★トランプ政権は、米国株式市場の動向を注視しながら政権運営を図っていることは市場の周知のことである。一方で、かつては石油輸入国だった米国が2018年には名実ともにサウジアラビアを抜き、世界一の産油国となり今や世界第7位の石油輸出国となる一大エネルギー生産国となった。しかし、米国による対中関税『第4弾』など米中貿易摩擦激化により世界的な景気減速の思惑などから原油需要鈍化観測が嫌気され現在は50-60ドル台で推移している。技術革新などから採算コストは40ドル台に改善しているものの、シェール企業にあっては2010年から営業キャッシュフローが投資額を上回ったことがない。今までトランプ政権は、恫喝による危機演出⇒危機助長⇒危機打開のサイクルにより米中貿易衝突による米国株下落は市場では押し目買いの好機と捉えられていた。しかし、米中貿易摩擦激化に端を発した世界的な景気減速感が出始めており、先行きの需要減速観測から原油価格の上値は重い。原油価格の下落は産油国としての米国経済にも大きな影響を与える。
米国が中国への制裁を強めれば強めるほど、米中対立が激化し世界景気減速は避けられず、原油価格は下落基調となる悪循環となっている。トランプ政権も今までは米国株式だけを注視していれば良かったが、産油国となった米国にとって原油価格に直結する世界的な景気動向も重要ポイントとなる。そのため、トランプ政権は必要以上に米連邦準備制度理事会(FRB)に対して利下げ圧力を掛けている。米国が利下げすることで、世界的な金融緩和モードとなり、世界的な景気減速感を止める必要があるからだ。また、米国が為替介入によって、ドル安への誘導図るとの思惑もあるが、ドル安によって商品相場を下支えることになり、強いては原油価格の支援材料となる。
★シカゴIMM投機筋ポジションの8月13日付けが公表された。対ドルでの差引き持ち高は、円ロング(円買い・ドル売り)+24,742枚となり、前週の持ち高+10,561枚から増加傾向となり、2016年来で円ロングポジションは最高となった。投機筋による円ロングポジションの構築が進んでいることを示している。
ただ、8月7日以降は連日の陰線(円高・ドル安)となり、8月13日には105.01円まで円高が進んだ。しかし、13日に米通商代表部(USTR)が対中輸入品3000億ドルの10%追加関税に関し、スマホなどの消費財に対する関税発動を9月1日から12月15日まで先送りし、健康、安全保障関連を制裁対象外としたため、関税が与える成長への悪影響の警戒感が後退した。米中貿易交渉への期待も広がり米国債利回り上昇の伴うドル買い、リスク選好の円売りが加速した。そのため、投機筋は含み損を抱えている可能性が高く、円高基調では手仕舞いのドル買い戻しも入りやすく円高の抑制となっている。
★東京金60分足では、一目均衡表の雲の上限がサポートとなる一方で、24時間SMA(緑線)がレジスタンスとなりもみ合う展開となった。週明け雲の上限が切り上がっていることから、雲の上限に沿って上昇基調になるのか、それとも雲の中に入るのかが注目される。
NY金先物市場は1513.90-1538.60ドルのレンジ相場となった。週初から進んだリスク回避地合いは一旦後退した。米国株式市場は底堅く、米長期金利も低下傾向が一服した。これまで安全資産とされて買いが強まっていた金は、利益確定の売りが優勢となった。また、ユーロが伸び悩んだことも上値を重くした。
価格帯別出来高では、出来高の多い価格帯の上方に位置しているものの、利益確定売りが出てくるほどかい離していない。そのため、新規の買いが増えてくるかが注目される。
MACD(パラメータ:12、26、9)は、ゼロラインを下抜けしたものの横ばいとなっていることから、方向性を欠く展開となっている。ストキャスティクス・スロー(パラメータ:14、3 、3、20、80)は%DがSlow%Dを上抜け下値を切り上げながら、両線ともに上昇基調となっている。そのため、緩やかな戻り基調を示している。
東京金の日足では、一時5日SMAの5,148円を下抜けしたものの、終値では上回った。ただ、ロウソク足が『十字足』となり相場への迷いが出てきていることから、寄付き後の動向が注目される。NY金先物は、米長期金利の低下が一服したことや、米国株が持ち直したことにより利益確定売りが入りやすかった。引き続き米長期金利動向がポイントとなる。為替市場では、シカゴIMM投機筋ポジションの8月13日付けが公表された。対ドルでの差引き持ち高は、円ロング(円買い・ドル売り)+24,742枚と前週比から+14,181枚増となった。要するに投機筋は円高・ドル安のポジションに傾いているということになる。8月7日以降連日の陰線(円高・ドル安)となり、8月13日には105.01円まで円高が進行した。しかし、13日に米通商代表部(USTR)が対中輸入品3000億ドルの10%追加関税に関し、スマホなどの消費財に対する関税発動を9月1日から12月15日まで先送りし、健康、安全保障関連を制裁対象外としたため、関税が与える成長への悪影響への警戒感が後退した。米中貿易交渉への期待も広がり米債利回り上昇に伴うドル買い、リスク選好の円売りが加速した。そのため、投機筋は含み損を抱えている可能性が高い。
本日の注目も5日SMAがサポートとなり上昇基調を継続するのか、それとも下抜けして短期的な調整となるのかが焦点となる。下抜けした場合では、10日SMAの5,097円や、4,995円がサポートラインとして意識されやすい。
★NY株式市場は三指数とも上昇したうえ、米長期金利も上昇したことからイールドスプレッドは縮小した。しかし、未だに割安感は残っており、買い戻しが続く可能性がある。
NYダウは、一時200日SMAを下抜けしたことで下落基調が進みやすい地合いとなった。しかし、週末にNYダウが大幅反発したことで、200日SMAを回復した。ただ、5日SMAと10日SMAが下抜きで10日SMAがレジスタンスとして意識されていることから、短期的には下落基調が継続している。そのため、週初の値動きが重要ポイントになる。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲4.708%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲3.069%、19/4/25-▲3.048%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/6/3-▲4.038%、19/8/5-▲4.102%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月15日:▲4.261%⇒8月16日予想▲4.160%(直近では最大のスプレッド幅)
8月16日はNYダウは上昇したうえ、米長期金利も上昇したことで、イールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲4.708%から▲0.548%スプレッドがかい離した。19年1月3日の大底▲4.226%から▲0.066%、19年6月3日の大底4.038%から+0.122%、19年8月5日の大底▲4.102%から+0.058%スプレッドが上回った。NYダウが上昇したうえ、米長期金利も上昇したことで、イールドスプレッドは前日比で縮小した。
NYダウが上昇したことで株式益利回りは低下した。一方、米長期金利も上昇したことで、イールドスプレッドは前日比では縮小した。米国債に対してNYダウが前日比で割高となった。前日比ではNYダウを買うよりも米国債を買った方が良いということになる。イールドスプレッドが4.10%台に低下したものの、NYダウに割安感が残っている。今後も、米長期金利の動向が重要ポイントとなる。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲4.023%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲2.731%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/6/3-▲3.881%、19/8/5-▲4.002%
・8月15日:▲4.179%⇒8月16日予想▲4.066%
S&P500が上昇したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲4.023%から+0.043%と平均値のイールドスプレッドを上回った。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%に対して+0.197%、19年6月3日の大底となった3.881%から+0.185%とイールドスプレッドを上回っている。さらに、19年8月5日の大底となった▲4.002%も+0.064%とイールドスプレッドを上回っている。直近のイールドスプレッドを上回っていることからS&P500は割安感は残っている。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲2.468%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/6/3-▲2.328%、19/8/5-▲2.383%
・8月15日:▲2.498%⇒8月16日予想▲2.401%
NASDAQは大幅上昇したうえ、米長期金利も上昇したことで、イールドスプレッドが前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲2.468%から▲0.067%とかい離している。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては+0.222%を上回っている。さらに、19年6月3日の大底となった▲2.328%に対して+0.073%、19年8月5日の大底となった▲2.383%から+0.018%と上回り、直近のイールドスプレッドを上回っている。
NASDAQは、イールドスプレッドは縮小したものの、未だに割安感が残っている。NASDAQはハイテク関連銘柄が多く米中貿易摩擦の影響が大きく、三指数の中で上下に振れるボラティリティが最も高くなっている。
三指数のイールドスプレッドは、前日比で縮小しが直近のイールドスプレッドを上回る状況となっており、未だに割安感が残っている。そのため、週明けも買われやすい地合いは継続している。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。
★欧州市場朝方の取引では、前日に伝わったフィンランド中銀のレーン総裁によるハト派発言を受けたユーロ安が進展した。なお、ドル/円は106.10円台と前日比横ばい水準でもみ合い商状となった。欧州株が全面高で推移、日経先物も90円高に続伸する中、ドルが買い戻される展開となった。日米株先物の上げ幅が拡大したことで、リスク選好的な円売りが優勢となった。ただ、米長期金利が1.55%台で伸び悩んだことでドル買いも限定的となった。その後はNY勢の参入を前にドル買いは一服した。
米7月住宅着工件数は予想を下回った一方で、同米建設許可件数は市場予想を上回る結果となったものの鈍い反応だった。米8月消費者態度指数速報値が市場予想を下回り、1月に続き2番目の低水準となったことで、NYダウが上げ幅を縮め、米長期金利も1.54%前半へ若干低下したことを受け、ドルはじり安となった。一時1.59%台まで上昇した米長期金利が1.55%台へ水準を下げるとドルの重石となった。格付け会社フィッチがアルゼンチンの格付けを「B」から「CCC」に引き下げたことを発表したが、ドル売りは盛り上がらなかった。
★欧米主要経済指標
・ユーロ圏・6月貿易収支:+206億ユーロ(5月:+230億ユーロ)
・米・7月住宅着工件数:119.1万戸(予想:125.7万戸、6月:124.1万戸←125.3万戸)
・米・7月住宅建設許可件数:133.6万戸(予想:127万戸、6月:123.2万戸←122万戸)
・米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値:92.1(予想:97.0、7月:98.4)
・米・8月ミシガン大学1年期待インフレ率速報値:2.7%(7月:2.6%)
・米・8月ミシガン大学5-10年期待インフレ率速報値:2.6%(7月:2.5%)
★欧米市場のポイント
・106.07-49円のレンジ相場
・ECBによる早期の追加緩和観測を背景にユーロ売り
・独誌の景気後退なら財政出動の用意との報道でユーロ買い戻し
・米長期金利が1.59%台を回復すると投資家心理が改善
・米住宅指標は好悪まちまちの結果、米8月消費者態度指数は悪化
・VIX指数は21.18から18.47へ低下
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