FITS エコノミックレポート

★日経平均株価：利益確定売り強まり下落幅拡大

前日の米国株高の流れを引き継ぎ続伸スタートしたものの、中盤には指数寄与度の大きい銘柄を中心に利益確定売りが出て指数を押し下げた。足元で上昇が目立っていた銘柄を中心を利益確定の売りが出ているものの、押し目買い意欲も依然強いとの声も出ていた。しかし、午後には、日銀の保有するETFを巡る植田日銀総裁の発言にアルゴリズム取引が反応したとの観測も出て下げ幅を広げた。結局、前営業日比593円安の3万1913円で終了した。下げ幅は今年2番目の大きさとなった。

★東京外国為替市場：米長期金利の低下がドルの重しに

ドル/円は、日経平均株価の急反落でリスク回避のドル売り・円買いが強まり、139.20円付近へ下落した。米長期金利が小幅に低下したことも、ドルの押し下げにつながった。午後には入っても、ドル売り・円買い基調は続いて一時139.16円付近まで下落した。ただ、前日の欧州市場で付けた安値139.10円に接近すると下げは一服した。その後は、値ごろ感からドルを買い戻す動きも見られ、値を切り返して139.20円台を中心とする狭いレンジで推移した。来週予定されている5月米消費者物価指数（CPI)や米連邦公開市場委員会（FOMC)などの重要イベントを前に、積極的な売り買いは目立たなかった。植田日銀総裁が衆院財務金融委員会で日銀の保有ETFの処分について、「具体的な戦略を論じるのはまだ早い」との見解を示したが、ドル/円相場への影響は限られた。ユーロ/ドルは、1.06ドル台後半で小動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

★6日時点の日経225のSQ予想：売り買い均衡か

株価指数先物・オプション6月物は9日、特別清算指数（SQ)算出を迎える。SQ算出に関連した9日寄り付きの現物株式の売買注文は、「日経平均株価」の裁定取引関連で採用1銘柄あたり170万程度で売り買いは均衡しそうである。2日時点の建玉と5～6日の手口をもとに主要証券会社の現物株の売買を推計した。SQ算出日の寄り付きに現物株の買いが目立つとみられる証券会社はソシエテ・ジェネラル（87万株）、大和（17万株）、シティグループ（17万株）、バークレイズ（12万株）、ABNアムロ（12万株）など。一方、売りが想定されるのはゴールドマン・サックス（52万株）、野村（38万株）、BofA（35万株）、HSBC（25万株）、BNPパリバ（11万株）などである。

★ドイツでは景況感の悪化を示す指標が続く

6日に発表されたドイツの4月の製造業新規受注は前月比0.4％減少した。市場予想では3月の10.9%減という大幅減の反動で4.0%増が見込まれていた。変動ｎ少ない3ヵ月平均も2.3%減と減少傾向が示された。前年同月比でも9.9%減と市場予想の5.2%減ほどには回復しなかった。製造業の売上高も前月比で1.2%減少した。同6日に発表されたスペインの4月の鉱工業生産は前年同月比0.9%減と市場予想1.9%増を上回る大幅な減少となった。前月比でも1.8%減と大きく減少した。相次ぐ景況感の悪化を示す経済指標がユーロの上値を押さえる一方、欧州中央銀行（ECB)の利上げ継続観測がユーロの下落を限定的なものとしている。

★トルコリラ安を止めるには実質金利マイナス幅の縮小が必要

トルコ国内のインフレ率はベース効果で減速傾向ではあるが、足もとでは39％台と極めて高い水準である。リラの下落を止めるには実質金利マイナス幅を縮小させる必要があり、『まずは利上げ』という正統的な金融政策への回帰が求められる。これまではエルドアン大統領の圧力で金利は引き上げられなかったが、リラ急落の影響で雰囲気は変わりつつある。現在、新たなトルコ中銀総裁の選考が進行中であり、複数のメディアはシムシェキ新財務相が推薦している米地銀の元CEOエルカン氏が新総裁の有力候補と報じている。その経歴から同氏が金融政策をリードすることになれば、久しぶりの伝統的な政策（インフレ抑制のために引き締め）の実施が期待できる。次回のトルコ中銀の政策金利発表は22日に予定されている。米JPモルガンのアナリストは、その前に金融政策委員会（MPC）開催の可能性があると述べた。同アナリストは、現行8.5％の主要金利が（期間は定かではありませんが）25％に引き上げられるとも予想している。いずれにせよ新総裁が決まってからの話であり、今後は選考に関する報道を気にかけながらの取引となる。

★メキシコの地方選では与党が野党の地盤の一角を崩す見込み

メキシコでは4日に実施された地方選で与党・国家再生運動（MORENA）が野党の地盤の一角を崩す見込みとなった。国内最大の人口を擁する中部メキシコ州は制度的革命党（PRI）が長年に渡って知事選で勝利してきた場所だが、今回はMORENAの候補が野党連合の候補に勝利する見込み。翌年に控える大統領選の前哨戦とされた今回の地方選（2州の知事選、前職は両州ともに野党だったが今回は与党が1州を奪取）だったが、MORENAにとっては上々の結果となった。

★米国株を3週ぶりに売り越し：BofAセキュリティーズ

BofAセキュリティーズの5日付の顧客フローリポートによると、同社の顧客は先週（5月30日～6月2日）の1週間に米株を5億3200万ドル売り越した。3週ぶりに売り越しに転じた。この週は米議会上下院が米連邦政府の債務上限を停止する「財政責任法案」を可決し米国の債務不履行（デフォルト）が回避されたことでS＆P500種株価指数は週間で1.82%高となって3週続伸した時だった。主体別動向でヘッジファンド（HF)は100万ドルに満たない小幅な買い越しだった。機関投資家は3億1100万ドルを買い越した。HFと機関投資家や3週連続で買い越しとなった。個人投資家は14億8600万ドルを売り越して、10週連続で売り越しだった。個人は年初来で最大の売り主体となっており、4週平均の売り越し額がマイナス2σ（標準偏差）水準に近づいている。過去に売り越し額がマイナス2σを下回った5回のうち4回はその後にS&P500が過去1・3・6カ月平均を上回る上昇を記録したという。きぎょうの自社株買いは8億8300万ドルで、4月の決算シーズンでは例年よりも好調だったが、5月から6月初めにかけては例年の季節的傾向を下回っている。セクター別では11セクターのうち6セクターが売り越しだった。年初来ではハイテク株への資金流入が目立つが、先週はハイテクセクターから11億5200まんどるの資金が流出し、流出額は過去1年で最大の規模だった。BofAの分析ではアクティブ投資家のハイテクセクターに対するウエートは、今やイコールウエート（中立）になるという。一方で、この週に資金流入で目立ったのが、金融セクター（6億7600万ドルの流入）とコミュニケーション・サービス（3億6400万ドル流入）だった。

★米経済がリセッションに陥る確率を引き下げ：ゴールドマン

ゴールドマン・サックスは6日付のリポートで、米国経済が今後1年以内に景気後退（リセッション）に陥るとの予想確率を35→25%に引き下げた。3月10日にシリコンバレーバンク（SVB)が経営破綻した際に引き上げたものを取り消したことになる。リポートでは、債務上限闘争の混乱というテールリスクが消滅したことのほか、「より重要なことは、地方銀行の株価が安定し、預金流出が減速し、貸出量が維持され、貸出調査が今後の金融引き締めを限定的にしか示唆しないことから、銀行ストレスが今年の実質国内総生産（GDP)成長率をわずかに0.4パーセントポイントしか引き下げないという我々の基本予測に自信が持てるようになったことだ」と指摘。その一方、実質可処分所得の回復と住宅市場の安定化により、景気は大きく押し上げられていることで、2023年の成長率は1.8%と強気で見込んだ。

★米国市場では4月貿易収支が公表：予想は－751億ドルの赤字

3月実績は－642億ドルの赤字だった。サービスの輸出増加で赤字幅は縮小した。4月については、サービス輸出は引き続き順調とみられるが、資本財と消費財の輸入増加が予想されており、貿易赤字幅は3月を上回る可能性が高い。

★欧米市場イベント

○14:45　　　5月スイス失業率（季節調整前、予想：1.9％）
○15:00　　　4月独鉱工業生産（予想：前月比0.6％／前年同月比1.5％）
○15:45　　　4月仏貿易収支（予想：77.00億ユーロの赤字）
○15:45　　　4月仏経常収支
○16:50　　　デギンドス欧州中央銀行（ECB）副総裁、講演
○17:30　　　クノット・オランダ中銀総裁、講演
○18:10　　　パネッタECB専務理事、講演
○20:00　　　MBA住宅ローン申請指数
○21:00　　　ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演
○21:00　　　5月ブラジルIBGE消費者物価指数（IPCA、予想：前年同月比4.04％）
○21:30　　　4月カナダ貿易収支（予想：9.0億カナダドルの黒字）
○21:30　　　1－3月期カナダ労働生産性指数
○21:30　　　4月米貿易収支（予想：752億ドルの赤字）
○23:00　　　カナダ銀行（BOC、中央銀行）、政策金利発表（予想：4.50％で据え置き）
○23:30　　　EIA週間在庫統計
○8日04:00　　　4月米消費者信用残高（予想：220億ドル）