と円安が進む可能性も

年明けからのリスク回避相場にあって、同じ安全逃避資産どうしの金と円では、金の対円クロスレートで金上昇と円安方向に振れている。ブルームバーグ算出ベースによると、金の対円クロス相場は改めて1980年以来の高値を更新してきた。過去実績としてリスク回避の中でも金上昇と円安に振れている局面では、ドル/円で円高抑制やドル高・円安が同時観測されている。現状は米国の銀行株が過去最高値推移を維持しており、金融不安が抑制されている限りは、金上昇・円安の力関係がドル/円とクロス円での円高抑制や円安へと寄与する。しかし、反対に米銀株が下落に転じるなど、微妙に金融不安が高まっていくとリスク回避による円独歩高(ドルなどの外貨安)激化につながる余地を秘めている。

 

時間差を経た米景気下げ止まりの遅行効果に注目

米国市場では3日、最新12月のISM製造業景況指数が47.2となり、前月の48.1から悪化した。2009年6月以来の低水準となっており、改めて10年前後に及んできた長期景気改善の『息切れ』が懸念されている。もっとも米国では昨年7月から10月まで、FRBが3回にわたって予防的利下げを実施した。過去実績としてFRBによる利下げは、6カ月から1年のタイムラグを経て景気を浮揚させている。その意味でISM指数についても、『昨年7月利下げ開始の6カ月後』となる今年1月以降から、時間差を経た景気下げ止まりの遅行効果が注視される。

 

トランプ大統領の弾劾裁判の日程決まらず

トランプ米大統領を辞めさせるかどうかを決める、弾劾(だんがい)裁判の日程が宙に浮いている。米下院が『ウクライナ疑惑』でトランプ氏を弾劾訴追したものの、上院で行われる弾劾裁判の進め方をめぐって与野党が折り合わず、開くメドが立っていない。今秋の選挙も見据え、与野党の駆け引きが激化している。『トランプ氏の弾劾は緊急にしなければならないと叫んでいた人たちはいまや、新しい論点が見つかるまで無期限に待つことにしている』。与党・共和党のマコネル院内総務は3日、本会議の演説で野党・民主党を批判した。これに対し、民主党のシューマー院内総務も演説で『マコネル氏は事実を検証するための公平な裁判を開く気がない』とやり返した。対立の理由は、弾劾裁判の手続きが進まないことにある。民主党が過半数を占める下院は昨年12月18日、トランプ氏を『権力の乱用』と『議会の妨害』で弾劾訴追した。弾劾裁判は上院で開かれるため、この訴追要件を下院から上院に送付する手続きが必要だが、民主党のペロシ下院議長が『弾劾裁判の公平さが担保されていない』として送付の手続きを止めている。

 

欧米イベント

○16:30   12月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比横ばい)
○19:00   11月ユーロ圏小売売上高(予想:前月比0.6%/前年比1.3%)
○19:00   12月ユーロ圏HICP速報値(予想:前年比1.3%)
○19:00   12月ユーロ圏HICPコア速報値(予想:前年比1.3%)
○22:30   11月カナダ貿易収支(予想:11.5億カナダドルの赤字)
○22:30   11月米貿易収支(予想:438億ドルの赤字)
○24:00   12月カナダIvey購買部協会景気指数
○24:00   12月米ISM非製造業指数(予想:54.5)
○24:00   11月米製造業新規受注(予想:前月比▲0.8%)
○8日03:00   米財務省、3年債入札
○英下院、欧州連合(EU)離脱関連法案の審議開始(9日まで)
○ロシア(ロシア正教クリスマス)、休場

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

カテゴリー

カレンダー

5月 2024
« 1月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ページの先頭へ