FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:軟調地合いでも押し目買いで底堅い

前週末の米国市場で主要3指数がそろって下落したことを嫌気し、軟調な展開となった。ただ、下落局面では押し目買いも流入し、下げ幅は徐々に縮まった。市場では、今月の米FOMCを通過するまでは積極的な買いは見込みにくいため、日経平均はFOMCまでは2万7000円台を中心に横ばい圏の動きが続きそうとの声が出ている。午後には日経平均が小幅な上昇に転じる場面があった。結局、前営業日比31円安の2万7619円と4日続落して終了した。

 

東京外国為替市場:ドル/円はじり高となり140円台半ばで推移

ドル/円は、急ピッチの上昇に対する警戒感から利益確定やポジション調整のドル売り・円買いが入り、一時140.12円付近まで下落した。本日は五・十日にあたり、仲値に向けて本邦輸出勢のドル売り・円買いが通常より多く持ち込まれたことも、ドル/円の押し下げにつながった。ただ、日米金融政策スタンスの違いが鮮明になっていることもあり、下値を追う動きは限られた。その後は、米金利先高観からドルは買い戻され、140.30円付近へ値を切り返した。午後は、海外投機筋などがドル買い・円売りに動き、140.50円付近へじり高となった。ユーロ/ドル高・ドル安が波及した面もあった。ユーロ/ドルは、欧州のエネルギー供給不安が高まるなかで仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが持ち込まれ、心理的節目の0.9900ドルを突破して一時0.9880ドル付近まで下落、約20年ぶりの安値を更新した。

 

日経平均株価の9月末予想:QUICK月次調査

QUICKが5日公表した9月の株式月次調査で、市場関係者による1ヵ月後(9月末)の日経平均株価の予想は平均で2万7679円となった。8月調査(2万7562円)から小幅に上昇した。米景気の減速懸念が重荷となるものの、経済再開を背景に消費関連の強気予想が増えている。最も注目する株価変動要因の質問では『海外株式・債券市場』の回答比率が26%と前回調査から15ポイント、『金利動向』は31%と同17ポイントそれぞれ上昇した。米FRBの金融引き締めによる金融市場の変動を映した。一方、『景気・企業業績』は38%となり、前回(66%)から大幅に低下した。セクター別の投資スタンスでは『消費』のオーバーウエートが18%で前回長調査から9ポイント上昇した。6ポイント高の18%となった『医療・食品』と並んでトップとなった。半面、前回トップだった『自動車』は12%と9ポイント低下した。アンダーウエートのトップは『電機・精密』で12ポイント高い30%だった。

調査は証券会社や投信投資顧問など株式市場関係者209人を対象に8月30日~9月1日に実施し、118人から回答があった。(回答率56.5%)

 

ドル買い比率は5ヵ月ぶり低水準:前週のFX概況

QUICKが5日に算出した店頭の外国為替証拠金(FX)5社合計(週間)の建玉状況によると、『ドル/円』取引で総建玉に占めるドル買いの比率は2日時点で55.1%だった。前の週末から3.3ポイント低下し、3月下旬以来およそ5ヵ月ぶりの低水準となった。米FRBによる積極的な金融引き締めが長引くとの見方から、前週に円相場は1ドル=140円台まで下げ、約24年ぶりの安値をつけた。相場の流れに逆らって取引する『逆張り』傾向が強いとされる個人投資家は円買い・ドル売りの持ち高を増やした。ドル以外の通貨に対しても円買い・外貨売りが活発となった。『豪ドル/円』取引では豪ドルの買い比率が2.8ポイント低い49.0%と節目の50を下回り、データが遡れる2007年以降で最低となった。『ユーロ/円』取引では、ユーロの買い比率が8.1ポイント低い29.3%と6月下旬以来の水準に低下したほか、『ポンド/円』取引でのポンド買い比率は0.2ポイント低い62.1%となった。

 

トルコの8月インフレ指標に注目集まる:対ドルでの下値余地は更に広がる

本日発表されるトルコの8月インフレ指標を受けた動きが注目される。前回7月に80%手前だった消費者物価指数(CPI、前年比)は81%台まで伸び率が上昇すると予想されている。先週イスタンブールの商工会議所が発表した同都市8月の物価上昇率は前年比で99.9%まで加速した。7月91.1%から8.8%の伸び率拡大である。イスタンブールは1560万人を超える人々が住み、トルコ全体の約18%の人口を抱えている。そのトルコ最大の都市が3桁に届くインフレ率ということは、いずれ全国の物価上昇率も追いついてくる可能性が高い。高騰するインフレで通貨価値も低下するばかりであり、特にリラの対ドルでの下値余地は更に広がることになってしまう。

 

南アではネガティブなニュースがランドの重し

南アの政局不安や労使間交渉の行き詰まり、電力負荷制限などネガティブなニュースが多いため、ランドの上値は抑えられる。政治的な問題としては、ラマポーザ南ア大統領が違法な外貨取引を行ったとされている『ファラファ・スキャンダル』について、8日までに南アフリカ準備銀行(SARB)への説明を求められている。国民が納得できる回答ができるかに注目が集まるが、回答次第では大統領の再選も危ぶまれそうである。また、ゴドンワナ南ア財務相のセクハラ問題の進展にも要注目です。

 

メキシコ南西部の深刻な水質汚染

メキシコ南西部にあるミチョアカン州の水質汚染が深刻な問題となっている。ミチョアカン州は元々、18の湖、270の貯水池、44の河川、600の井戸と『水の生産において戦略的な州』と言われていた。しかし近年、研究者の話によれば、州の約70%以上が汚染されていると警告されているにも関わらず、当局は特に問題視せずに放置しているとのことである。州内の代表的なクイツェオ湖は、養豚場からの廃棄物や工場からの産業廃棄物の投棄により、湖の表面に藻類が繁殖し、病気や死を引き起こす可能性があるとサン・ニコラス・デ・イダルゴ大学のチャコン教授は訴えている。そして、湖だけではなく、河川も懸念材料となっており、レルマ川は専門家間では『生物学的に死んでいる』『巨大な悪臭を放つ下水道』と評されており、腎臓病など健康障害を引き起こす可能性のある重金属で汚染されているとのことである。こういった明らかに州市民の生活を脅かしている状況にもかかわらず、問題解決に動かない当局に変化が見られるのかどうか である。

 

米国では9月から資産縮小倍増で2重引き締めの影響

パウエル米FRB議長が8月26日のジャクソンホール公演で『インフレを退治するには人々の期待インフレを潰す必要がある』と訴え、『ミニ・ボルカー』足らん施政を旗織鮮明として市場が抱いていた23年利下げ転換期待を打ち砕いた。しかし、パウエル米FRB議長は政策金利を消費者物価指数(CPI)より引き上げる必要があり、来春3-5月頃までの利上げ継続を、未だ市場は織り込んでいないという。米国はじめ世界の株価は米インフレ圧力の一服感や米FRBの23年利上げ転換期待に6月中旬を底に、7-8月にナスダックは底値から2割上昇、S&P500指数は下げ幅の半値戻しを実現した。かかる7-8月の米国株高は米FRBの『QT](量的引き締め)が事前発表より緩慢だったことを好感した可能性がある。米FRBは5月に保有資産を6-8月に毎月最大475億ドル縮小を公約、つまり3ヵ月間で1425億ドル縮小すべきところを当初の4割程度しか減額しなかった。ただ、9月からの資産縮小を最大950億ドルに倍増する予定で、金余りに支えられた株高だけに『2重引き締め』の影響は避けられない。しかも、何より、景気後退の 『炭鉱のカナリア』と言われる長短金利の逆転『逆イールド』が米国株の先行きに暗雲となって圧しかかる。

 

パウエルFRB議長は選挙の敗北を覚悟してインフレ抑制に遇進するのか?

パウエル16代FRB議長は、ボルカー第12代FRB議長、グリーンスパン第13代FRB議長、バーナンキ第14代FRB議長という歴代議長を例に挙げて、早急な緩和のリスクを歴史が警告していると述べており、0.75%利上げの可能性を示唆した。1979年のボルカー・ショックは、インフレ率は低下させたものの、失業率を上昇させ、2度のリセッション(傾向後退)を招いたことで、示してくれたカーター第39代米大統領の再選を打ち砕いた。パウエルFRB議長は、失業率を上昇させ、リセッションを招き、バイデン米政権の2022年の中間選挙と2024年の大統領選挙の敗北を覚悟して、インフレ抑制に遇進するのだろうか?

 

欧米市場イベント

○16:00   8月トルコ消費者物価指数(CPI、予想:前月2.00%/前年比81.22%)
○16:00   4-6月期スイス国内総生産(GDP、予想:前期比0.4%/前年比3.0%)
○16:50   8月仏製造業PMI改定値(予想:51.0)
○16:55   8月独製造業PMI改定値(予想:48.3)
○17:00   8月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:50.2)
○17:30   8月英製造業PMI改定値(予想:52.5)
○18:00   7月ユーロ圏小売売上高(予想:前月比0.4%/前年比▲0.7%)
○6日00:30   マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○英与党保守党党首選の決選投票結果発表
○石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合
○米国、カナダ(レーバーデー)、休場

 

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