FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:懸念材料が重なったほかアジア株の下げも嫌気

寄り付前に内閣府が発表した2021年4-6月期実質国内総生産(GDP)1次速報は前期比0.3%増、年率換算で1.3%のプラス成長となるなど好材料があった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大、アフガン情勢による地政学リスクの浮上、円高に対する警戒感、大雨の景気への影響など懸念材料が重なり、全体的に売りが優勢になった。また、台湾や本校などアジア株の下げもあって、幅広い銘柄に売りが出た。結局、前営業日比453円安の2万7523円と3日続落となり、7月30日以来約半月ぶりの安値となった。

 

東京外国為替市場:リスク回避の円買いが優勢

ドル/円は、日経平均株価の大幅安や米長期金利低下を背景にドル売り・円買いが進み、一時109.33円付近まで下落した。中国国家統計局が発表した7月の鉱工業生産と小売売上高が、共に予想を大きく下回ったこともリスク回避の円買いを誘った。しかし、今晩の欧米株価動向や米経済指標を見極めたいとの雰囲気もあり、下げは一服した。その後は、値ごろ感からドルを買い戻す動きが見られ、109.40円近辺まで戻した。午後は、日経平均株価やアジア主要株価を睨みながら、109.40円台でもみ合い相場となった。ユーロ/ドルは、1.1790ドルを挟んで方向感を欠く展開になった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

前週のFX概況:ドル買い比率は逆張りで上昇

QUICKが16日に算出した13日時点の店頭のFX6社合計(週間)の建玉状況によると、円に対するドル買い比率は前の週末から6.0ポイント上昇の64.3%だった。米FRBの緩和的な金融政策が長引くとの見方から円相場が強含んだ場面で、円売り・ドル買いに持ち高を傾ける個人投資家が多かった。前週の円相場は米雇用情勢の改善を受けて一時1ドル=110円台後半まで売られたが、13日発表の8月の米消費者態度指数の大幅な低下でFRBが量的金融緩和の縮小を急がないとの観測が盛り返した。円は109円台半ばまで上昇している。市場では『ドルを安く買いたいと考えていた個人投資家による円売り・ドル買いが週末に一気に出た』との声もあった。

 

中国7月経済指標は軒並み予想下回る:8月は一段の悪化も

中国国家統計局が16日発表した7月の主よな経済統計は、軒並み市場予想を下回る低調な結果となった。河南省での洪水や7月下旬以降の新型コロナウイルスの感染再拡大が経済活動の重荷となった。インド型(デルタ型)の変異ウイルスの感染は8月に入ってからも広がり続けており、市場は先行きへの警戒感を強めた。世界的な半導体不足や商品価格の高騰を背景に、自動車や鉄鋼業は前年比でマイナスに転じた。中国経済をけん引してきた輸出にも陰りが見られる。ワクチン接種のふきで防疫関連品の輸出が減ったほか、物流網の乱れなども影響した。

 

トルコ中銀の政策会合の通過とフィッチの格付けは変更なし

トルコ中銀は12日、予想通り5会合連続となる『政策金利を19%で据え置き』を決定した。中銀は声明で『インフレレポートの予測に沿った大幅な物価低下が達成されるまで、現在の引き締め的な金融政策スタンスを断固として維持する』とタカ派スタンスを再表明した。一部では、利下げを望むエルドアン大統領の意向を汲んだ内容となるのではないかという警戒感もあった。フィッチは先週末、トルコ格付け『BB-』の維持を確認し、見通しを『安定的』で維持した。トルコの金融政策の信頼性の低さ、高いインフレ率、国内情勢の不確実性、地政学リスクなどが同国格付けの低さを反映しているとフィッチは述べた。ただし、21年の成長予測は前回6.3%から7.9%に上方修正した。

 

南アでは7月暴動以来早期利上げ観測は後退

財政再建に積極的に取り組み、海外からの評価が高かったムボウェニ南ア前財務相が、内閣改造で退任。ゴドンワナ新財務相への評価が不透明ななかで、ランド/円は上値が限られそうである。経済指標では、18日の7月消費者物価指数(CPI)と小売売上高が発表予定。CPIは上昇傾向にあるが、7月の暴動以来、南アの早期利上げ観測が後退している。今回の結果に対する動意は薄そうである。なお、南ア準備銀行(SARB)の金融政策委員会(MPC)は8月は行われず、次回は9月23日の予定になっている。

 

メキシコ中銀は次回会合では利上げ効果を見極めるとの思惑も

先週、メキシコ中銀は市場の予想通り0.25%の利上げを発表し、声明では金利の見通しとして、メキシコ中銀目標の3%前後に収束する時期を後ずれさせるなど内容としてはタカ派的とも見えた。ただ、利上げが全会一致ではなく3対2で拮抗していたことが今後の利上げ期待をやや後退させている。声明文の後半に表現されている今後の金融政策の運営については、従来の『インフレが持続的に3%目標に収束するよう、今後の情報に基づいて必要な措置を講じる』から『次回会合のために、インフレや予測軌道、期待などに影響する要因を改めて評価する』に変更したことで、次回会合ではいったん政策金利の引き上げを見送って、利上げの効果を見極めるのではとの思惑も浮上している。

 

米8月ミシガン大学消費者信頼感指数は予想外の大幅低下

米8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は70.2と、7月81.2から予想外に大幅低下した。11年12月以降ほぼ10年ぶり低水準に落ち込んだ。昨年のパンデミック発生時よりも低い水準となった。現在景況感は77.9と、7月84.5から予想以上に低下し昨年パンデミックにより経済が封鎖した昨年4月来で最低となった。消費者先行景況感は65.2と、7月84.5から低下し、2013年10月以降8年ぶりで最低となった。新型コロナ・デルタ株流行やインフレへの警戒感で消費者信頼感が悪化した可能性がある。また、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ期待指数として注目している同指数の1年期待インフレ率速報値は4.6%と、7月4.7%から低下した。一方で、5-10年期待インフレ率速報値は3.0%と、7月2.8%から上昇し、5月来で最高となった。

 

米利上げなし想定のポジション急増:テールリスクに備えるポジション

世界的な景気回復を巡る楽観を背景に米国債利回りは上昇しているが、ユーロ/ドルオプション市場では米FRBが全く利上げをしないと見込むポジションが積み上がってきた。トレーダーらは、2025年3月の3カ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が0.5%未満と見込むユーロドル・コールオプションを買い急いでいる。事実上の米ゼロ金利がそれまで維持された場合に利益が出るポジションになっている。米利上げが全くない極端なシナリオが実現するテールリスクに備えるヘッジ目的のこのポジションは、過去1週間に積み上がった。

 

欧米市場のイベント

○15:30   7月インド卸売物価指数(WPI、予想:前年比11.30%)
○21:30   6月カナダ卸売売上高(予想:前月比▲2.0%)
○21:30   6月カナダ製造業出荷(予想:前月比2.5%)
○21:30   8月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:29.0)
○17日05:00   6月対米証券投資動向

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