FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:米雇用統計の通過と円安基調を好感した買い

前週末に発表された3月米雇用統計は概ね市場予想通りの内容で、安心感が広がったことや、ドル/円相場が円安に振れていることが支えとなった。一方、長期金利が上昇したことで、指数寄与度の大きい半導体関連銘柄は朝方から軟調だった。円安を支えに幅広い銘柄に買いが入り、上げ幅は一時200円を超えた。半面買い一巡後は戻り待ちの売りに押され、上げ幅を縮めた。結局、前営業日比115円高の2万7633円と続伸して終了した。

 

東京外国為替市場:132円台後半でもみ合い

ドル/円は、仲値に向けて本邦輸入勢などのドル買い・円売りが通常より多く持ち込まれ、132.65円付近へじり高となった。仲値発表後も、ドル/円の堅調地合いは続き、132.75円付近へ値を上げた。午後のドル/円は、7日に発表された3月米雇用統計の失業率が改善され、米連邦準備制度理事会(FRB)が5月の会合で0.25%の利上げを実施するとの確率が高まっていることからさらにドル買い・円売りが進み、一時132.79円付近まで上昇した。ただ、今晩予定されている植田日銀総裁の就任記者会見を見極めたいとの雰囲気もあり、上げは一服した。その後は、利益確定や戻り待ちのドル売り・円買いも見られ、やや値を下げて132.60円台を中心とする狭いレンジで取引された。ユーロ/ドルは、イースターマンデーで市場参加者が通常より少なく、1.0895ドル前後で小動きとなった。

 

日銀は金融政策の正常化で債務超過に転落

日銀の自己資本は、引当金が約7.7兆円、準備金が約3.4兆円なので、約11.1兆円となっている。内田日銀副総裁は、3月29日の衆院財務金融委員会での答弁で、長期金利が0.5%だった2月末の利回り曲線が全体的に1.5%上昇して2%になった場合、日銀が保有する国債(約582兆円)の含み損が約50兆円になる、と述べた。また、植田日銀総裁が金融政策の正常化に踏み出し、金利を▲0.1%から引き上げた場合、当座預金(約524兆円)に対する利払いが増加することになる。すなわち、1%の利上げで年間約5兆円の利払いとなり、2年超で自己資本を食い潰して債務超過に転落すことになる。

 

4月末に向けてかぶかは下落との予想:QUICK株価強弱指数

4月のQUICK株価強弱指数は0.475(速報値)となった。ニュートラルを示す0.500を下回り、4月末は3月末(2万8041円48銭)と比べて株価は下落すると予想されていることを示唆する結果となった。前月は0.446(確報値)だった。QUICK株価強弱指数は、日経平均株価が1カ月前の月末に比べその月の月末に上昇するか下落するかを示す確率である。(0~1の範囲で0.500がニュートラル)。当指数はQUICKが実施している。

 

ドル買い比率は低下:前週のFX概況

QUICKが10日に算出した7日時点の外国為替証拠金(FX)5社合計(週間)の建玉状況によると、円に対するドルの買い比率は58.0%と前の週末から0.3ポイント低下した。2月下旬以来約1カ月ぶりの低水準となる。7日夜発表の3月の米雇用統計の発表を受けて、米景気減速への懸念がやや後退した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続が意識されて円安・ドル高が進んだ場面で、個人投資家には相場の流れに逆らう「逆張り」の円買い・ドル売りの動きが出た。前週に市場予想を下回る米経済統計の発表が相次ぎ、米景気に対する警戒感はくすぶる。国内では9日に就任した植田新総裁が率いる日銀の新体制下で、近く大規模な金融緩和策を修正するとの観測がある。個人投資家は逆張りの戦略を好む傾向にあるものの、個人による円買い・ドル売り勢はさほど強まらなかった。「ユーロ・円」取引のユーロ買い比率は前の週末から0.8ポイント高い24.1%。「豪ドル/円」取引での豪ドル買い比率は同5.0ポイント上昇の72.1%だった。


 

植田新総裁就任会見の注目点:みずほ証券

10日に就任会見に臨む。3月の所信聴取では「(やや過剰にも思えるほど)旧執行部の立場に沿った発言を行っており、金融緩和修正についても明確な示唆は行われなかった」ことから、今回の会見で「このスタンスを180度変えることは想定しづらく、基本的には緩和修正について具体的な示唆が行われる可能性は低い」とみている。ただ、市場もそのことをある程度予想しているため、緩和修正に関する明確な示唆がなかったとしても「緩和修正期待が大幅に後退する可能性は低い」と指摘する。注目点としては、「政策再検証の実施や(所信聴取では否定していたが)共同声明修正の可能性など、政策修正への『布石』にあたる事象に対して何らかの示唆が行われるか」だという。特に、共同声明修正の可能性が視野に入る場合、「緩和の強度の調整という名目で、マイナス金利解除やYCC完全撤廃など、明確に緩和縮小に該当する政策が実施される可能性も高まる」と述べている。

 

トルコ経済の先行きを楽観視する声は皆無

先週発表された3月トルコ消費者物価指数(CPI)は前月比・前年比ともに市場予想をやや下回った。もっとも前月比は2%台、前年比にいたっては50%台と物価上昇率は高い水準のままである。同時に発表された同月製造業購買担当者景気指数(PMI)も50.9と前回から改善したが、トルコ経済の先行きを楽観視する声は聞こえない。来月のトルコ大統領選に向けた動向には注意しながら、今週のリラ円は3月16・17日高値7.05円を抵抗水準と想定している。下サイドは今年支えられている6.70円台を割り込むと、過去最安値6.17円が意識される。

 

南アでの非常事態宣言解除はイメージアップだけ

主に電力を中心としたエネルギー危機に際して、南アでは2カ月前(2月9日)より非常事態宣言が発令された。しかし、先週5日にこの宣言が解除されている。ただし、いまだに電力の負荷制限が続き、どのような対策が講じられたか不明の中での宣言解除のため、南アでは解除されたことにたいして疑問を持っている人々が多い。この非常事態宣言の間に新たに電力大臣という役職ができたが、当然のようにこれでは電力問題の解決には全くならない。また、重要なインフラストラクチャを停電の対象から免除するなど、危機に対処するための広範な権限を省と大臣に与えたが、実際にこの権限が行使されたこともない。政治的にも行き詰まり感しかない南アの現政権ではあるが、取りあえず宣言を解除してイメージアップに努めているだけとの声も多くある。

 

米雇用統計から5月利上げ観測強まる:US Dashboard

7日に発表された3月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比23万6000人増となり、市場予想24万人を下回った。2カ月連続の鈍化で、増加幅は2021年以降では最も少なかった。しかし、景気回復期の平均的な増加幅である20万人を上回ったまま、米労働市場が引き続き堅調であることが示された。失業率は2月の3.6%から横ばい予想に反して3.5%へ低下した。一方、時間当たり平均賃金(平均時給)は前年同月比4.2%上昇と2月の4.6%上昇から市場予想の4.3%上昇よりも大幅に上昇幅が鈍化した。労働参加率は62.6%と小幅ながらも4カ月連続で上昇し、新型コロナウイルス禍前の20年2月以来の水準を回復した。労働需給のひっ迫が賃金を押し上げてきた状況が緩和する兆しと期待できる。政策金利を予想する「Fedウオッチ」では5月利上げ確率が6日の49%から71%%へ上昇し、据え置き確率の28%を大きく上回った。

 

欧米市場イベント

○16:00   2月トルコ経常収支(予想:85.0億ドルの赤字)
○16:00   2月トルコ失業率
○19:15   植田和男日銀総裁、就任記者会見
○23:00   2月米卸売売上高(予想:前月比0.6%)
○23:00   デコス・スペイン中銀総裁、講演
○11日05:15   ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加
○国際通貨基金(IMF)・世界銀行春季会合(ワシントン、16日まで)
○ニュージーランド、オーストラリア、香港、ドイツ、スイス、フランス、英国、スウェーデン、ノルウェー、ポーランド、(以上、イースターマンデー)、南アフリカ(ファミリーデー)、休場

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