FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

中国7-9月期GDPは貿易摩擦の影響から減速傾向

中国政府が発表した2018年7-9月期の国内総生産(GDP)伸び率は市場予想を下回り、景気減速が確認される結果となった。中国国内での投資減に加え、消費の弱さが響いている。来年にかけて米中貿易摩擦の影響が実体経済にも鮮明に表れてくると考えられ、景気の減速傾向が続く可能性がある。日本企業にとっても自動や電子部品関連の需要落ち込みが懸念される。同時に発表された1-9月期の固定資産投資は市場予想をやや上回った。政府の景気テコ入れ策の効果が出始め、インフラ投資には下げ止まりの兆しも見える。しかし、中国政府による現状の対策は景気の減速ペースを緩めることはあっても、拡大方向に転換させるほどの力はない。

 

日経平均株価:中国株の持ち直しで後場急速に下げ渋る

中国の景気減速懸念から前日の米国株の大幅安となった流れが波及し、東京市場でも中国関連とされる銘柄を中心に売りが先行し、一時下げ幅を445円まで拡大する場面もあった。ただ、その後は押し目買いや売り方の買戻しが下支えし、後場は急速に下げ渋った。また、上海総合株価指数が持ち直したことや、日銀によるETF買いの思惑も支えになった。結局、前日比126円安の2万2532円と続落して終了した。

 

東京外国為替市場:株価の下げ止まりで円売り優勢に

ドル/円は、本邦実需勢などのドル買い・円売りに支えられ、一時112.42円まで値を上げた。米財務省の為替報告書について中国は米国との対立姿勢を強める中、麻生財務相が『日本の為替政策が制約されるものではない』との見解を示したことで市場に安心感が広がった。ただ、米国とサウジとの関係懸念も根強く上値を追う動きは限定的となった。午後は、日経平均株価やアジア株の動向をにらみながら小幅値を下げてもみ合いとなった。その後、『中国の劉副首相が貿易に関して米国と接触している』と報じたことをきっかけに、中国主要株式がプラスに転じ、連れて日経平均株価も下げ幅を縮めると、112.50円近辺まで値を上げた。ユーロ/ドルは、1.14ドル台半ばで方向感の乏しい展開となった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

中国は株価下落で異例の各当局の口先支援

中国人民銀行と銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会の各トップが19日に声明を発表した。各当局が口先支援でそろい踏みするのは異例なことである。マーケットへの支援を表明し、株式担保の割合が大きい企業を中心に金融面の圧力緩和に向けた措置を講じる方針示した。ただ、直接介入を約束するまでには至らなかった。

 

イタリア財政問題で来週は格付け会社の動向に注意

イタリアの予算を巡るEUとの対立の中、来週にもソブリン格付けを引き下げられる恐れがある。そのため、イタリア債のドイツ債に対するスプレッドは2013年4月以来の最大に達した。イタリア政府は来年の財政赤字をGDPの2.4%と想定しており、EUの現在の規則に抵触する。米格付会社のS&Pとムーディーズは同国のソブリン債格付けの見直しを月内に完了する予定となっている。

 

リスクパリッティ戦略ファンドが市場の火種

運用残高が15兆円を超えるとされる『リスク・パリティ』戦略ファンドがある。米金利上昇が同ファンドの債券売りを呼び、それが株式の割高感を強めて別の投資家の株式売りを招くという新たな構図が生まれつつある。リスク・パリティ戦力とは、ファンド全体の運用成績に対して株式や債券、商品などの各資産の価格変動が及ぼす影響が均等になるように設計されファンドである。そのリスクを測る指標が『ボラティリティ(価格変動率)』となる。リスク・パリティによる売りは今年2月の世界同時株安『VIXショック』を助長した。その後は、株式に代わり債券(先進国の国債と社債)の保有比率が25%から35%以上に膨らんでいることである。そのため、金利上昇(価格は下落)局面ではリスク・パリティ戦略の損失が拡大するため債券売りが加速し、金利のさらなる上昇を呼びやすい。要するに金利が上昇すれば、ハイテク株を中心に株式が割高感が強まり、株式のボラティリティも上がって売られる。金利上昇とリスク・パリティの『共振』となる。今後も世界市場の火種となりやすい。

 

欧米市場イベント

○17:00   8月ユーロ圏経常収支(季節調整済み)
○21:30   8月カナダ小売売上高(予想:前月比0.3%/自動車を除く前月比0.2%)
○21:30   9月カナダCPI(予想:前月比横ばい/前年比2.7%)
○23:00   9月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲0.7%/年率換算530万件)
○20日01:00   ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○20日01:10   カーニー・イングランド銀行(BOE)総裁、講演
○20日01:45   カプラン米ダラス連銀総裁、講演

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

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