FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:利益確定売りも入りやすく上値の重い展開

新型コロナウイルスのワクチン開発進展や経済活動の正常化期待に前日のNYダウが911ドル高の急伸を受け買いが先行し一時上げ幅500円を超えた。しかし、ワクチン開発には相応の時間を要するため次第に売りに押された。企業活動の再開期待にも新型コロナウイルス感染『第2波』への警戒感が根強く2万0500円以上の高値は買い辛いとの見方から上値が重い展開となった。結局、前営業日比299円高の2万0433円と3日続伸して終了した。

 

東京外国為替市場:107.50円が上値目処として意識

ドル/円は、日経平均株価の大幅高を眺めたドル買い・円売りが先行し107.46円付近まで上昇した。しかし、前日海外市場でつけた107.50円が上値目処として意識されると上げは一服した。その後は、新型コロナウイルスをめぐる米中の対立を警戒したドル売り・円買いも見られ、107.40円を挟んでもみ合いとなった。午後も107.40円前後で方向感に乏しい値動きが続いた。今晩予定されているパウエルFRB議長の議会証言を前に様子見ムードが広がった。ユーロ/ドルは、欧州市場で公表される5月独ZEW景況感指数を見極めたいとの雰囲気から1.09ドル台前半で小動きの展開となった。

 

昨日はワクチン治験の抗体確認でNY市場は大騒ぎ

昨日の海外市場では、米モデルナ社のワクチン治験で投与した45人全員に抗体を確認したことが報じられたことから、『NY市場は大騒ぎ』となり、NYダウは一時1000ドルを超える急騰となった。しかし、市場からは『まだフェーズ1なのに騒ぎすぎ』との声も聞かれているが、『やはり人間での抗体が確実に確認されたことがサプライズだった』との声も聞かれている。現在、COVID19ワクチンについては、フェーズ3まで進んでいるものがいくつかあるが、これらは全てBCGを医療関係者に接種したものである。新しいワクチンということであれば、中国のカンシオ社と英オックスフォード大学の研究所が一歩先を行っているが、いずれも『サルの抗体結果は出ているが、人間の抗体ではこれほどはっきりした結果は報告されていない』模様である。そのために、市場は一斉にリスク選好の動きに走ったといったところである。米国では、ワクチン開発に『莫大な資金をつぎ込んでいる』ことは周知の事実である。レムデシビルの承認で治療薬では先手を打った米国が、ワクチン開発でも先頭集団に潜り込んだところである。逆説的に言えば、市場はワクチンが普及してCOVID19への体制が確立されるまでは、世界中の中銀が『打ち出の小づちを振ってくれる』確約を得ているわけで、それまでは、やはりコロナ後のバブル相場を形成していくというのがメインシナリオであるはずである。

 

トルコでは若干明るい材料も

昨日エルドアン・トルコ大統領が、ラマザン(断食月)明けの祝日であるラマザンバイラム(23日から26日)期間中は、すべての都市で外出禁止令が発動されることを発表した。そのため、経済活動の実質的な再開が遅れることが懸念され、リラの重石となった。ただ、経済活動制限の緩和が先週から始まったトルコでは、同国輸出を担う自動車製造業も工場が再開された。本格的な操業は来月からだが、トルコ経済にとっては明るい兆しがみえてきた。主要産業の1つ観光業においては、国内観光が5月末から認められ、6月半ば以降に一部の国から観光客受け入れを開始する予定となっている。一方、トルコ中銀の外貨準備高減少や1700億ドルにも迫るトルコの短期・対外債務など、すぐに解決できない問題は残っている。21日にはトルコ中銀が9会合連続で利下げを実施するとの見方も強まっており、リラの上値を限定させる材料も目立。

 

米国債の長短金利差拡大が回復予兆シグナルとして注目

米国ではFRBによる3月以降の積極果敢な緩和対応もあり、米10年債-2年債の長短金利差は緩やかながらも拡大へと転じてきた。現在は長期国債の大量増発や先行きの価値希薄化懸念、長期スパンでの米国政府とFRBの財務・信認懸念といった悪い長期金利の上振れも内包しており、カーブ形状の解釈には注意を要する。一方で教科書的には『長短金利差の逆転後、1年から1年半後には景気後退が深刻化する』というモデル分析があり、そのリスク解消は心理面や期待形成面への好影響も含めて、来年にかけての回復予兆シグナルとして注目される。

 

トランプ米大統領のドル高支持の背景

現状段階でのトランプ米大統領によるドル高支持については、1)11月に米大統領選を控え、コロナ打撃に対しての米国経済とドルの打たれ強さをアピールしたい、2)現在は世界不況により、ドル安誘導でも米国の輸出と雇用の回復効果は限定、3)トランプ政権は政策の優先順位として、外需よりも内需復旧に力点を置いている(ドル高は物価抑制や購買力増強などで内需にプラス)、4)トランプ政権は財政出動で米国債を大量増発しており、ドル高は海外からの米国債投資を後押しさせる(米長期金利の低位安定に寄与)、5)ドル高は海外からの米国株投資を促し、米国勢による国際分散投資=資金流出を抑制させる(大統領選に向けて、早期の米株高復活は重要に)といった背景が想定される。

 

米設備稼働率の急低下で最悪期通過の可能性も

米国ではコロナ打撃で景気が大幅に悪化するなか、生産調整(供給調整)の進捗度合いで参考になる鉱工業生産・設備稼働率が急低下してきた。最新4月は64.9%と、3月の73.2%から一段と切り下がっている。リーマン・ショック後の最低である2009年6月の66.7%を下回り、過去最低を更新してきた。一方で稼働率の大幅低下は、過去実績として生産調整の進捗と景気『最悪期通過』の先行指標にもなっている。5月以降は緩慢ながらも経済活動の再開により、稼働率は下げ渋りや下げ幅縮小が見込まれる。

 

米国市場では4月住宅着工件数が公表

3月実績は121.6万戸となった。4月については、ウイルス感染の拡大を防ぐために導入された都市封鎖の影響をより強く受けていることから、着工件数は大幅に減少する見込み。着工件数は5月以降もさえない状態は続くと予想されている。

 

欧米イベント

○15:00   4月英雇用統計(予想:失業保険申請件数推移67.65万件/失業率なし)
○15:00   1-3月英失業率(ILO方式、予想:4.4%)
○18:00   3月ユーロ圏建設支出
○18:00   5月独ZEW景況感指数(予想:32.0)
○18:00   5月ユーロ圏ZEW景況感指数
○21:30   4月米住宅着工件数(予想:90.0万件、前月比▲26.0%)
        建設許可件数(予想:100.0万件、前月比▲25.9%)
○22:00   1-3月期ロシア国内総生産(GDP)速報値(予想:前年比1.9%)
○23:00   レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○23:00   カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
○23:00   パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長とムニューシン米財務長官が米上院銀行委員会で証言
○20日03:00   ローゼングレン米ボストン連銀総裁、討議に参加
○欧州連合(EU)財務相理事会
○トルコ(青年とスポーツの日)、休場

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