FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:下値は堅いが上値も重い展開

米国株安を受けて朝方に安く始まった後は、前日の終値を挟んだもみ合いとなり、方向感を欠いた。前日の米国株式市場では、4月の米FOMC議事要旨の内容が嫌気される形で下落した。また、暗号資産(仮想通貨)のビットコインやイーサが急落したこともリスク回避ムードを高めた。ただ、米国株の主要3指数の下げは大きくなく、日本株への影響は限定的となった。ただし、高くなったところでは戻り売りに押されて失速した。その後は下値は堅いが上値も重いという状況が続いた。結局、前営業日比53円高の2万8098円と小幅反発して終了した。5月第2週の海外投資家は、3週間ぶりに4214億円の売り越しとなった。

 

東京外国為替市場:米長期金利の動向を睨みながら神経質な動き

ドル/円は、米長期金利低下を眺めたドル売り・円買いに押され、109.10円付近へ軟化した。ビッドコインなどの暗号資産の急落で、リスク許容度が低下していることも円買いを誘った。ただ、一時200円を超える下げ幅を記録していた日経平均株価が持ち直したこともあり、下値を追う動きは限られた。午後は、日経平均株価や米長期金利の動向を睨みながら、109.15円でもみ合いが続いた。前日に公表された米FOMC議事要旨がサプライズとなり、FRBが想定よりも早期に量的緩和の縮小に動くとの見方が広がっている。ユーロ/ドルは、1.2180ドル前後で小動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

本邦製造業DIは18年12月以来の高水準

5月ロイター短観では、製造業DIが前月比8ポイント改善のプラス21、非製造業が5ポイント改善のプラス2となった。製造業は2018年12月以来の高水準。世界経済の回復や市況改善を追い風に化学製品のDIは調査開始以来の最高を更新した。非製造業は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出始める直前の20年2月以来のプラス圏。ただ、非製造業の回答企業からはコロナの影響を懸念する声が値強い。

 

イスラエル・パレスチナ交戦を巡る米・トルコ関係悪化懸念

リラを買い難くさせているのが、イスラエル・パレスチナ交戦を巡る米・トルコ関係悪化への懸念である。パレスチナを支援するエルドアン・トルコ大統領はイスラエルを『テロ国家』と呼び、その後も激しく非難し続けている。これに対し米国務省報道官が18日、『エルドアン大統領の最近の発言は反ユダヤ主義だ』と強く批判し、両国の溝の広がりが顕著となっている。バイデン米政権が成立して4カ月が経ったが、トルコは依然として米政権との関係構築を模索しているところである。来月に対面では初の米トルコ首脳会談が予定されており、両国関係の改善を期待する声も上がっているが、このままでは逆に物別れに終わる可能性もでてきてしまう。

 

南アの金融政策金利の発表:金利は据え置きの予想

市場の注目は南ア準備銀行(SARB)の金融政策委員会(MPC)になります。南アの消費者物価指数(CPI)は市場予想より上振れていることで、SARBのインフレ警戒による利上げ論が出てくる要因となっている。今回のCPIの上昇は主に原油価格の上昇に連れた輸送費の高騰(+10.6%)が一つ、もう一つが食品価格が前年比+6.3%となり、45カ月ぶりの数値を記録したことが要因である。その一方で、3月の小売売上高は2月にロックダウンが緩和されたこともあり、市場ではプラス転になると思われていたが、ふたを開けるとマイナスとなっている。市場が懸念する、高インフレ下の経済の停滞が現実的になってきている。本日のSARBのMPCは、ほぼすべての予想が政策金利の変更はなしとなっている。上述の政策金利の上下両要因があるが、市場は若干ながら政策金利より高いインフレ率への懸念をしめすエコノミストが増えていることで、SARBがどのような見解を示すかが注目される。

 

初の米・メキシコ・カナダ協定は無難に終了

17-18日に行われた米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を巡る初の3国会合が終了し、気候変動への取り組みや強制労働で製造された製品の輸入取り締まりでお互い協力することを確認した。労働分野の紛争解決メカニズムに関しては、メキシコと米国で大きな見解の相違はあるが、今回はこの件に踏み込んだ議論はなかったものと思われる。

 

4月FOMCで緩和縮小協議への思惑強まる

連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(4月27-28日会合分)を発表した。その中で、メンバーのほとんどが依然、インフレを一時的と見ており、圧力を懸念していないことが明らかになった。4月会合は、4月の雇用統計やインフレ指標発表される前に開催されている。FRBの高官達は短期の価格圧力はいずれ和らぐという見解を示している。経済活動の再開に伴うサプライチェーンの問題が価格を短期的に、FRBの目標である2%以上に引き上げると予想した。こういった短期的な問題が解決したのち、インフレは和らぐと見ている。また、経済がFRBの目標である最大雇用や物価安定目標に向けて著しい進展を見せるまでにはかなりの時間を要する可能性が強いと見ている。FRBはインフレ2%をいくらか上回る水準まで過熱させ平均で2%を目指す。同時に、複数の参加者は、もし、委員会の目標に向けて経済が急回復を継続した場合、今後の会合で、資産購入ペースの修正に関する計画協議を開始することが適切になるかもしれないと指摘した。今までの会合で初めて、メンバーは資産購入ペースの修正に言及した。このため、市場では、今後数会合のうちに、FRBが緩和縮小協議を開始するとの見方を強めた。

 

ビットコインの不安定な値動きがテスラの企業価値のリスク

足元で暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格が急落したため、米電気自動車(EV)大手テスラが保有するビットコインの時価は3月末時点から半減して12億6000万ドルと、実質的な取得原価の13億ドルをやや割り込んだ。テスラは、ビットコイン価格が実質的な取得原価を下回った場合、減損費用を認定する必要があり、どこかの時期の業績に悪影響を及ぼす可能性があるとの認識を示した。ただ、マスク最高経営責任者(CEO)は19日、『テスラはダイヤモンド・ハンズを持っている』とツイッターに投稿し、保有分を売却しないとのメッセージを発信した。ダイヤモンド・ハンズは、掲示板レディットでしばしば使われる言葉で、リスクの高い資産を果敢に持ち続けることを意味する。テスラは2月8日、ビットコインに15億ドルを投じてその10%を既に売却したことを明らかにしていた。この売却は第1・四半期利益の押し上げにつながったものの、ビットコインの不安定な値動きがテスラの企業価値を揺さぶる危険性も浮き彫りになった。

 

SPAC人気の冷え込み拍車で個人投資家は大やけど

特別買収目的会社(SPAC)やSPACを利用して上場した企業の株価が急落する中、つい先日までの注目セクターに殺到した個人投資家は大きな痛手を負っている。SPACとの合併を通じて上場した企業のほか、まだ企業を買収していないSPACをカバーしているディファイアンス・ネクスト・ジェンのSPACディライブドETF(上場投資信託)は、ここ3カ月で約30%下落し、一時は6カ月ぶり安値に沈んだ。電気自動車(EV)電池企業のクアンタムスケープや宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックなど、セクター関連の人気銘柄はこの期間に50%以上急落した。EV新興企業ルシッド・モーターズや消費者向け融資を手掛けるソーシャル・ファイナンス(ソーファイ、SoFi)など、話題の企業を上場させたSPACも売りを浴びている。SPAC関連銘柄は投げ売りの対象となり、いわゆる白紙小切手会社に対して規制当局が監視を強化させる兆しも重荷となっている。

 

欧米市場イベント

○15:00   4月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比0.8%)
○17:00   3月ユーロ圏経常収支(季節調整済/季節調整前)
○18:00   3月ユーロ圏建設支出
○18:00   レーンECB専務理事兼主任エコノミスト、講演
○18:05   カンリフ英中銀(BOE)副総裁、講演
○20:50   ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁、ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事、講演
○21:30   5月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:43.0)
○21:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:45.0万件/364.0万人)
○23:00   4月米景気先行指標総合指数(予想:前月比1.4%)
○未定   南アフリカ準備銀行(SARB)、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○23:30   カプラン米ダラス連銀総裁、講演
○23:45   ビルロワ・フランス中銀総裁、講演
○24:00   マックレム・カナダ銀行(BOC)総裁、あいさつ

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