FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:トルコリラ急落で欧州銀行不安にリスク回避強まる

トルコリラ急落が同国向け債権を多く保有する欧州銀行不安につながると懸念され世界連鎖株安の様相となっていることで投資家心理が悪化した。1ドル=110円に迫る円高も嫌気されて売りが加速した。結局、前週末比440円安の1万1857円と大幅4日続落となった。

 

東京外国為替市場:全般リスク回避の円買い強まる

ドル/円は、トルコショックが南アランドの急落に波及したことで、リスク回避の動きが強まり、一時110.14円まで下落した。日経平均株価が節目の2万2000円を割り込んだことや上海総合株価指数の下落も、リスク回避の円買いに拍車がかかった。午後も流れは変わらず、日経平均株価の下げ幅拡大も嫌気されてドル売り・円買いが進み110.11円まで下げた。しかし、心理的節目の110.00円が視野に入ると下げも一服した。その後、トルコ中銀が『銀行が必要とする全ての流動性を供与する』『市場を監視し、必要な全ての措置を取るだろう』などの声明を発表した。これを受けて、トルコリラが一時買い戻されると、ショートカバーが入って110.40円前後まで上昇した。しかし、追加利上げがなかったことから上値も重くなった。ユーロ/ドルは、1.13ドル台後半で方向感のない値動きとなった。欧州勢待ちの様相となっている。

 

ECBが警告したトルコに対するエクスポージャー

2018年3月末時点で2200億ドルある。1位がスペインの36%、2位がフランスの16%、3位がイタリア、米国、英国の6%、6位がドイツと日本の5%となっている。これらの資金がトルコから徐々に流出しているため、トルコリラ安が続いていると思われるが、今後も流出が続くことがリスクとなる。

 

トルコと米国の対立は根深い

トランプ政権はトルコでクーデター未遂事件に関与した罪で拘束されたキリスト福音派の米国人牧師の解放を求め大規模な制裁も辞さない構え。米中間選挙を控え政治基盤である福音派の支持を固める狙いもある。トルコがロシアの最新鋭地対空ミサイルシステムを購入することを決めたことも両国間の亀裂を深めている。トルコの実体経済や財政は危機的な状況にはないが、通貨安に歯止めがかからなければ海外マネーの流出やインフレ率の急上昇など深刻な悪影響を招きかねないとの警戒感が強い。『トルコの財政は短期のドル建て債務に依存している』のも市場の不安心理を高めている。

 

トルコの銀行業界に対するトルコリラ安の影響

ゴールドマン・サックスはリポートで、トルコの銀行業界に対するリラ安の影響を指摘した。それによれば①リラの下落によって現地通貨建てのリスク資産が増加している、②トルコリラのボラティリティが上昇することで、資産の質とリスクに対するコストが借り手の返済能力と基本的な価値担保うに重い負担をかける可能性があると指摘している。その上で『リラ10%下落するたびに銀行の自己資本比率で平均50bpの影響が出ると試算している。同社がカバーしているトルコの銀行の平均的な自己資本比率は13.2%近辺だが、6月30日以降のリラ安で同比率は12%ほどに低下したと見込まれている。結果として、リラの下落に伴い資本水準の低い銀行の資本懸念を増大させる可能性があるといい、1ドル=7.1リラ近辺までリラ安が進めば資本不足に陥る銀行が出てくる試算も示している。

 

2008年のアイスランドクローナの悪夢は避けたい

2008年10月におきたアイスランドクローナの通貨危機のときには、通貨調達が出来ずに取引停止にし、ポジションの全てを強制決済ということが起きた。その後、アイスランドは辛うじて国際通貨基金(IMF)の支援を受けて危機を乗り切った。しかしトランプ大統領の言動を見ていると、トルコリラ安に対して世界が協調して乗り切ろうという姿勢が見えない。また、エルドアン・トルコ大統領はこの通貨危機に対して、『金や他国の通貨を売りトルコリラを買うべき』『為替の動きは無視しろ、我々はトルコ国民を愛している』とお手上げのような発言をしている。エルドアン大統領が通貨危機対策ができないため、どのような強権を発動するか分からないことも市場のリスクとなる。

 

欧米イベント

本日の欧米金融市場では、経済指標の発表などは特に予定されていない。

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