FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:上値の重さが意識されるなか円高基調を嫌気

朝方は前日の米国株高が好感され、一時200円超高となったものの、その後は上値の重さが意識された。個別では前日に自社株買い1兆円の方針を発表したソフトバンクグループが10%超高となった。NYダウ先物がさえない動きとなったことや、為替市場でドル/円が113円割れとなる円高基調となったことが嫌気され、下げ幅は一時250円を超えた。結局、前営業日比221円安の2万9285円と3日続落した。

 

東京外国為替市場:米長期金利の低下を眺めドルは下値模索

ドル/円は、日経平均株価が朝高後に伸び悩んだことや米長期金利低下を眺めて下値を模索する展開となり、約1ヵ月ぶりに113円を割り込んで112.93円まで下落した。前日にクラリダFRB副議長が早期の利上げに慎重な姿勢を見せたことも、ドル売りにつながった。午後に入ってもこの流れは続き、日経平均株価が下げ幅を拡大すると、さらにドル売り・円買いが進んで112.73円付近まで下落した。しかし、NY時間に予定されているFRB当局者の講演内容を見極めたいとの雰囲気もあり、下げは一服した。その後は、値ごろ感からのドルを買い戻す動きも見られ、112.75円前後で取引された。ユーロ/ドルは、米国の早期利上げ観測が後退するなかで持ち高調整などのユーロ買い・ドル売りが入り1.1605ドル付近へ上昇した。

 

中国恒大集団は子会社株を再び売却:デフォルト回避の資金調達

中国紙・証券時報(電子版)は8日、経営危機に陥っている不動産開発大手の中国恒大集団が同日、傘下のインターネットサービス会社・恒騰網絡集団の株式を再度売却し、4億730万香港ドル(約59億円)を調達したと伝えた。恒大は未払いとなっているドル建て社債の利息の支払い猶予期限が10日に切れることから、デフォルト(債務不履行)回避に向けた資金調達の動きとみられる。同紙などによると、恒大は4、5両日にも恒騰株を売却しており、8日分と合わせた調達額は11億2460万香港ドル(約164億円)に達した。社債の未払い利息は1億4810万ドル(約168億円)と、ほぼ同額で、調達資金は利払いに充てられる可能性がある。

 

欧英の中銀幹部発言と今後の金融政策動向にらむ

今週はECB(欧州中銀)や英国中銀の幹部による発言機会が相次ぐ。ECBはドイツなどでコロナ感染が再増加となるなか、来年にかけての利上げには慎重姿勢を強調している。今週以降も利上げ慎重姿勢が確認されるとユーロ安へと作用する。反対にインフレ長期化などを警戒し、量的緩和の縮小加速を含めた『緩和見直し』に前向きな幹部発言が出てくると、短期的なユーロ高の材料となる。

英国中銀は前週に利上げを見送ったが、ベイリー英中銀総裁は4日、『インフレを目標水準にとどめるために今後数カ月内の利上げは依然必要』、『利上げは封印しない』と述べた。続いて5日には英中銀のチーフエコノミストが、『英国の賃金上昇ペースは、米国とユーロ圏を上回る公算が大きい』との見解を示している。こうした発言などもあり、為替相場のポンドは前週からの調整下落が一巡してくると、先行きの利上げを見据えた下限切り上がりに移行してくる可能性もある。

 

トルコ国営企業の財務が透明性に欠くとの批判

トルコメディアは先週末、国有企業12社が2020年に合計で160億リラの損失を被ったと報じた。トルコ航空が61億リラと全損失の約38%を占め、次にトルコ国営鉄道の39億リラ、国営空港庁総局21億リラなどの損失が目立つ。これら国営企業の財務が透明性に欠くのではないかという批判も上がっており、いずれ経済危機に繋がるのではないかと懸念を示す人も出てきた。一方、イスタンブール株式市場をみると主要指数が過去最高値を更新するなど、民間企業に対する業績回復、そして拡大への期待は高まっている。トルコ経済の成長を期待する見方は確かにあり、今後は緩和サイクルに打ち止め感がでてインフレ抑制への見通しが立つかがリラ反転のポイントとなる。

 

南アの地方選挙後のリスク要因

先週、5年に1度の南ア地方選挙が行われた。今回のアフリカ民族会議(ANC)の支持率低下は現大統領のラマポーザ氏の責任というよりも、長い間積もっていた国民の不満が爆発した形である。特に前政権のズマ時代が、汚職や腐敗が蔓延っていたこと、そして貧富の拡大、失業率の上昇、インフレ下なのに給料は上がらないなど、落ちるべきして落ちたと言える。リスク要因を挙げていくと ①現大統領を巻き込んだ政争が起きる・・・この場合はクリーンなイメージがあり、国際的にも支持されているラマポーザ氏が大統領職を辞すると、南アにとってはマイナスになりランド売りになる。 ②国民の不満が爆発し、デモから暴動が起きる・・・7月に起こった暴動が起きた場合はランドは売りになる。③ANCが分裂する・・・あまりにも大きな政党になったためにANCは一枚岩ではないことは事実である。もし分裂した場合は依然として前大統領支持者もいることで、国内情勢はより不安定になりランド売りになる。

 

米国債発行減で米FRBの購入縮小を相殺

3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリングが正式に表明された。一方、同日に米財務省は今後3ヵ月間(11月~22年1月)の国債発行計画を示した。2年債から30年債まで全ての年限でその前の四半期(8~10月)から発行額を減らし、総額では840億ドル減とする内容だった。バンク・オブ・アメリカの金利分析チームの予測(追加発行分は除く)では、22年2~4月にさらに1070億ドル減、同5~7月に690億ドル減と国債発行の縮小が続くという。規模的にはFRBの購入減額に概ね見合う形で国債の供給も減ることになり、需給の引き締まりが金利上昇圧力を和らげる公算が大きい。

 

今週の米国市場では、物価関連などの指標が注目される

9日にPPI(生産者物価指数)、10日にCPI(消費者物価指数)が予定されているが、米国では資源エネルギー価格の高騰のほか、供給・輸送・労働者の制約や年末商戦に向けた需要増加などにより、物価とインフレの高止まりが注目されやすい。為替相場では米債金利の上昇とドル高の要因となる。一方で米国では経済活動再開の広がりや雇用回復などで、過度な供給制約が緩和されてきた。10月の米雇用統計では賃金が上げ渋りとなっており、物価の急激な上昇ペース自体は鈍化となる可能性もある。

 

欧米市場イベント

○16:00   9月独貿易収支(予想:160億ユーロの黒字)
○16:00   9月独経常収支(予想:170億ユーロの黒字)
○16:45   9月仏貿易収支(予想:71.00億ユーロの赤字)
○16:45   9月仏経常収支
○19:00   11月独ZEW景況感指数(予想:20.0)
○19:00   11月ユーロ圏ZEW景況感指数
○21:00   10月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前年比6.17%)
○22:00   ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○22:30   10月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比0.6%/前年比8.6%)
        食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比0.5%/前年比6.8%)
○23:00   クノット・オランダ中銀総裁ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
○23:00   パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、講演
○10日00:30   ブロードベント英中銀(BOE)副総裁、議会証言
○10日01:00   ベイリーBOE総裁、シュナーベルECB専務理事、講演
○10日01:35   デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演
○10日03:00   米財務省、10年債入札
○10日03:30   カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、ディスカッションに参加
○欧州連合(EU)財務相理事会

 

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