FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:経済政策のテコ入れ期待から買い優勢

前週末の米国株高の流れを引き継いで高く始まった後も堅調に推移した。そして、上海株や香港株が堅調推移となったことで一段と上げ幅を拡大した。横浜市長選では菅首相の推す候補が敗北したことで、政局の不透明感とともに、政策期待も高まりやすいとの声がでていた。市場では『政権支持率低下を挽回するため、経済政策のテコ入れが期待される』との見方も広がった。日本株が前週に大きく下落したこともあって、幅広い銘柄に自立反発狙いの買いも入った。結局、前営業日比480円高の2万7494円と3営業日ぶりに大幅反発して終了した。

 

東京外国為替市場:110.00円の上値の重石が意識された

ドル/円は、本邦輸入勢のドル買い・円売りや米長期金利上昇に支えられ、109.93円まで上昇した。日経平均株価の大幅高もリスク選好の円売りを誘った。ただ、心理的節目の110.00円に接近すると、利益確定や戻り待ちのドル売り・円買いも見られ109.80円台へ緩んだ。午後は、日経平均株価の上げ幅拡大やアジア株高を眺めたドル買い・円売りが入り、109.95円付近へじり高となった。原油先物相場の反発を好感した資源国通貨高・円安が波及した。ユーロ/ドルは1.17ドル台前半で小動きとなった。欧米市場待ちの様相となっている。

 

FX概況:ドル買い比率62.7%に低下

QUICKが23日算出した前週末20日時点の店頭の外国為替証拠金(FX)6社合計の建玉状況によると、円に対するドル買い比率は前の週末から1.6ポイント低い62.7%だった。円相場が下落する場面で、相場の流れに逆らう『逆張り』の傾向がある個人投資家は円買い・ドル売りに持ち高を傾ける動きがやや多かった。前週は円相場が一時110円台まで下落した。18日公表された7月開催分の米FOMC議事要旨を受け、量的金融緩和の縮小が早まるとの観測が強まり、円相場を下押しした。市場では『円安が進んだ場面で、個人による利益確定目的の円買い・ドル売りも入った』との声が聞かれた。

他の通貨ペアでは円を売って、外貨を買う動きが目立った。円に対するユーロ買い比率は39.3%と3.5ポイント上昇した。オーストラリアドル買い比率は3.5ポイント高い78.3%、ポンド買い比率は9.4ポイント上昇の59.7%となった。

 

欧米の政治状況に影響を与える可能性には注意:アフガン情勢

アフガニスタンの政権が事実上崩壊し、タリバンが15日に首都カブールを制圧し、国を統治することになったことで地政学リスクが警戒されている。野村証券は23日付の利リポートで『金融市場への影響は限定的で、軍事的緊張を理由に市場でリスク回避の動きが進む可能性は低い』と指摘した。リポートでは、隣国のパキスタンに関してアフガニスタンからの難民流入やイスラム過激派への対応など、カントリーリスクが高まる可能性があるとしつつ、『アフガニスタンの経済規模は小さく、原油や天然ガスなど主要な天然資源の産出国ではない。アフガニスタンは内陸国であり、海上輸送ルートが阻害されるリスクも低い』と指摘した。その一方で、中国とロシアがタリバンとの関係構築の移行を示していることから中露の影響力拡大も警戒されるが『両国がアフガニスタンに深入りし、金融市場が警戒する展開も考え難い。歴史的経緯から、むしろタリバン側が警戒する可能性が高い』とも指摘した。ただ一方で、『欧米の政治状況に影響を与える可能性には注意』と指摘。特に、ドイツでは、与党キリスト教民主同盟(CDU)が夏の洪水の対応を巡って批判を受けたこともあり、優位性が揺らぐなど混戦状態にあることを踏まえつつ、難民問題の再燃などで欧米への影響に関心を寄せていた。

 

欧州市場では8月マークイットユーロ圏製造業PMIが公表:予想は61.5

7月実績は、62.8だった。6月実績を下回ったが、高水準を維持している。8月については、ユーロ圏の製造業は7-9月期に多少減速するとの見方が多いこと、製造業とそのサプライヤーが需要に応じてなかなか生産を拡大できず、価格上昇につながっていることから、7月実績に届かない可能性がある。

 

UAEとの歩みよりやタリバンとの仲介役期待がトルコリラの支え

トルコリラの支えとなりそうなのが、トルコとアラブ首長国連邦(UAE)の歩み寄りである。何かと敵対することが多かった両国だが、先週はUAEの国家安全保障顧問がエルドアン大統領を訪問した。その後に大統領は、UAEが非常に多額のトルコ投資を計画しており、近いうちに投資が実行されると述べた。有数な産油国であるUAEの資金がトルコに本当に向かえば、その他の外国人投資家のトルコ回帰もあり得る。また、先週、急速に緊迫化したアフガニスタン情勢も注意する必要がある。同国を掌握したイスラム原理主義勢力・タリバンとトルコは対話ルートを持っており、今後は欧米とタリバンとの仲介役が期待される。地域平和に貢献できるようであれば、国際社会のトルコ信頼度も高まることが予想される。また、今後は増加が懸念されるアフガン難民について、トルコと欧州の駆け引きも注目点となる。

 

南アでは失業率悪化でも利下げへの期待感は高まりにくい

先週、クガニャゴ南ア準備銀行(SARB)総裁は『SARBは物価の安定と最大の雇用を追求するという二重の使命を持っていると思っている人たちがいるが、持続可能な雇用を生み出すのは低金利や多くのお金を印刷することではないことを認識する必要がある』と述べている。これは雇用についてSARBに責任がないということではなく、構造改革などの根本的な改革がない状況で、SARBの金融政策だけでは雇用を増やすことは出来ないことを表明している。そのため、26日発表の4-6月期の失業率が悪化した場合も、利下げへの期待感は高まりにくい。

 

週末のパウエルFRB議長講演のタカ派・ハト派シナリオ

ドル円は底堅い展開か。米国の雇用情勢の改善や物価指数の高止まりを受けて、26-28日のジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が2022年2月の任期満了前のテーパリング(資産購入の段階的縮小)開始を表明する可能性に注意したい。タカ派的なシナリオは、パウエルFRB議長がテーパリング開始を表明し、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始時期が協議され、年内の開始が表明される場合となる。ハト派的なシナリオは、昨年12月のFOMC声明文から明記されている『最大限の雇用と物価安定に向けて一段と顕著な進展(substantial further progress)があるまで債券購入を継続する』ことを重視し、パウエルFRB議長がテーパリングに言及しない場合となる。

 

米国ではスタグフレーションリスクに晒される可能性も

『米国では有権者の物価上昇への懸念の高まりが世論調査で示され、野党・共和党はインフレ高進をバイデン大統領の社会保障拡充案とインフラ整備計画を阻止する材料にしようとしている』、『米国でインフレが政治問題化することは過去40年間ほとんどなかったが、バイデン米大統領の新たな取り組みは、2022年の中間選挙を前に物価上昇が与党・民主党にとって急所になりかねない状況を反映している』。その中にあって現状段階から米国でドル安が進むと、輸入物価を中心に一段のインフレ押し上げにつながってしまう。悪い物価上昇と景気打撃(スタグフレーション)のリスクを高めることになる。バイデン大統領の一段の支持率低下や、来秋中間選挙に向けて共和党やトランプ前大統領の勢い増長につながる要因となる。その意味で目先の米国では、悪い物価上昇と内需打撃などによる『悪いドル安』の圧力が注視される一方で、『政治的・政策的なドルの安定配慮』の高まりが焦点となる。

 

欧米市場イベント

○16:15   8月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:57.2)
○16:15   8月仏サービス部門PMI速報値(予想:56.3)
○16:30   8月独製造業PMI速報値(予想:65.0)
○16:30   8月独サービス部門PMI速報値(予想:61.0)
○17:00   8月ユーロ圏製造業PMI速報値(予想:62.0)
○17:00   8月ユーロ圏サービス部門PMI速報値(予想:59.5)
○17:30   8月英製造業PMI速報値(予想:59.5)
○17:30   8月英サービス部門PMI速報値(予想:59.1)
○22:45   8月米製造業PMI速報値(予想:62.8)
○22:45   8月米サービス部門PMI速報値(予想:59.4)
○22:45   8月米総合PMI速報値(予想:58.3)
○23:00   8月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲5.0)
○23:00   7月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲0.5%/年率換算583万件)

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