FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:ハイテク株中心に売りが優勢

週末にテーパリング(量的緩和の縮小)を近く開始すべきだと述べたパウエル米FRB議長の発言を受け、投資家が慎重姿勢を強めた。また、米ハイテク株安の流れを受けて朝方に安く始まった後も、安値圏でのもみ合いが続いた。参院静岡補選での自民候補敗北を受け、31日投開票の衆院選に向けて模様眺めが強まりそうだとの見方も出ていた。結局、前営業日比204円安の2万8600円と反落して終了した。

 

東京外国為替市場:113円台後半では上値の重い展開

ドル/円は、本邦輸入勢などのドル買い・円売りに支えられ、113.80円台まで上昇した。低下していた米長期金利が持ち直したことも、ドルの買い戻しにつながった。ただ、22日のNY市場でつけた高値113.91円付近に接近すると上げは一服した。その後は、利益確定や戻り待ちのドル売り・円買いも見られ、113.75円付近へ緩んだ。午後は、日経平均株価や米長期金利を睨みながら、小幅に値を下げて113.60円前後で方向感に乏しい値動きが続いた。今週開催される日銀金融政策決定会合やECB理事会を控え、積極的な売り買いは目立たなかった。ユーロ/ドルは、原油先物価格の上昇を眺めた資源国通貨高・ドル安が波及し、1.1665ドル付近へ上昇する場面もった。

 

投機筋の円売りポジションがおよそ2年10ヵ月ぶりの水準

米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した円の投機ポジションは19日時点で10万2734枚の売り越しとなった。売り越しは枚数が10万枚を超えるのは2018年12月以来およそ2年10ヵ月ぶりになる。資源価格の上昇、供給制約、経済活動の回復を受けたインフレ圧力の高止まりが続いており、米金利の先高感で市場参加者の投機ポジションがドル買い円売りに傾いている。原油や銅など非鉄金属の需要増加などによる実需のドル買いも見込まれることから、円の先安感は当面続く。もっとも、投機筋の円投機ポジションは過去5年では17年11月の13万5999枚、18年19月の11万5201枚売り越しを底としてその後ポジションの整理が進んだ経緯もある。足元のドル/円レートは9月の109円台から1ヵ月で約4円と大きく動いた経緯もあり、反動による円高の動きには留意したい。

 

タカ派のワイトマン独連銀総裁の辞任表明

ドイツ連邦銀行は10月20日、ワイトマン総裁が12月31日付で、『個人的な理由』で退任すると発表した。ワイトマン総裁は欧州中央銀行(ECB)理事会で最もタカ派的なメンバーのひとりであり、ECBの緩和政策に批判的で、『ドクター・ノー』と言われていた。辞任の声明では、『10年以上総裁を務め、心機一転を図ることが連銀にとっても自分にとっても好ましいとの結論に至った。物価が急激に上昇するリスクを見過ごすべきでない。デフレリスクだけに注目するのではなく、将来的なインフレの危険性も見失わないことが重要だ』と述べた。しかし、スタッフに宛てた手紙には、ヨーロッパやドイツでのインフレ高進の中で、金融緩和措置に執着する欧州中央銀行(ECB)理事会に対するフラストレーションが綴られていた。そして、ハト派的な社会民主党(SPD)のショルツ氏が率いるドイツの新政権の中に、タカ派の居場所が見つからなかったのかもしれない。

 

トルコ中銀は次のMPCでも利下げ予想:米JPモルガン

 

先週21日にトルコ中銀・金融政策委員会(MPC)が決定した大幅利下げの影響が、どの程度まで続くかを見極めながらの取引となる。市場を驚かせた政策金利18%から16%への引き下げ発表後には、下値めどと見られていた昨年11月安値12.04円をあっさり下回り、11円後半で下げ幅を広げている。政治圧力に完全に屈したトルコの金融当局に対し、市場関係者は厳しい見方をしている。格付け会社フィッチ・レーティングスは『利下げは不確実性を高める失策』とし、『トルコ中銀がリラを防衛する余地はほとんどない』との見解も示した。そのトルコ中銀は声明で『供給面の一過性の要因により、年末までの政策金利の引き下げ余地は限られている』とのフォワードガイダンスを示した。ただ、欧米の主要金融機関は緩和ペースはそれほど鈍らないとみており、米JPモルガンなどは次回も100ベーシスポイントの利下げが実施されると予想している。経済指標では今週は、28日にトルコ中銀が四半期インフレレポートを発表する予定である。前回7月には年末インフレ予測を従来の12.2%から14.1%に上方修正した。インフレ高の要因を一過性とし、政策金利を2カ月で合計300ベーシスポイントに引き下げた後で、中銀がどのような物価見通しを示すのかが注目される。

 

南アフリカではスタグフレーションに陥る可能性に注意

ヨハネスブルグ証券取引所(JSE)の8日付のデータによると、この1年間で非居住者の南ア債の購入は219億ランド増加している。南アの10年債利回りは9%台という高水準で推移しており、依然として海外投資家の債券購入意欲が強いことも、ZAR買いと要因となっている。ただし、中長期的にはネガティブ要素は多い。今週発表された9月消費者物価指数(CPI)は市場予想通りとは言え+5.0%まで上昇した。5カ月連続で南ア準備銀行(SARB)の目標中心値の4.5%を上回った。特に原油高騰の影響で、国内のガソリン価格は昨年9月の1リットル15.18ランドが、先月は過去最高となる18.34ランドまで上がっている。これにより輸送コストも10.1%上昇するなどインフレが進んでいる。中長期的には、インフレ下の経済停滞といったスタグフレーションに陥る可能性にも注意しておきたい。

 

29日発表のメキシコの7-9月期GDP速報値に注目:半導体不足の影響

前週末に公表された10月前半の消費者物価指数は前年比6.12%の上昇となり、依然としてメキシコ銀行(中央銀行)のインフレ目標(3.0%±1.0%)上限を大きく上回る状況が続いている。米国ではテーパリングの11月開始が決定的となるなか、今度は利上げ開始時期を巡って市場が神経質となっているが、メキシコ中銀の追加利上げ期待が高まっていることは今後もペソ相場のアドバンテージとなる。一方、今週は29日に公表予定の7-9月期メキシコGDP速報値に注意が必要となる。市場予想は前年同期比で6.2%増とコロナ禍の昨年からは回復する見込みだが、足もとでは世界的な半導体不足によってメキシコの主要産業である自動車生産工場が次々に稼働停止に追い込まれているため、その影響を見極めたい。

 

米国市場では29日の9月の個人消費支出(PCE)価格指数に注目

米国経済指標では、9月の個人消費支出(PCE)価格指数に注目している。原油価格の高騰を受けて、インフレ高進が『一時的』ではなく『持続的』となりつつある中、11月2-3日のFOMCでは、テーパリング開始が決定され、11月から12月にかけて着手される可能性が高まりつつある。ただ、FOMCに関しては、ローゼングレン米ボストン連銀総裁とカプラン米ダラス連銀総裁が倫理規定違反で辞任した後、クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長とパウエルFRB議長も、重大発表前の個人的な金融取引が発覚した。バイデン米政権や米議会、そして市場からの信頼を失いかけている。正副FRB議長人事に関する報道にも注意が必要である。

 

欧米市場のイベント

○17:00   10月独Ifo企業景況感指数(予想:98.0)
○20:00   9月メキシコ失業率(季節調整前)
○22:00   テンレイロ英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

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