FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:ウクライナ情勢の緊迫化を嫌気した売り優勢に

前日の米国株安を嫌気して安く始まった後は、ウクライナの原発でロシア軍の攻撃による火災が生じているなど、情勢の緊迫化を示唆する情報が相次ぎ、リスク回避の売りが急速に広がった。ロシア軍の攻撃を受けたウクライナの原発に関して、グランホルム米エネルギー長官が『強固な格納構造で保護されており、原子炉は案z年に停止されている』と述べたことが伝わっている一方、市場では『週末でもあり、休日中の動きがどうなるか不透明感が強く、手を出しにくい』との声が出ていた。結局、前営業日比591円安の2万5958円と反落して終了した。

 

東京外国為替市場:有事のドル買いとリスク回避の円買いが錯綜

ドル/円は、複数メディアが『ロシア軍による砲撃でウクライナにある欧州最大規模の原子力発電所で火災が発生した』と報じると、リスク回避姿勢が強まり、115.25円近くへ下落した。日経平均株価の大幅安や米長期金利が急低下したことも、ドル売り・円買いを誘った。その後、『ロシア軍に砲撃された原子力発電所では、バックグランド放射線レベルに変化はなかった』『火災は敷地以外の訓練用建で起きた』などの報道が伝わると、ドル買い・円売りが強まり、115.55円付近へ付近へ上昇する場面があった。しかし、ロシア軍がウクライナ都市部への攻撃を続けていることから伸び悩み、持ち高調整などのドル売り・円買いに押されて115.35円付近へ軟化した。午後は、日経平均株価や米長期金利を睨みながら、小幅に値を上げて115.40円台を中心とする狭いレンジで取引された。ウクライナ情勢の続報や今晩の2月米雇用統計を見極めたいとのムードが広がった。ユーロ/ドルは、1.10ドル台前半で小動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

ロシア国債にデフォルトリスク:クーポン支払いでも投資家に届かず

ロシア国債の保有者は、資金を回収できないのではないかという疑問を抱き始めている。政府はクーポンを支払っているが、ウクライナでの戦争と外貨準備凍結の中で投資家が資金をいつどうやって受け取れるかは不透明である。ロシア中央銀行は、送金停止は一時的措置だとしているが、金融システム崩壊の中でロシアが債務を履行するモチベーションにも疑問符が付く。ロシアは数十年をかけ国際金融システムに参加してきたが、数日で巻き戻された。ロシア国債は1998年以来のデフォルト(債務不履行)リスクに直面している。

 

制裁はプーチン氏に効果あるのか:歴史は否定的

西側諸国が発動したロシアに対する一連の包括的な経済制裁は、世界の主要国に対するものとしては過去最大級で、ロシア経済を疲弊させ、ウクライナ侵攻の代償を極めて大きなものにする見通しである。しかし、制裁措置がウラジーミル・プーチン大統領にウクライナからの軍撤退を決断させる、あるいはプーチン氏の求心力を弱めることにはならないだろうと専門家はみている。これまで世界で実施された制裁による成果はまちまちで、ロシアのような専制国家についてはとりわけ、言動を劇的に変化させるには至っていないと指摘されている。イランに対して2015年の核合意を迫り、最近でも指導者に交渉のテーブルに戻るよう促したのは、経済制裁が要因の一つと考えられている。だが、中東での攻撃的な武力行使といった米国が問題視するイランの行動を変更、あるいは食い止めることはできなかった。北朝鮮についても、米国や国連が経済制裁を発動しても核開発を断念していない。

 

トルコのインフレは高進中:米銀の見通しも上方修正

2月消費者物価指数(CPI)は前年比で54%を超え、52%台の予想を上回り、約20年ぶりの水準を記録した。トルコ中銀が重要視するとしたCPIコアも前回39%台から44%台まで上昇している。なお、CPIと同時に発表された同月生産者物価指数(PPI)は、前年比105%付近まで急騰した。今後、消費者物価にどの程度まで転嫁されるかが注目される。昨日の結果を受け、米ゴールドマン・サックスはインフレのピーク予想を5-6月の65%前後、米JPモルガンも5月の60%台とこれまでの55%前後から引きあげた。年末予想は、ゴールドマンが45%、JPは40%付近としている。足もとの物価高が想定以上にもかかわらず、ネバティ・トルコ財務相は相変わらず『インフレは低下する、させる』の一点張りである。同財務相は昨日、2023年には一桁台を実現するとまで述べている。トルコの経済・財政政策をリードしなければならない人物が現実を見ていないのであれば、今後も効果的なインフレ抑制策は期待できそうにない。

 

南アはウクライナ侵攻について中立:バイデン米大統領が懸念

南アはロシアのウクライナ侵攻について中立的な立場をとっている。しかし、バイデン米大統領がこのことに懸念を表明するなど、徐々に南アも決断を迫るときがくるかもしれない。今後の南ア政府の動きには注目点となる。

 

メキシコ中銀が今年の成長率予想を下方修正

メキシコ銀行(中央銀行)は2日公表した四半期報告で、今年の成長率予想を従来の3.2%から2.4%へと引き下げた。ウクライナ情勢を巡る地政学リスクと新型コロナウイルスのパンデミックによる影響を考慮したものとしている。インフレについてもウクライナ情勢が農作物やエネルギー価格を押し上げる可能性があり、サプライチェーンの混乱と人件費の高騰を招きかねないと警戒感を示した。もっとも、インフレ見通しは現在の7%台から年末にかけて4%程度まで鈍化し、2023年半ばには中銀のインフレ目標(3.0%±1.0%)内で落ち着くと予想しています。

 

米2月ISM非製造業景況指数が予想外に低下

米供給管理協会(ISM)が発表した2月ISM非製造業景況指数は56.5と、1月59.9から上昇予想に反して低下し2021年2月来で最低となった。同時刻に発表された米1月製造業受注は前月比+1.4%と、12月+0.7%から伸びが拡大した。12月分は+0.7%と、-0.4%からプラスに上方修正された。米1月耐久財受注改定値は前月比+1.6%と、予想通り速報値を維持した。輸送用機器除く1月耐久財受注改定値は前月比+0.7%も速報値と同水準となった。国内総生産(GDP)の算出に用いられる製造業出荷・資本財(航空機を除く非国防)改定値も前月比+1.9%と、修正はなかった。 事前にマークイットが発表した米2月サービス業PMI改定値は56.5と、予想外に速報値56.7から下方修正された。2月総合PMI改定値も55.9と、速報値56.0から下方修正された。

 

米2月雇用統計と2月CPIの結果で3月FOMCの利上げを確認

連邦準備制度理事会(FRB)は2週間後に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。2月雇用統計や10日発表の消費者物価指数(CPI)で3月の利上げの幅を探る。FRBのパウエル議長は議会証言で、インフレ高進とともに労働市場がひっ迫しており、非常に低い金利を引き上げる必要があると、金融正常化計画を維持していることを再表明した。議長は現状で3月FOMCで25bpの利上げを推奨。ロシアのウクライナ軍事侵攻が一段と激化し、ウクライナ近隣のNATO諸国にもリスクが波及する可能性なども警戒される中、一時3月FOMCの利上げ観測が後退した。しかし、議長の発言を受けて、3月FOMCでの利上げ観測が再燃。議長は加えて、高インフレが持続した場合、50bpの利上げの準備もあるとした。2月雇用統計では失業率が一段と低下、非農業部門雇用者数も40万超の増加が予想されている。賃金も20年5月以来で最大の伸びを記録する見通しで、利上げを正当化すると見られる。3月15-16日に開催されるFOMC直前の10日には2月CPIが発表される。FRB高官の中には、前月比で伸びの鈍化が示されなければ50bpの利上げを支持するとの見解も見られる。

 

米国市場では2月雇用時計を公表:予想は非農業部門雇用者数は前月比40万人

1月の非農業部門雇用者すすは市場予想を大幅に上回ったが、2月上中旬の新規失業保険申請件数は大きく変わっていないため、大幅な雇用拡大は期待できない。ただし、失業率は不完全雇用率が継続的に低下していることを参考にすると、1月実績の4.0%を下回る可能性がある。

 

欧米市場のポイント

○16:00   1月独貿易収支(予想:55億ユーロの黒字)
○16:00   1月独経常収支(予想:165億ユーロの黒字)
○16:45   1月仏鉱工業生産(予想:前月比0.5%)
○18:30   2月英設業購買担当者景気指数(PMI、予想:57.5)
○19:00   1月ユーロ圏小売売上高(予想:前月比1.3%/前年比9.1%)
○21:00   10-12月期ブラジル国内総生産(GDP、予想:前期比0.1%/前年同期比1.1%)
○22:30   1月カナダ住宅建設許可件数(予想:前月比2.0%)
○22:30   10-12月期カナダ労働生産性指数(予想:前期比▲0.2%)
○22:30   2月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化40.0万人/失業率3.9%/平均時給、前月比0.5%/前年比5.8%)
○24:00   2月カナダIvey購買部協会景気指数
○5日 中国全国人民代表大会(全人代)開幕(北京)

 

 

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