FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:米FOMCによる利上げ警戒感が薄らぎ買い優勢に

米国利上げペース減速を示唆したパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の発言で米国株が上昇したことを好感し、買いが先行した。一巡後は、重要な経済指標の発表を引けて伸び悩んだ。米長期金利が低下する中、このところ軟調だった値がさの半導体関連や電子部品、グロース(成長)株の上昇が目立ち、指数を押し上げた。市場では、FOMCへの警戒感が薄らぎ、目先は基本的に強い。年末にかけて需給の改善も見込まれ、戻りを試す動きが続きそうだとの指摘もあった。結局、前営業日比257円高の2万8226円と5営業日ぶりに反発して終了した。11月第4週(21日~25日)の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家(外国人)は4029億円買い越しとなり、買い越しは2週ぶりとなった。個人投資家は5367億円売り越しとなり、売り越しは5週連続となった。信託銀行は200億円売り越しとなり、売り越しは2週連続となった。

 

東京外国為替市場:米長期金利の低下からドル売り優勢に

ドル/円は、シドニー市場で米FRBの利上げペースが鈍化するとの思惑から下値を模索する展開となり、138円台前半から137円台前半へ水準を切り下げた。前日に行われたパウエルFRB議長の講演後に米長期金利が約2ヵ月ぶりの低水準となる2.6%付近へ急低下し、日米金利差が縮小したこともドル/円の押し下げ要因となった。東京市場に入っても軟調地合いは続き、継続的にストップロスのドル売り・円買い注文を巻き込みながら一時136.50円付近まで急落した。ただ、下値では値ごろ感からドル買い戻す動きも見られ、136円台後半へ切り返した。午後は、海外短期筋などから仕掛け的なドル売り・円買いが持ち込まれて一時136.21円付近まで下落、8月下旬以来の安値を更新した。米長期金利が小幅に低下したことも、ドル売りを誘った。ユーロ/ドルは、前日にパウエルFRB議長が早ければ12月にも利上げペースが鈍化する可能性に言及したことで、ユーロ買い・ドル売りが優勢となり、一時1.045ドル付近まで上昇した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

弱いトルコのGDPを受け大統領の発言には注意が必要

気を付けるべきは、昨日の弱いGDPを受けて、エルドアン・トルコ大統領が更なる利下げの必要性を訴え始めることである。7-9月期トルコGDP(前年比)は+3.9%と予想を僅かに下回り、マイナス成長を記録した20年4-6月期以来の低い水準だった。 トルコ中銀は10月、11月と150ベーシスポイント(bp)利下げを実行し、エルドアン大統領が望む一桁台(9%)まで政策金利を急ピッチで引き下げた。前回会合の声明で利下げサイクルの終了を宣言したが、今年はまだ1会合を残しており予断は許せない。というのも、大統領選を約7カ月後に控えてエルドアン大統領は支持率アップを急いでおり、低金利で景気の底上げと叫び出す可能性があるからである。そのため、しばらくは大統領発言に注意が必要である。

 

ラマポーザ南大統領はスキャンダルで窮地に

ラマポーザ南ア大統領に対する『ファラファラ』スキャンダルの調査(*スキャンダルについては最下部に記載)で、調査委員会が『(大統領が)重大な違反を犯した可能性がある』との調査結果を発表したことが要因である。大統領にとっては今月中旬に与党・アフリカ民族会議(ANC)の代表を選ぶ第55回全国選挙会議投票が控えていることで、再選の道が閉ざされる可能性が出てきている。高失業率、エネルギー問題の未解決などが、ラマポーザ氏の対抗馬としての攻撃材料だった。しかし、汚職に対し厳しくクリーンなイメージが強かったこと、海外投資家などからも評価が高かったことで、大統領の党首(=大統領)の地位は揺るがないと思われていた。しかし、今回の調査結果でラマポーザ氏は窮地に追い込まれたと言える。

 

*『ファラファラ・スキャンダル』は、2020年にラマポーザ大統領が所有する農場でドルが盗まれた事件。問題となっているのが、多額のドルの盗難にもかかわらず、大統領がランドからドルへの換金を南アフリカ準備銀行(SARB)に報告をしていなかったことが一つ(外為法違反)。また、動物を売って利益を得ていたことは認めたものの、その利益と申告に誤差がある脱税の可能性も問題視されている。

 

米経済活動は横ばいから小幅拡大:ベージュブック

米米連邦準備理事会(FRB)は30日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、10月中旬から11月下旬までに米経済活動がほぼ横ばいから小幅な拡大にとどまり、根強いインフレや労働力不足を巡りさまざまなシグナルが示されたという認識を示した。FRBはベージュブックで『金利とインフレは引き続き経済活動の重しとなっており、多くの情報筋が先行きについてより大きな不安や悲観的な見方を示した』とした。さらに『インフレは今後、安定的に推移、もしくはさらに鈍化する』と予想した。今回の報告書は、感謝祭前の11月23日までに入手した情報に基づきボストン地区連銀が作成した。

 

2日発表の11月米雇用統計:結果次第ではFRBの利上げ観測を強める可能性も

雇用統計の先行指標は労働市場の減速の兆しが示された。先行指標のひとつ民間部門の雇用者数を示すADP雇用統計の11月分は予想を下回り2年ぶり低い伸びとなった。特に製造業の雇用が10万人減少した。また、シカゴPMIも予想外に大幅悪化しパンデミックによる経済封鎖直後の20年5月来で最低となるなど、製造業活動の鈍化が目立った。全米の製造業活動を示すISM製造業の結果で再確認していくことになる。ただ、算出方法が見直されたADP雇用統計は労働省が発表する雇用統計の雇用者数を下回る傾向がある。このため、雇用統計がFRBの利上げ観測を強める可能性もある。
パウエル議長は過剰な利上げを回避するために利上げペースを減速する時期にきたとし、早くて12月の利上げペース減速の可能性も示唆した。同時に、金利は金融引き締め域まで引き上げる必要があるとし、2023年金利のピークは9月の見通しを上回る可能性が強いと繰り返した。今のところ、労働市場や賃金の伸びに暫定的な減速の兆候しか見られないと、労働市場の強さを強調しており、利上げ継続の必要性を強調した。

 

■市場エコノミスト予想失業率:3.7%(10月3.7%)非農業部門雇用者数:前月比+20万人(+26.1 万人)民間部門雇用者数:前月比+19万人(+23.3万人)平均時給:予想:前月比+0.3%、前年比+4.6%(+0.4%、+4.7%)

 

米国市場では10月PCE価格指数が公表:予想は前年比+5.0%

民間部門の賃金の伸びは鈍化しつつあり、消費者物価指数の上昇率も鈍化傾向にあることから、10月のPCEコア価格指数は9月実績をやや下回る可能性がある。ただし、需要鈍化によってインフレが短期間で緩和する可能性は低いため、9月実績を上回る可能性も残されている。

 

欧米市場イベント

○16:00   10月独小売売上高(予想:前月比▲0.6%/前年比▲2.9%)
○16:00   11月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.3%)
○16:00   11月トルコ製造業PMI
○16:30   11月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.1%)
○16:30   10月スイス小売売上高
○17:30   11月スイス製造業PMI(予想:54.0)
○17:50   11月仏製造業PMI改定値(予想:49.1)
○17:55   11月独製造業PMI改定値(予想:46.7)
○18:00   11月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:47.3)
○18:30   11月英製造業PMI改定値(予想:46.2)
○19:00   10月ユーロ圏失業率(予想:6.6%)
○21:00   7-9月期ブラジル国内総生産(GDP、予想:前期比0.7%/前年同期比3.7
○21:30   11月米企業の人員削減数(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社調べ)
○22:30   7-9月期カナダ労働生産性指数(予想:前期比0.3%)
○22:30   10月米個人消費支出(PCE、予想:前月比0.8%)
       10月米個人所得(予想:前月比0.4%)
       10月米PCEデフレーター(予想:前年比6.0%)
       10月米PCEコアデフレーター(予想:前月比0.3%/前年比5.0%)
○22:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.5万件/157.3万人)
○23:20   ローガン米ダラス連銀総裁、講演
○23:30   ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○23:45   11月米製造業PMI改定値(予想:47.6)
○24:00   11月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:49.8)
○24:00   10月米建設支出(予想:前月比▲0.3%)
○2日00:30   11月メキシコ製造業PMI
○2日01:45   レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○2日03:00   11月ブラジル貿易収支(予想:50.24億ドルの黒字)
○2日05:00   バーFRB副議長(金融監督担当)、講演
○米仏首脳会談(ワシントン)

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

カテゴリー

カレンダー

5月 2024
« 1月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ページの先頭へ