FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

今後も通商問題の行方には警戒が必要

トランプ米政権は、予定通り東京13時過ぎに340億ドル相当の中国からの輸入品に追加関税を課した。中国の強い反発は確実であり、世界第1位と2位の経済大国による本格的な貿易戦争が現実味を帯びつつあるが、為替市場はリスク回避とはならず、逆に円売り傾向が強まった。これは、関税発動は予定通りではあり、市場はすでに織り込んでいた。ただ、今後も通商問題の行方には警戒が必要となる。一方で、米欧の貿易摩擦は緩和の方向に動きつつある。昨日は、米国の自動車関税引き上げを避けるために、メルケル独首相が『関税引き下げの交渉に応じる用意がある』と述べた。欧州サイドの通商交渉には独以外の承認も必要であり、メルケル首相の意見が全て取り入れられるとは思えないが、欧州一の経済国が譲歩する姿勢をみせたことは大きい。 

 

日経平均株価:材料出尽くしで買い戻し優勢

前日の欧米株高を好感し米大統領が5日に対中追加関税発動を表明したが、第2弾の追加関税の明言を避けて貿易戦争への警戒感が和らぎ悪材料出尽くしで前日まで売られた景気敏感株中心に買い戻された。先物を売っていたヘッジファンドなど海外短期筋の買戻しが優勢となった。結局、前日比241円高の2万1788円と5日ぶり反発して取引を終了した。

 

東京外国為替市場:上海総合株価指数持ち直しでドル買い

ドル/円は、本邦実需筋などのドル買い・円売りや日経平均株価の反発に支えられ、一時110.75円前後まで上昇した。ただ、米中貿易摩擦を巡る警戒感から伸び悩み110.70円を挟んでもみ合い相場となった。午後に、トランプ政権は知的財産権の侵害を理由に、中国から輸入するハイテク製品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動した。これに対して中国商務省が『対中報復関税に報復せざるを得ない』との見解を示すと、ポジション調整などのドル売り・円買いが持ち込まれ、110.60円前後まで軟化した。ただ、下値を追う動きが限られると、日経平均株価の上げ幅拡大を眺めて110.97円までじり高となった。午後から上海総合株価指数がマイナス圏からプラス圏に転じたことも、過度なリスク回避の動きが後退して円売りが優勢となった。ユーロ/ドルは、週末を控えて持ち高調整などのユーロ買い・ドル売りが入り、1.17ドル台乗せとなった。

 

FOMC議事録の内容:斬新的な利上げの必要性を確認

FRBは6月12-13日に開催したFOMCの議事録を公表した。その中で、斬新的な利上げの必要性が再確認された。議事録の中ではまた、多くのメンバーが新興市場や欧州を下方リスクとして見ており、貿易政策を巡るリスクが高まったと指摘している。さらに、過熱経済が、経済の下方リスクになるとの指摘も見られたほか、利回り曲線を監視していくことが重要だとの指摘もあった。また、下半期経済見通しを若干引き下げたことも明らかにした。FRBの利上げにも関わらず、短長期債の利回り格差は縮小基調を継続している。一段と平坦化が進んでおり、万が一逆転した場合、景気後退を示唆すると、FOMC高官や市場エコノミストが警戒している。一方、声明の中の『引き続き緩和的』との文言が協議されたことも明らかになっており、正常化に伴い、近くのフォワードガイダンスが取り除かれるとの思惑も根強い。

 

トルコは政権の閣僚人事と中銀の対応に注目

トルコ大統領選と総選挙では与党連合が勝利を収めた。与党公正発展党(AKP)は改選前の単独過半から議席を減らしたが、連立を組む極右政党の民族主義者行動党(MHP)と併せて過半数の議席を確保した。結果、新政権ではMHPがキャスティングボートを握るため、欧米との一段の関係悪化に伴いトルコが内向き姿勢を強める可能性が高まる。改正憲法施行に伴う『絶対的権力』を有する大統領の下、9日に新たな『エルドアン政権』が発足する。選挙を通過して悪材料出尽くしに伴い下落が続いていたリア相場は底打ちしたが、改革派閣僚のシムシェキ氏の処遇を巡る不透明感が重石になっている。足もとのインフレ率は一段と加速する中、中銀は24日に次期会合で大幅利上げを迫られる可能性もある。次期政権の閣僚人事と中銀の対応は今後の同国経済見ていく上で重要なポイントとなる。

 

米国市場では6月の雇用統計が公表

6月指標では米地区連銀の製造業傾向指数で、NY連銀指数の『雇用者数』が19.08と前月の8.7から2倍以上の改善となった。フィラデルフィア連銀指数でも『雇用者数』は30.4となり、前月の30.2から上昇した。ただ、非農業部門雇用者数の5月実績は前月比+22.3万人だが、完全雇用の状態に近づいていることから、雇用創出のベースはやや鈍化するとみられている。月間20万人超の雇用増が続くことは難しいとみられる。失業率については労働参加率の上昇は期待できないため、前月と同水準かやや下回る可能性がある。なお、平均時給は前年比+2.8%と予想されており、伸び率は5月実績を上回る可能性がある。

 

米国市場では5月貿易収支が公表

参考となる5月の前渡し貿易収支は▲648億ドルで赤字幅は4月実績の▲673億ドルから縮小した。前渡し貿易収支は緩やかに改善しているが、5月は輸入額増加の可能性があることから、貿易赤字額は4月実績の▲462億ドルと同水準になる可能性がある。

 

欧米イベント

○15:00   5月独鉱工業生産(予想:前月比0.3%)
○15:45   5月仏貿易収支
○15:45   5月仏経常収支
○21:00   6月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前月比1.28%)
○21:30   5月カナダ貿易収支(予想:22億カナダドルの赤字)
○21:30   6月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化2万4000人/失業率5.8%)
○21:30   5月米貿易収支(予想:437億ドルの赤字)
○21:30   6月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化19万5000人/失業率3.8%/平均時給、前月比0.3%)
○23:00   6月カナダIvey購買部協会景気指数
○6-9日   6月ロシアCPI(予想:前月比0.4%)

 

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