FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:上値の重さが意識され見送り商状が強まる

前週末の米国主要三指数が終値ベースで過去最高値を更新したことも支援材料となり、日経平均株価は寄り付きは上昇して始まった。しかし、NYダウ先物が軟化したことや、上値の重さが意識されると見送り商状が強まった。中国不動産大手の中国恒大集団によるドル建て社債の利払い見送りが伝わったのも重荷となった。結局、前営業日比104円安の2万9507円と続落して終了した。

 

東京外国為替市場:113円半ばでもみ合い相場

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りに支えられ113.65円付近へ上昇した。低下していた米長期金利が持ち直したことも、ドルの買い戻しにつながった。ただ、先週末に発表された10月米雇用統計の労働参加率が期待外れの数字となり、米国の早期利上げ観測が後退しているため、積極的な上値追いは手控えられた。午後は、日経平均株価のさえない動きを眺め、小幅に値を下げて113.60円前後で取引された。NY時間に予定されている米FRB当局者の講演を前に、様子見ムードが広がった。ユーロ/ドルは、1.1560ドル前後でこう着相場となった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

米国の禁輸緩和の見直しの初期段階では日本株に資金流入

米国ではFRBが金融緩和の見直しに着手しつつあるが、初期段階では海外勢による日本株投資が支援されやすい。緩和見直しと裏表の米国景気の回復のほか、日本での日銀緩和残存と超低金利の持続、為替円安、米国発の利ざや改善などが、日本の外需関連株や金融株などにプラスとなる。過去のFRBによる利上げや量的緩和縮小の各開始前後では、対日株式投資が6カ月間のネット累計で+5兆円から+7兆円の買い越しパターンが繰り返されてきた。米緩和見直しの初期段階では、日本企業の経常利益も増益となる連動相関性がある。海外勢による日本株投資では、米FRBによる『金融緩和の見直し着手』という追い風が吹き始めた。あくまでも米利上げや量的緩和縮小の各開始前後という『初期段階』に限れば、過去に対日株式投資の増加と日経平均株価の上昇という連動相関性が観測されている。

 

中国ではスタグフレーションへの警戒感高まる

中国の10月のCPIは、8月が前年比+0.8%、9月が+0.7%と高止まりしており、エネルギー価格の高騰を背景に上昇が見込まれている。中国では、インフレ高進と景気低迷によるスタグフレーションへの警戒感が高まっており、リスク回避要因となっている。また、10日に中国恒大集団の利払いの猶予期間が終了することから、デフォルトの可能性にも警戒が必要である。

 

英国中銀も利上げには慎重姿勢

BOEは7対2で政策金利の据え置きを決定した。利上げを支持したのはラムズデンBOE副総裁とサンダースMPC委員の二人にとどまった。ベイリーBOE総裁が10月17日に『中銀はインフレ圧力を抑制するために行動する必要がある』と警鐘を鳴らしたことを受けて、市場では利上げ期待が急速に高まったが、同総裁は今回の会合では利上げを支持せず、一連の利上げで来年のうちに政策金利が1%に達するとの市場の見方に対し、『急激に利上げを行えばインフレ率が目標の2%を下回る可能性がある』と警告した。BOEはインフレ率を目標水準に保つために『今後数カ月内』の利上げが必要だとの見解を示し、12月にも利上げに踏み切る可能性は残されている。ただ、英国はEU離脱の影響もあり、供給制約の影響を他の経済よりも受けやすい。コロナ感染再拡大のリスクも景気の先行きへの不透明感を高めており、過度に利上げを織り込むのは禁物である。

 

トルコ経済は回復力を強まている:格付け会社フィッチ・レーティング

先週3日発表された同国の10月消費者物価指数(CPI)は、前年比が5カ月連続で上昇し2019年1月以来の水準を記録した。鈍化が期待されていた同月生産者物価指数(PPI、前年比)も加速している。一方、トルコ中銀が金融政策の決定材料としたコア・インフレ率は前年比16%後半で僅かながらも低下した。金融政策委員会(MPC)が来週18日に3会合連続で政策金利を引き下げることができる理由を作った。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、『トルコ金融政策への信頼性欠如』を原因とした投資家のトルコ離れを指摘している。まだ暫くは投機筋のショートカバー以外に、リラが反発力を強めることは見込めなさそうである。 ただ、トルコの経済成長を期待する向きがいるのも確かである。格付け会社フィッチ・レーティングスのアナリストは先週末、様々なショックにもかかわらず同国経済は回復力を強めていると述べた。 フィッチは、『強い内需、生産力の力強い拡大、外需増』によりトルコ2021年成長率は9.2%増と予測している。反動で22年は3.5%増まで落ち着くが、23年は4.5%増まで拡大するとも予想している。また好調なトルコ観光業により同国経常赤字の対GDP比は21年には3%まで低下し、来年には2.3%まで縮小すると見ている。

 

南アランドの買い材料と売り材料

南アランドは、売りと買いの材料が拮抗し、不安定な動きとなりそうである。ランド売りの要因としては、先週の地方選で与党・アフリカ民族会議(ANC)の獲得票数が大幅に減少したことである。選挙結果を受けて、今後ラマポーザ南ア大統領が与党内での政権争いに巻き込まれる危険性や、国民の不満が再びデモ・暴動につながる可能性も否定できない。買い要因としては、コモディティ価格が大きく崩れるような地合いではなく、資源国通貨としてのランドには支えとなりそうである。今週注目されるのは、11日に発表される中期予算発表(MTBPS)である。中期予算では、今後3年間にわたる政府の優先事項が示されます。国内総生産(GDP)に対する財政赤字の予想やインフラ投資など、様々な分野について発表される予定である。

 

メキシコではインフレ指標と中銀政策金利の発表が注目点


今週はメキシコ指標の中で重要視される最新のインフレ指標が明日9日、メキシコ中銀の政策金利の発表が11日(日本時間では12日)に予定されている。10消費者物価指数(CPI)については、現時点での市場予想では前年比+6.20%手前まで上昇するとの予想が大半で、予想通りとなれば2017年12月以来の高水準を記録することになる。原油高や深刻化するエネルギー価格の高騰が背景にあり、中銀の月次アナリストレポートでは年末に+6.60%まで予想が引き上げられるなど、さらなるインフレ高進が予想されているため、中銀の利上げ期待は自ずと高まる。政策金利については今のところ0.25%の4会合連続利上げが見込まれており、市場では12月16日に行われる年内最後の金融政策決定会合でも利上げを期待する声が聞かれるなど、金利先高期待が先行している状況となっており、声明文での文言に注目が集まりそうである。また、メンバーで唯一利上げに反対し続けているエスキバル委員が賛成に回るかどうかも確認したいところである。

 

今週は米国の物価指標に注目集まる

今週は10月生産者物価指数(PPI)や10月消費者物価指数(CPI)など重要インフレ指標に注目が集まる。サプライチェーンの混乱や供給ひっ迫によるエネルギー価格上昇が世界的なインフレに繋がっている。賃貸の上昇も顕著で、10月消費者物価指数(CPI)は前年比で1990年以降31年ぶりの大幅な伸びが予想されている。FRBがインフレ指標として注視しているエネルギーや食品を除いたコアCPIも伸びが拡大する見込み。今後はパウエル議長が言及したとおり、来年の第2、第3四半期までにインフレが弱まるかどうかを睨む展開となる。

 

欧米市場イベント

○15:45   10月スイス失業率(季節調整前、予想:2.6%)
○22:10   レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼主任エコノミスト、講演
○23:00   クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長、講演
○9日00:30   パウエルFRB議長、あいさつ
○9日02:00   ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
○9日02:00   ボウマンFRB理事、講演
○9日03:00   米財務省、3年債入札
○9日03:50   エバンズ米シカゴ連銀総裁、講演
○ユーロ圏財務相会合
○米国は7日から冬時間に移行済み

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