FITS エコノミックレポート

★米国株式市場は反落：金融システムへの不安が再燃して売り優勢に

NYダウは384.57ドル安の31861.98ドル、ナスダックは86.76ポイント安の11630.51ポイントで取引を終了した。当局の監督下におかれたシリコンバレー銀の親会社SVBファイナンシャルがニューヨークで連邦破産法11条の適用を申請したとの報道受け、金融システムへの不安が再燃し寄り付き後は下落した。また、複数銀の預金支援を受け昨日大きく上昇していた地銀ファースト・リパブリック（FRC）が再び下落に転じたことも一段の警戒感につながり続落した。本日はトリプルウィッチングにあたり先物やオプション満了に絡んだ売りも加速した可能性があり、マイナス圏で終了した。VIX指数は22.99から25.51へ上昇した。

★NY外国為替市場：金融不安再燃からリスク回避の円買い優勢

ドル/円は、前日に反発したスイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価が再び下げたほか、大手銀行11行による支援が決まったファースト・リパブリック・バンクの株価が30％超急落するなど、金融システム不安を巡る警戒感は根強く、NYダウが一時510ドル超下落した。リスク回避の円買い・ドル売りが優勢となり、一時131.56円と2月14日以来約1カ月ぶりの安値を更新した。『ドイツ銀行など少なくとも大手4行がクレディ・スイスとの取引を制限している』との一部報道も投資家心理の悪化につながった。米ミシガン大学が発表した3月消費者態度指数（速報値）が63.4と予想の67.0より弱い結果となったほか、併せて発表した消費者の期待インフレ率が予想を下回ったことも米金利の低下とドル売りを促した。

ユーロ/ドルは、欧州の金融機関全般への警戒感からユーロ安・ドル高が進み、一時1.0612ドル付近まで値を下げた。ただ、オセアニア時間に付けた日通し安値1.0608ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが優勢になった。低調な米経済指標や米金利低下に伴うドル売りも強まり、1.0685ドルと日通し高値を更新した。市場では『週末を控えたポジション調整目的のユーロ買い・ドル売りが入った』との声も聞かれた。

★NY原油先物市場は反落：リスク回避の売りが強まる

NY原油先物市場は65.38ドル‐69.83ドルのレンジ相場となった。昨日は4日ぶりに反発した原油先物だが、欧米の金融不安が払しょくできないことで再び軟調な動きになった。クレディ・スイス株が約8％下落したほか、米ファースト・リパブリック・バンクも大幅安になるなど、リスク回避の動きが継続し原油先物の頭を抑えた。なお、週間ベースでは昨年4月1日週以来の大幅安となった。ロンドン市場で69.83ドルまで買われたが、米国市場の中盤にかけて欧米金融不安を受けたリスク回避の売りが再び強まり、65.38ドルまで下げた。米国株式の下落も嫌気された。その後、67ドル台まで戻したものの、通常取引終了後の時間外取引では主に66ドル台で推移した。

★NY金先物市場は大幅反発：金融不安の増大を警戒した買い優勢に

NY金先物市場は1922.30‐1993.00ドルのレンジ相場となった。昨日反発した欧米金融株が再び売られたことなどもあり、リスク回避の動きが進み大幅に反発した。週末を前に更なる金融危機の表面化リスクを避ける動きもあり、安全資産とされる金先物には買いが集まったほか、ドルの上値が重いことで、ドルで取引される金先物は割安感があることも支えになった。アジア市場で1922.30ドルまで下げたが、金融不安の増大を警戒して米国市場の後半にかけて1993.00ドルまで一段高となった。米長期金利の低下や株安を意識した買いが入った。通常取引終了後の時間外取引では主に1985ドルを挟んだ水準で推移した。

★米国債券市場は反発：景気悪化への懸念が強まり買い優勢に

米国債券市場で中長期ゾーンは反発（利回りは低下）した。米2年債利回りは前営業日比0.36％低い（価格は上昇）3.82％で終了した。また、米10年物国債利回りは前営業日比0.15％低い3.43％で終了した。米欧の金融システム不安が収束せず、景気悪化への懸念が強まると、安全資産とされる米国債に買いが集まった。市場では『週末の波乱リスクも警戒された』との指摘があった。

★UBSがクレディ・スイス買収で協議か：FT報道

スイス金融大手UBSが同業のクレディ・スイス・グループの買収について協議している模様。英フィナンシャル・タイムズ（FT)が17日に報じた。クレディ・スイス全体か一部事業が対象という。クレディ・スイスは経営不振が続き、16日にスイス国立銀行（中央銀行）から500億スイスフランの融資枠を設定する資金支援を受けたと発表した。15日には筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクの会長が追加出資しないと明言し、顧客の富裕層が外部に週出しているとも伝わっていた。UBSは1998年にスイス銀行とスイス・ユニオン銀行が合併して誕生した。クレディ・スイスも合流すれば、かつて歴史ある銀行として名高かった「スイス3台銀行」が1行に集約されることになる。