FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:高値警戒感から10営業日ぶりに反落

日経平均株価は前週末まで9連騰後の高値警戒感から売り優勢で始まったものの、日銀が指し値オペを通告したことでドル/円が円安方向に振れ、輸出関連株を中心に中盤から下げ渋る動きとなった。市場では『日銀の指値オペがあるか否かが注目点だった。一方、日経平均は25日移動平均線とのかい離率が6%を超えて推移しており、テクニカル的に上げのスピードが鈍っても不思議ではないとの声も聞かれた。中国・上海市が28日から一部で事実上のロックダウン(都市封鎖)を始めたことも相場の重荷となり、下げ幅は一時300円を超えた。結局、前営業日比205円安の2万7943円と10営業日ぶりに反落して終了した。

 

東京外国為替市場:債券の指し値オペと米長期金利上昇でドル買い優勢

ドル/円は、日銀が午前10時10分ごろに金利上昇を抑制するために指し値オペを通告すると、海外勢などから仕掛け的なドル買い・円売りが持ち込まれ、122円台前半から123.10円まで急伸した。米長期金利が上昇したことも、ドル買いにつながった。ただ、123円に乗せた達成感から、利食い売りなどに122円台後半へ押し戻される荒い値動きとなった。午後に入ると、米金利先高観から再び上値を試す展開となり、一時123.25円まで上伸して2015年12月以来のドル高・円安をつけた。ユーロ/ドルは、このところ米FRB当局者から0.50%の利上げに前向きな発言が相次いでいることで、持ち高調整のユーロ売り・ドル買いが入り、一時10.945ドル付近まで下落した。

 

日銀『指値オペ』通知:金利抑制へ再発動

日銀は28日、指定した利回りで無制限に国債を買い取る『指し値オペ(公開市場操作)』を実施すると通知した。新発10年物国債を対象に0.25%の利回りで原則として応札分をすべて買い取り、金利の上昇(債券価格の下落)を抑制する。指し値オペの発動は2月14日に続き今年2回目。海外金利の上昇を受けて国内債への売り圧力が強まるなか、金融緩和を続ける姿勢を強く示す狙いがある。国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは28日午前、一時0.245%と2016年1月以来の高水準をつけ、日銀が長期金利変動の上限とする『0.25%程度』に迫っていた。前週末の米債券市場で米長期金利が上昇し、国内債にも売りが及んだ。指し値オペ発表後に長期金利は一時0.240%に低下し、午前の取引終了までに日銀が指定した0.25%よりも低く(価格は高く)推移した。日銀は同日昼、指し値オペでの日銀の買い入れ額がゼロだったと発表した。日銀の提示した価格よりも市場の方が高く売れるため、応札する金融機関がなかった。日銀が前回2月に指し値オペを実施した際にも、市場金利の方が低く推移し、金融機関からの応札はなかった。もっとも午後には長期金利は一時0.250%と日銀の『上限』に達した。20年物国債利回りは同0.770%、30年物国債利回りは同1.000%とそれぞれ上昇した。米国を中心に世界的な金利上昇の勢いが強いなか、日本の国債利回りにも上昇圧力がかかっている。

 

実質実効為替レートは1972年2月に近づいている可能性も

ドル円の上値目処は、2015年6月の高値125.86円だが、当時は黒田日銀総裁が『実質実効為替レート(67.63)ではかなりの円安であり、一段安はありそうにない』と円安をけん制し、ドル安・円高方向に反転させた。国際決済銀行(BIS)が発表した円の2月の実質実効為替レートは、66.54となり、1972年以来の低水準だった1月の67.38からさらに低下している。3月は、ドル/円が123円台に上昇するなど、円が全面安の展開となっており、1972年2月の66.25に近づいているかもしれない。実質実効為替レートは、日本の貿易量や物価水準が反映して総合的な実力を示しているが、輸出企業は海外に生産拠点を移していることで円安の恩恵は限定的となり、購買力の低下は家計の負担を高めることになる。

 

トルコの観光関連セクターへの打撃:イスタンブールの停戦協議が注目

トルコの観光シーズンを間近に控え、重要な顧客であるロシアとウクライナの戦争の行方も注視すべき材料である。2021年のロシアからトルコへの観光客数は約470万人、ウクライナからが約210万人と、それぞれ外国人観光客の割合では全体1位の19%と3位8.3%を占めている。トルコ当局は今年、ロシアからの旅行客数をパンデミック前の約700万人と予想していたが、ロシアへの経済制裁が強化されるなかで期待通りとはなりそうにない。露ウクライナ戦争が長引けば、トルコ主要産業である観光関連セクターへの打撃は大きくなってしまう。本日からイスタンブールで始まる停戦協議が注目される。

 

南ア準備銀行のタカ派姿勢を確認

先週に南ア準備銀行(SARB)・金融政策委員会(MPC)は政策金利を0.25%引き上げ4.25%とした。サプライズだったのは、前回1月のMPCでは5名中1名が据え置きを支持したのに対し、今回は5名中2名が0.50%の利上げを主張したことである。また、22年の消費者物価指数(CPI)見通しは平均+5.8%(前回+4.9%)、23年は+4.6%(前回+4.5%)へ上方修正した。。コアCPIは、22年が+4.2%(前回+3.8%)、23年は+5.0%(前回+4.4%)へと上方修正されました。SARBの次回会合は5月19日だが、SARBのタカ派姿勢が確認されたことでランド/円は堅調に推移しそうである。

 

メキシコ中銀は積極的な金融引締めに動きとの期待感

メキシコ中銀が今年2回目となる金融政策決定会合を開き、政策金利を予想通り0.50%引き上げることを決定した。声明では『世界的な金融および金融情勢の継続的な引き締め、および地政学的紛争に関連する重大な不確実性とより大きなインフレ圧力の環境によってもたらされる課題について検討』『インフレ圧力と期待に影響を与える全ての要因を徹底的に監視』などと引き続きインフレを警戒しながらの政策運営になることを強調した。インフレ見通しに関しては、今年のインフレ見通しを第1-4四半期まで全て大幅に上方修正した。そして、中銀目標の3%前後に落ち着くのは前回の2023年第1四半期から2024年第1四半期と1年後ずれさせた。そして、市場の注目となっていたメンバーそれぞれの票では、全会一致で0.50%の利上げであることが分かった。今後も積極的な金融引き締めに動くとの期待感が高まるなか、まだまだペソ高のトレンドは継続しそうである。

 

コモディティ価格が1915年以来の大幅上昇へ:バンクオブアメリカ

BofAは25日、今年のコモディティー価格が1915年以来の大幅な上昇を記録する勢いだとの見方を示した。新型コロナウイルスの流行、ロックダウン(都市封鎖)、社会不安、戦争、過度の金融・財政刺激、供給制約が、『壮大な』インフレにつながっていると同社のアナリストは指摘した。一方、国債は1949年以降で最悪の年になると指摘した。中央銀行が物価高騰を抑制するため、金融引き締めと利上げに乗り出しているため、『マイナス利回りの債券が(市場から)静かに消えつつある』と述べた。米調査会社EPFRグローバルのデータに基づく週間調査では、132億ドルがキャッシュに、21億ドルが金に流入した。債券から2億ドル、株式から19億ドルから流出した。

 

米国では富裕層の未実現キャピタルゲイン最低20%課税提案

バイデン米大統領は、28日に発表する2023会計年度(22年10月-23年9月)の予算教書で、1億ドル(約122億円)を上回る超富裕層の家計を対象に所得と未実現のキャピタルゲイン所得の両方に最低20%課税する増税案を提案する。ホワイトハウスが『ビリオネア最低所得税』と呼ぶ案は、最富裕層の増税に向けバイデン政権がこれまで行った提案で最も踏み込んだ内容となる。法律が成立すれば、今後10年で推定3600億ドルの新たな税収が見込まれ、これはホワイトハウスが同じ期間に想定する赤字支出の削減額(1兆ドル)の3分1余りに相当する。ホワイトハウスは『バイデン大統領は資本主義者であり、誰もがミリオネアやビリオネアになれるはずだと信じている。同時に米国の最富裕層家計が勤労者世帯より低い税率で納税する結果になる米国の税法は間違っていると考えている』と説明した。

 

欧米市場イベント

○19:00   レーン・フィンランド中銀総裁、講演
○20:00   ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
○21:00   2月メキシコ貿易収支
○21:30   2月米卸売在庫(予想:前月比1.1%)
○29日00:30   米財務省、2年債入札
○29日02:00   米財務省、5年債入札
○欧州・英国は27日から夏時間に移行済み

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