FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:資源高による世界景気の悪化リスクを警戒

米国株先物3指数はそろって1%超安の下落となり、市場全体がリスク回避に傾く展開となっている。市場では、ユーロの急落や原油先物相場の急騰を受け、パニック的な動きが波及した。アジア市場で香港ハンセン株価指数や上海総合指数が大幅下落となるなど、世界同時株安の様相が広がっている。下げ幅は一時900円を超え、節目の2万5000円に近づく場面があった。結局、前営業日比764円安の2万5221円と続落した。

 

東京外国為替市場:114円台後半で小動きの展開

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りに支えられ、115.06円付近まで上昇した。しかし、ウクライナ情勢が一段と緊迫しているため、上値を追う動きは限られた。その後は、日経平均株価の大幅安や米長期金利低下を眺めたドル売り・円買いに押され、114.80円台へ下落した。午後は、手掛かり材料難から積極的な売り買いは目立たず、小幅に上げて114.90円台を中心とする狭いレンジで取引された。今週予定されている2月米消費者物価指数(CPI)を控えて、ポジションを積極的に傾けにくくなっている。ユーロ/ドルは、1.08ドル台後半で小動きの展開となった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

ウクライナの緊張激化で予防的利上げの機会を逸する

ウクライナ情勢の緊迫化でECBの年内利上げ観測が急速に後退している。10日の理事会で、年後半の利上げ開始に向けた資産買い入れの前倒し終了まで踏み込むかは、向こう1週間の金融市場の緊張度合いに左右される。ウクライナ情勢が早期に沈静化した場合も、利上げ開始の最短日程は12月の理事会とみる。混迷が長期化した場合、原油急騰時を除けば、予防的な利上げの機会を逸し、賃上げっや価格転嫁を確認するまでは利上げが難しくなる。

 

原油と天然ガスの価格上昇が止まらずトルコのインフレ高進に追い打ち

資源供給国であるロシアを世界経済から遮断しようとする動きが続き、原油や天然ガスの価格上昇は止まらず、トルコのインフレ高進に追い打ちをかけている。2月トルコ消費者物価指数(CPI)は前年比54%台まで上昇し、米投資銀行は年央にかけて60%超えまでの伸び率加速を予想した。トルコ中銀が金融政策を引き締めることができないため、通貨価値の減少は止められない。トルコは欧米や日本などが強化している対露制裁に参加していないが、ロシアと独自に交渉して国際的な存在感を示そうとしている。ロシアとウクライナの外相会談をトルコで開催することを提案し、ロシア側からは歓迎するとの発言も伝わった。ただしプーチン露大統領の強硬姿勢に変わりがなければ、停戦に向けた進展はそれほど見込めない。

 

南アでは原油価格急騰でインフレ加速が問題視

南ア国内では原油価格が急騰しているため、インフレ加速が問題視されている。通常では、インフレ高進による政策金利の引き上げは通貨高につながる。しかしながら、今回はインフレ上昇の速度がかなり速いことが想定されるため、南ア経済にとっては大きな痛手となる。毎週、南ア政府が国内石油の基準値を発表しているが、すでに貧困層の中では対処できないほどの上げ幅になってきている。今週の経済指標では8日に10-12月期国内総生産(GDP)、9日に1-3月期南アフリカ経済研究所(BER)企業信頼感指数、10日に10-12月期経常収支が発表されます。通常、ランドはGDPなどには反応しますが、昨年10-12月と今年の1-3月期では市場の動向が全く違っているため、経済指標では動きにくい。

 

メキシコ中銀が利上げに対して慎重な見方の出始めていることに留意

国内のイベントとしては、目立ったものは9日の2月メキシコ消費者物価指数(CPI)のみである。すでに先日2月前半CPIの結果が+7.22%であることが明らかになっている。昨年11月に+7.37%のピークを付けて以降は2カ月連続で鈍化していたが、おそらく前月よりも上昇することが見込まれている。欧州をはじめとした各国がロシアに制裁を科しているが、先週末にはロシア産石油の輸入禁止も検討していることが伝わると、週明けのアジア市場では原油先物相場が高騰しているので、メキシコ国内のインフレも今後は一段と進みそうである。そうなると、メキシコ中銀による利上げ期待が高まるが、ヒース副総裁が先週、『一段の利上げは景気回復を遅らせる可能性がある』と弱気な見解を示していただけに、利上げに対して慎重な見方も出始めていることには留意が必要そうである。

 

米政権は単独でもロシア産原油の禁輸の実施を検討

ロシア産原油の輸入禁止を巡り関係者の話として『米バイデン政権は、少なくとも当初は欧州同盟国の参加がなくても、米国への輸入禁止を実施するかどうかを検討している』と報じた。報道によると、禁輸はまだ決定しておらず時期や規模は流動的という。ブリンケン米国務長官は6日のテレビインタビューで『欧州の同盟国・有志国とロシアから原油輸入を禁止する可能性について協調して検討するよう協議している』と表明していた。

 

米2月雇用統計は予想を上回り3月FOMCの利上げ正当化へ

米労働省が発表した2月雇用統計で失業率は3.8%と、1月4.0%から予想以上に低下し、2020年2月以降で最低となった。非農業部門雇用者数は前月比67.8万人と、伸びは1月+48.1万人から減少予想に反し増加し、21年7月以降で最大となった。1月分は46.7万人から+48.1万人に1.4万人上方修正された。12月分は51万人から58.8万人に上方修正され、12月、1月2カ月分で9.2万人の上方修正となった。平均時給は前月比横ばいと、1月+0.6%から伸びが鈍化。予想も下回った。前年比では+5.1%と、伸びは1月5.5%から拡大予想に反し鈍化した。労働参加率は62.3%と、62.2%から予想外に上昇した。不完全雇用率は7.2%と、7.1%から上昇した。米雇用統計の結果はFRBの3月FOMCでの利上げを正当化する。一方で、米国債相場はロ軍のウクライナ攻撃激化に加えて、雇用統計で雇用が予想以上に鈍化したものの時給の伸びが予想外に鈍化したため堅調推移となった。

 

欧米市場イベント

○15:45   2月スイス失業率(季節調整前、予想:2.5%)
○16:00   1月独小売売上高(予想:前月比1.9%/前年比9.5%)
○16:00   1月独製造業新規受注(予想:前月比1.0%/前年同月比5.8%)
○24:00   カンリフ英中銀(BOE)副総裁、講演
○8日05:00   1月米消費者信用残高(予想:245億ドル)
○ロシア(振替休日)、休場

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

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