FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:中間決算期末を控えて配当権利取りが下支え

前週末の急な上昇に対して警戒感が生じているものの、月末が接近し配当権利取りが活発化していることが株価の下支え要因となった。物色面では、米金利上昇を受けて銀行株が買われたほか、新型コロナウイルス感染者数が減少していることからリオープン(経済再開)関連銘柄が人気化した。騰落レシオは120%以上に達すると過熱していると判断されるが、現時点で140%を超えており、テクニカル面では上値を追いにくいとの指摘もある。結局、前営業日比8円安の3万0240円小幅に反落して終了した。9月第3週では、海外投資家は3週ぶりに500億円の売り越しとななった。

 

東京外国為替市場:心理的な節目となり109.50円を意識した展開

ドル/円は、中国不動産大手の債務問題を巡る根強い懸念から、利益確定や持ち高調整のドル売り・円買いが入り、110.60円付近まで下落した。米長期金利が小幅に低下したことも、ドルの押し下げ要因となった。午後に入ってもこの流れは続き、一時110.54円付近まで下落した。ただ、心理的節目の109.50円に接近すると下げは一服した。その後は、NY時間に予定されているFRB当局者の講演や米2年債・米5年債の入札を控えて様子見ムードが広がり、110.60円を挟んで方向感に乏しい伊値動きとなった。ユーロ/ドルは、1.1720ドル前後でこう着相場が続いた。欧州勢待ちの様相となっている。

 

引き続き中国恒大集団関連のヘッドラインに注目

相場全体としては、引き続き中国恒大集団関連のヘッドラインに注目が集まる。中国政府の出方に焦点が集まっているが、政府が直接支援を提供する可能性は低く、恒大が経営破綻を回避するのは極めて厳しい状況である。10月1日の国慶節前に政府が恒大問題で何らかの決断を下すとの報道もあるが、同社が経営破綻に追い込まれれば、問題が山積みの不動産業界に第2、第3の恒大が表面化し、異常なほど長く続いている中国の不動産バブルの崩壊につながる懸念はある。ただ、中国と米国の金融システムは大きく異なっていることや、中国政府の強力な政治的影響力を鑑みると、大規模な金融危機は回避されると見込まれている。リーマンショックのような世界的な金融危機が起きる可能性は小さいとみる向きが大勢を占めている。

 

中国恒大集団の債務危機の二次的な悪影響に注意:JPモルガン・チェース

米金融大手JPモルガン・チェースは中国不動産大手、中国恒大集団の債務危機で、英金融大手のHSBCホールディングスとスタンダード・チャータード(スタンチャート)銀行に余波が及び、損失を被る恐れがあるとの調査リポートを公表した。
他の金融機関や保険会社も、手数料収入の減少や投資対象の評価損といった間接的影響を受ける可能性があるという。リポートでは、HSBCとスタンチャートは中国や香港で大きな利益を上げており、不動産開発業者向けシンジゲートローンの引き受けでも、外資系の中で最も深く関与してきたと指摘した。このため、二次的な悪影響が直ちに及ぶ公算が大きいと分析した。一方、HSBCとスタンチャートは、恒大関連で保有する直接的なリスク資産は限定的だと説明している。同リポートについてコメントは控えるとした。

 

トルコ中銀による予想外の利下げはリラにとってネガティブサプライズ

トルコ中銀は23日の金融政策決定会合で、主要政策金利である1週間レポレートを19%から18%に引き下げた。市場コンセンサスは『緩和協議は始まるだろうが、金利は据え置き』であり、利下げ決定は多くの参加者を驚かせた。エルドアン・トルコ大統領による金利引き下げ圧力に屈したとも捉えられ、中銀の独立性に対する不信感を高めることにもなった。中銀は声明で『インフレ上昇は一時的である』との認識を示し、金融引き締めによる国内需要や信用が抑制され、銀行融資にも悪影響が出始めているとの懸念を明らかにした。(前月に鈍化した)コア・インフレ率を政策変更の材料としたことも言及された。一方、『政策金利はインフレ率を上回る水準で決められる』とのフォワードガイダンスは削除された。トルコの金融政策変更を受けて、米大手投資銀行のゴールドマン・サックスは、トルコの政策金利は11,12月会合で50ベーシスポイント(bp)ずつ引き下げられると予想した。またその後は毎月25bpの利下げが実施され、22年半ばまでには15%になるとの新たな予測を発表した。

 

メキシコのインフレ再度加速で利上げ期待

9月前半の消費者物価指数(CPI)が前年比5.87%となり、8月後半の5.60%からインフレが加速している傾向が見られたこともペソ買いを誘った面があった。メキシコのインフレが再度加速する気配を見せていることで、市場ではメキシコ銀行(中央銀行)の追加利上げ期待が高まりつつある。

 

南アランドはスタグフレーションに陥る可能性も

中国恒大集団のデフォルトが避けられた場合でも、中国経済の停滞を予測する声も多く、コモディティ価格がこれまでのように大きく上げトレンドに戻るのは難しそうである。また、南ア準備銀行(SARB)の金融政策の舵取りが難しくなっていることもZARも重石になる。今週発表された消費者物価指数(CPI)が4カ月連続でSARBの目標中心値を上回り、インフレ懸念が燻っている。しかしながら、失業率が過去最高、小売売上高が低迷していることで利上げをするのも難しく、スタグフレーションに陥る可能性もある。なお、来週は南アからは30日に8月の生産者物価指数(PPI)と貿易収支が発表される。

 

メキシコ大統領のリチウム事業の法案に期待

欧州連合(EU)が2035年にガソリン新車販売を禁止するなど、世界各国で二酸化炭素排出削減への歩みが進む中で、電気自動車の需要は一段と高まっている。その電気自動車のバッテリーとして必要となるのがリチウムである。メキシコには大量のリチウムが埋蔵されている可能性があるとの研究データが出ているが、実際にはリチウムの採掘にはコストが高く、高度な技術が必要になることから採算が合わないとして採掘事業は進んでいない状況である。今年の6月には与党・国家再生運動(MORENA)の有力議員がリチウム生産の国有化を目指して断念したことが記憶に新しいが、外資や民間企業の参入を待っている。ロペスオブラドール大統領は近日中にもリチウム市場の規制を整備する法案を提出する見通しであり、『民間投資が必要になる。われわれは、われわれを尊重する国内投資家、外国人投資家の味方だ』とかなり友好的な姿勢を示している。

 

米国の暫定予算法案が可決されるか注目

米民主党は連邦債務上限を2022年12月まで凍結し、9月末での政府機関閉鎖を回避するための暫定予算の法案の採決を目論んでいる。米財務省はデフォルトを回避するための特例措置が10月中に尽きる可能性を警告しており、債務上限の凍結が急務となっている。しかしながら、共和党は現状、上院で債務上限凍結の法案を阻止する方針を表明している。27日の米下院でのインフラ投資法案の採決に注目が集まる。暫定予算法案が可決されれば、大半の連邦政府機関の閉鎖が回避され、12月3日まで業務が続けられることになるが、採決が難航した場合、政府機関が閉鎖に追い込まれることになる。

 

欧米市場イベント

○17:00   8月ユーロ圏マネーサプライM3(予想:前年比7.8%)
○20:00   8月メキシコ貿易収支(予想:26.00億ドルの赤字)
○20:45   ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、欧州連合(EU)議会に出席
○21:00   エバンズ米シカゴ連銀総裁、講演
○21:30   8月米耐久財受注額額(予想:前月比0.6%/輸送用機器を除く前月比0.5%)
○22:00   ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、あいさつ
○24:00   ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
○24:00   パネッタECB専務理事、講演
○28日00:30   米財務省、2年債入札
○28日01:30   デコス・スペイン中銀総裁、講演
○28日01:50   ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○28日02:00   米財務省、5年債入札

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