FITS エコノミックレポート

★米国株式市場は下落：金融危機不安解消せず売り優勢に

NYダウは37.83ドル安の32394.25ドル、ナスダックは52.75ポイント安の11716.08ポイントで取引を終了した。金融監督当局指導者が破綻した地銀を巡る上院銀行委員会での証言を控えた警戒感に売られ、寄り付き後は下落した。その後発表された3月の消費者信頼感指数が予想外に上昇したためNYダウは一時プラス圏を回復した。一方、長期金利の上昇を嫌気しハイテクは終日軟調に推移した。また、終盤にかけて、金融危機不安が解消せず、一時上昇していた地銀セクターが再び下落に転じ相場全体を押し下げ、主要株式指数は下落で終了した。VIX指数は20.60から19.97へ低下した。

★NY外国為替市場：米国株が下落するとドル売りやや優勢に

ドル/円は、米長期金利が低下に転じたタイミングで円買い・ドル売りが先行すると一時本日安値となる130.41円まで下げたものの、前日の安値でもある130.41円がサポートとして働くと買い戻しが優勢になった。3月米消費者信頼感指数や3月米リッチモンド連銀製造業景気指数が予想を上回ったことも相場の下支え要因となり、一時131.18円付近まで持ち直した。ただ、高く始まったNYダウが130ドル超下落すると円買い・ドル売りが再び強まり、130.57円付近まで押し戻された。

ユーロ/ドルは、欧米の金融システム不安が後退したことやユーロ圏経済の底堅さを背景に、欧州中央銀行（ECB）が利上げを継続するとの観測が高まりユーロ買い・ドル売りが進み、一時1.0847ドルまで上げた。米経済指標が予想を上回ったことが伝わると1.0816ドル付近まで伸び悩む場面もあったが、下押しは限定的となった。引けにかけては再び買いが優勢となり、1.0849ドルと日通し高値を更新した。

★NY原油先物市場は続伸：供給懸念から買い優勢継続

NY原油先物市場は72.19ドル‐73.93ドルのレンジ相場となった。中国のエネルギー需要拡大への思惑が高まり、時間外取引から買いが先行した。イラク北部の油田とトルコを結ぶパイプラインの稼働が停止しており、供給懸念が高まっていることも引き続き相場を下支えした。米国市場の序盤にかけて72.19ドルまで下げたものの、ドル安を意識して73.93ドルまで反発した。ただ、その後は上げ渋り、通常取引終了後の時間外取引では主に73ドル台で推移した。

★NY金先物市場は3日ぶりに反発：ドル安を意識した買い優勢に

NY金先物市場は1949.90‐1977.10ドルのレンジ相場となった。外国為替市場でドル安が進み、ドル建てで決済される金の割安感が意識された。ロンドン市場の序盤に1949.90ドルまで売られたが、米国市場の終盤にかけて1977.10ドルまで反発した。通常取引終了後の時間外取引では主に1975ドルを挟んだ水準で推移した。

★米国債券市場は続落：金融不安の後退から売り優勢に

米国債券市場で中長期ゾーンは続落（利回りは上昇）した。米2年債利回りは前営業日比0.07％高い（価格は下落）4.06％で終了した。また、米10年物国債利回りは前営業日比0.04％高い3.57％で終了した。金融システムを巡る過度な不安が後退したことで、相対的に安全資産とされる米国債に売りが出た。米経済指標が予想を上回ったことも相場の重しになった。

★米住宅価格指数が前年比の伸び率で低水準：US Dashboard

米連邦住宅金融（FHFA)が28日に発表した1月の全米住宅価格指数は、前年同月比で5.3％上昇と2020年5月以来の低水準となった。前年比の伸び率の縮小は22年3月から続いている。前月比では0.2％上昇したが、1月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は20都市価格指数が前月比0.4％低下している。米住宅市場の低迷は続いており、価格高騰に一服感が出ている。

★株式相場は『瀬戸際』の情勢：BofAセキュリティーズ

BofAセキュリティーズは28日付の日本株ストラテジーリポートで、株式相場は下落リスクを抱えた『瀬戸際』の状態であると指摘した。①金融不安が台頭する中で各国中銀が利上げを続けている、②利上げが続く限り「また見えぬリスク」が今後顕在化する不安が払しょくされない、③金融不安による景気への二次的影響が明らかになっていない点を挙げている。一方で、先行きでは中国経済の回復や製造業サイクルの循環的底打ち、ドル安がグローバル経済悪化の緩衝材となり得るとも指摘した。リポートではクオリティ確保が肝要であるとし、クオリティ株優位を見込んだほか、今後の業績サイクル改善が見込めるバリュー株選別が重要であるとしている。