FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:米中通商協議の進展期待もあり底堅い展開

米中通商協議を巡る観測報道で一喜一憂する展開となった。朝方は協議不調が伝えられるなか、幅広い銘柄に売りが先行した。しかし、中国の劉鶴副首相の訪米日程に変更なしとの報道があり、ひとまず安心感につながった。米株先物が下げ幅を縮小したことや、ドル/円が107円台半ばまで切り返しことが支援材料となった。また、米紙NYタイムズ電子版が『トランプ政権が米企業に中国通信大手ファーウェイに機密上重要でない製品供給を近く認可』と報じて10日再開の閣僚級協議の進展期待が高まり買い優勢となった。結局、前日比95円高の2万1551円と反発して終了した。

 

東京外国為替市場:107円台半ばでもみ合い相場

ドル/円は、米中貿易協議を前に米中双方から強弱入り混じった報道が相次いで伝わったことから、107円台前半で一喜一憂する展開となった。その後、『米国が部分合意の一環で中国と通貨協定を検討』と報道されるとドル買いを誘い、107.75円台に上昇した。しかし、107円台後半では輸出企業などのドル売りが散見され、107.50-60円水準に下落した。午後は10-11日に開催される米中閣僚級貿易協議の結果を見極めようと様子見ムードが強まり、107.50円を挟んで小動きとなった。ユーロ/ドルは、1.0985-90ドル前後で小幅な値動きとなった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

★英国の合意なき離脱の懸念が高まる

欧州連合(EU)のバルニエ首席交渉官は9日、欧州議会で証言し、英国とのEU離脱協議について『客観的に見てわれわれは今、合意を見いだせる状況にはない』と述べた。月末に離脱期限が迫る中、合意実現に悲観的な見方を示した。バルニエ氏は『たとえ非常に困難でも、双方にやる気があればまだ合意は可能だ』とも指摘した。17-18両日のEU首脳会議までの事態打開に向けて英国との協議を続ける姿勢は示したが、決裂の公算は大きくなっている。また、英国が合意のないままEUを離脱することにジョンソン政権内で反発が出ており、閣僚5人が辞任する可能性に警戒が高まっていると報じている。

 

英国が合意なき離脱ならトルコへの影響にも注意

9月5日、英トルコ経済フォーラムがトルコ最大の都市イスタンブールで開催された。その場でペキジャン・トルコ貿易相は、もし英国が合意ないままに欧州連合(EU)離脱となればトルコの英輸出は大きく落ち込むことが見込まれ、衣類輸出などは13億ドル減少するとの試算を示した。これは18年トルコの英輸出総額の11.7%分になる。
ペキジャン貿易相は、他の製品も含めた英輸出総額では18年の3割弱となる30億ドル減も有り得るとした。そうなれば、先週にアルバイラク・トルコ財務相が示した20年の経済成長率5%という強気見通しも達成が難しそうだ。
トルコリラは8月下旬から9月末までは底堅く推移していたが、10月に入り上値が重い展開が続いている。経済指標ではトルコ経済が最悪期を脱したとする結果も出てはいるが、通貨リラの下支えとはなっていない。ここから気をつけなければならないことの1つに、「合意なきブレグジット」によるトルコの景気下振れ度合いが(英国との貿易関係をみると)想像以上に大きくなる可能性がある。

 

米中貿易戦争の持久戦は世界経済の減速を深くする

選挙がない中国のほうが選挙のある米国より『持久戦』に強いという判断が習近平国家主席はじめ中国政府に交渉「延引戦略」を選択させたようで、10-11日の米中協議では暫定合意の帰趨は予断を許さない状況にある。産業補助金や知的所有権など構造問題で『持久戦』を選択した以上、トランプ大統領を納得させる中国の譲歩が得難い政治状況が懸念されつつあるのだ。すでに、WTO(世界貿易機構)によれば、足元の世界貿易取引は約9年半ぶり低水準に縮減し、IMFは7月世界経済見通しの改定版で19年の経済成長率を4回連続で下方修正した。米中貿易戦争の激化がもたらす世界経済への傷は深く、米中対立は泥沼化の様相を呈し『我慢比べ』の様相を呈す。

 

米国の労働市場もピークをつけた可能性も

米労働省が発表した8月JOLT求人件数は705.1万件と、前月から増加予想に反して減少し、昨年3月以降1年半ぶりの低水準となった。3カ月連続の減少した。7月分も717.4万件と、721.7万件から下方修正された。2018年11月に過去最高を更新したのち、ピークから減少基調にある。米雇用統計でも示されたとおり、労働市場の減速が裏付けられた。同時に、依然700万件は保ったほか、総失業者数を100万上回っている。求人件数が失業者数を上回ったのは18カ月連続で過去最長となった。ただ、採用者数や労働市場での健全性をはかる上で注視される退職者数は大幅に減少しており、労働市場の拡大基調が終了する可能性は懸念される。採用者数は19.9万人減少し5779万人。退職者数は14.2万人減の352.6万人となった。退職者数の減少幅は1月来で最大となる。
今年に入り企業は技術を持つ労働者を見つけるのが困難になったことや景気先行き見通しの悪化で採用を見送っている。唯一強かった米国の労働市場もピークをつけた可能性は、消費の鈍化につながり米国経済の成長を減速させる。

 

米国市場では9月消費者物価コア指数が公表

8月実績では、前年同月比+2.4%で2018年7月以来の大幅な伸びを記録した。9月については、帰属家賃や医療費の増加によって、物価浄書率は8月実績に近い水準となる可能性がある。

 

欧米イベント

○15:00   8月独貿易収支(予想:188億ユーロの黒字)
○15:00   8月独経常収支(予想:179億ユーロの黒字)
○15:00   9月ノルウェー消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.5%/前年比1.5%)
○15:45   8月仏鉱工業生産指数(予想:前月比0.1%)
○16:30   9月スウェーデンCPI(予想:前月比0.3%/前年比1.3%)
      コア指数(予想:前月比0.3%/前年比1.2%)
○17:30   8月英国内総生産(GDP、予想:前月比横ばい)
○17:30   8月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:100億ポンドの赤字/10.50億ポンドの赤字)
○17:30   8月英鉱工業生産指数(予想:前月比▲0.1%/前年比▲0.9%)
      製造業生産高(予想:前月比横ばい)
○20:30   欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(9月11日-12日分)
○21:00   8月ブラジル小売売上高指数(予想:前年同月比1.9%)
○21:30   8月カナダ新築住宅価格指数(予想:前月比横ばい)
○21:30   9月米CPI(予想:前月比0.1%/前年比1.8%)
       エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比0.2%/前年比2.4%)
○21:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.9万件/165.3万人)
○11日01:30   デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演
○11日02:00   米財務省、30年債入札
○11日04:00   ブラード米セントルイス連銀総裁、あいさつ
○欧州連合(EU)財務相理事会(ルクセンブルク)
○米中閣僚級貿易協議(ワシントン、11日まで)

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