FITS エコノミックレポート

朝の市場コメント!

米国株式市場はまちまち:世界的な金融システム混乱を警戒

NYダウは280.83ドル安の31874.57ドル、ナスダックは5.90ポイント高の11434.05ポイントで取引を終了した。スイス銀のクレディ・スイス経営難を警戒した欧州市場からの流れを継いで金融セクター中心に売られ、寄り付き後は下落した。世界的な金融システム混乱を警戒し、国内地銀の売りも再開、相場を一段と押し下げた。終盤にかけ、スイス当局が声明で必要ならクレディ・スイス銀に流動性を供給するなど安定化に向け支援する姿勢を示したため下げ幅を縮小した。長期金利の大幅低下でハイテクは底堅く推移し、ナスダック総合指数はプラス圏を回復した。NYダウはリセッション懸念に戻り鈍く軟調推移を継続し、結局はまちまちで終了した。VIX指数は23.73から26.14へ上昇した。

 

NY外国為替市場:欧州銀行の経営不安からユーロ売り優勢に

ユーロ/ドルは、スイス金融大手クレディ・スイス・グループを巡り、『筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクは追加投資をする意向がない』と報じられると、同行の株価が急落した。米銀の破綻が相次ぐ中、欧州でも銀行の経営不安が広がったことから、投資家がリスク回避姿勢を強めユーロ売り・ドル買いが優勢となり、一時1.0516ドルと1月6日以来の安値を更新した。ただ、『スイス当局とクレディ・スイスは同行を安定させるための選択肢について討議している』との報道が伝わると、リスク回避の動きが若干和らぎ買い戻しが優勢になり、1.0592ドル付近まで下げ幅を縮めた。なお、スイス中銀(SNB)とスイス金融市場監督機構(FINMA)は共同で声明を出し、『クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に課される資本および流動性要件を満たしている』『必要ならクレディ・スイスに流動性を供給する』と表明した。

 

ドル/円は、クレディ・スイスの株価急落で金融システム不安が再燃すると、欧米株価が軟調に推移。リスク回避の円買いが優勢となった。2月米小売売上高や2月米卸売物価指数(PPI)が軒並み予想を下回ったことが分かると、米連邦準備理事会(FRB)が来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測も強まりドル売りを促し、一時132.22円と約1カ月ぶりの安値を付けた。ただ、売り一巡後は下げ渋る展開に。スイス当局によるクレディ・スイス支援に関する報道が相場の下支え要因となり、133.77円付近まで下げ幅を縮めた。なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する『フェドウオッ』」によると、21‐22日のFOMCで金利据え置きを予想する確率は60%を超える場面があった。

 

NY原油先物市場は3日続落:リスク回避の売り強まる

NY原油先物市場は65.65ドル72.56ドルのレンジ相場となった。スイス金融大手クレディ・スイス(CS)の最大の投資家であるサウジ国立銀行がCSへの追加出資が不可能との見解を示すと、CS株が一時30%超下落した。市場は、米銀2行の破綻に続き、新たな信用不安による金融危機を懸念しリスク回避の動きが加速した。原油先物は2021年12月3日以来となる65ドル台まで大幅に下落した。なお、米エネルギー省(EIA)が発表した週間石油在庫では、原油は市場予想を上回る積み増し、ガソリンは予想を上回る取り崩しとなったが反応が限定的だった。ロンドン市場の序盤にかけて72.56ドルまで買われたが、欧米金融不安を受けたリスク回避の売りが次第に強まり、米国市場の後半にかけて一時65.65ドルまで一段安となった。ユーロ安も嫌気された。ただ、米長期金利の低下や株安が一服したことから、売りは一巡し、通常取引終了後の時間外取引では主に68ドル台で推移した。

 

NY金先物市場は反発:欧米金融不安からリスク回避の買い優勢に

NY金先物市場は1889.50‐1942.50ドルのレンジ相場となった。スイス金融大手クレディ・スイス(CS)の最大の投資家であるサウジ国立銀行が、CSへの追加出資が不可能との見解を示すとCS株が暴落した。米銀に続き欧州の金融危機不安の再燃で、リスク回避の動きが進み、安全資産とされる金先物に買いが集まり大幅に反発した。ロンドン市場の序盤にかけて1889.50ドルまで下落したが、米国市場では米長期金利の低下を受けた買いが強まり、一時1942.50ドルまで上昇。通常取引終了後の時間外取引では1920ドルを挟んだ水準で推移し、下げ渋った。

 

米国債券市場は大幅反発:金融システム不安から買い優勢に

米国債券市場で中長期ゾーンは大幅反発(利回りは低下)した。米2年国債利回りは前営業日比0.37%低い(価格は上昇)3.87%で終了した。また、米10年物国債利回りは前営業日比0.24%低い3.45%で終了した。経営不振が続くスイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価が急落すると、金融システム不安が再燃。投資家がリスク回避姿勢を強め相対的に安全資産とされる米国債に買いが集まった。利回りは一時3.3803%前後と2月3日以来の低水準を付けた。

 

高まる米利下げ転換観測:US Dashboard

市場では米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げ打ち止め、利下げ転換観測が広がっている。米金利先物の動きから米政策金利を予想する『Fedウオッチ』では日本時間14日午前6時現在、21~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が0.25%となる確率と、利上げ見送りとなる確率が5割程度で拮抗している。一時は5%台半ばまで上昇していた最終的な利上げの到達点(ターミナルレート)も4%台後半に低下した。2023年央の利下げ転換を見込み、年末の政策金利見通しは3%台後半まで下がっている。

 

スイス中銀(SNB)およびスイス金融市場監督局(FINMA)共同声明


「米国の一部の銀行の問題は、スイスの金融市場に直接的な伝染リスクをもたらすものではない」
「スイスの金融機関に適用される厳格な資本および流動性要件は、その安定性を保証する」
「クレディ・スイスは、システム上重要な銀行に課される資本および流動性要件を満たしている」
「必要であれば、SNBはCSに流動性を提供する」
「米国の銀行市場における現在の混乱により、スイスの金融機関に直接的な伝染リスクがあるとの兆候はない」
「クレディ・スイスは規制上の資本および流動性要件を満たしている」
「クレディ・スイスの株式交換価値および負債証券の価値は、ここ数日の市場反応によって特に影響を受けている」
「FINMAは同銀行と非常に緊密に連絡を取り合っており、監督法に関連するすべての情報にアクセスすることができる」
「FINMAは、クレディ・スイスがシステム上重要な銀行に適用される高い資本および流動性要件を満たしていることを確認しる」
「SNBは必要に応じて、グローバルに活動する銀行に流動性を提供する予定」
「FINMAとSNBは、金融の安定性を確保するために、非常に注意深く動向を見守り、連邦財務省とも緊密に連絡を取り合っている」

 

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