FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:円高基調が嫌気され売り優勢

米国株の上昇よりも円高進行が警戒されて下落スタートした。序盤はプラス圏に浮上する場面もあるなど、前日終値近辺でもみ合ったが、東京時間に入っても円高基調が続いたことから、徐々に売りが優勢となった。ただ、下げ幅を200円超に広げて節目の2万3000円を下回ったところでは、売り一巡感が出てきて下げ渋った。戻りは鈍く、買いが先行したメガバンクも下げに転じるなどさえない地合いが続いたものの、前引けでは2万3000円を上回った。ただ、アジアの主要な株価指数が堅調に推移し、投資家心理を支えた。押し目とみた買いも入りやすく、下値は限定的だった。結局、87円安の2万3091円と7日ぶりに反落して終了した。

 

東京外国為替市場:株価安と米長期金利低下を眺めドル売り優勢

ドル/円は、日経平均株価の反落や米長期金利低下を眺め、107.90円付近まで下落した。仲値に向けて国内輸出企業のドル売り・円買いも観測された。しかし、108円割れ水準では値ごろ感からドルの押し目買いが入り、108.10円台へ切り返す展開となった。午後は、本日から開催されるFOMCを控えた持ち高調整などのドル売り・円買いに押され、107.90円付近へ下落した。米国で人種差別の抗議デモが続いていることも、ドルの重石となった。ただ、日経平均株価が下げ幅を縮小したことから、下値を追う動きは限られ、108.00円を挟んでもみ合いとなった。ユーロ/ドルは、1.12ドル後半で小幅な値動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

 

BofAセキュリティーズの顧客フローリポート

同社の顧客は1~5日の1週間に米株を23億1600万ドル売り越した。3週ぶりに売り越しに転じたことになる。この週は5日に発表された5月の米雇用統計で非農業部門の新規雇用者(NFP)が市場予想に反して増加したことで、S&P500が週間ベースで4.91%高と大幅に3週連続で上昇していたが、投資家の慎重姿勢がうかがえた。主体別動向ではヘッジファンド(HF)が5億2300万ドルの売り越しで、8週連続の売り越し。機関投資家は15億ドルの売り越しで、3週ぶりに売り越しに転じた。個人投資家は10億200万ドルの売り越しで、5週連続の売り越し。企業の自社株買いは7億800万ドルで、久々の高水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて自社株買いを停止する企業が多く、年初来では前年同期比43%減の状態にある。相場が強い中で全体に売り越しの主体が多かったが、ETF買い・個別株売り様相で、ETFも加えれば売越額はやや縮小していた。

 

南アランド/円は危険な水準に近づきつつある

約1カ月半程度堅調地合いを維持しているランド/円は、深追いするには危険な水準に近付きつつある。世界各国の低金利が招いたコロナバブルが弾けていないことで、株価堅調によるリスクオン相場がまだ続いているが水準的にはかなり伸び切っている。週末にクガニャゴ南アフリカ準備銀行(SARB)総裁が南アの問題点を指摘したが、SARB総裁曰くそもそもの南アの失敗は『2008年の金融危機対策を間違えたため』としている。南アは2007年に民主主義以来初めて財政黒字を記録し、2008年会計年度のGDPに対する債務は26.6%だった。しかし、2021年3月までの会計年度にGDPの65.6%に増加すると予測している。財政的な基盤が弱いことはウイルス対策にも影響を及ぼし、今後の南ア経済の回復にはまだまだ時間がかかる。

 

協調減産合意でも原油相場は不安定さが残る展開

OPECプラスは6日の会合で日量970万バレル規模の協調減産を7月末迄1ヶ月延長することで合意した。合意順守に向けたペナルティーを科すことも合意したが、実効性は不透明である。また、メキシコは枠組から離脱するなど早くも足並みの乱れも懸念される。 国際金融市場の活況を受けて原油市況は上値を追う可能性がある一方、米国でのシェールオイル増産を招くなど需給環境の改善に繋がるかは不透明である。よって、先行きの原油相場は国際金融市場環境の動向に揺さぶられながらの展開が続く可能性は高い。

 

米大統領選を控え欧州にも圧力強める

トランプ米大統領が先週、ドイツの駐留米軍を縮小する方針を示したことにより、欧州の地政学リスクが高まる可能性にも注意が必要となる。米大統領は先週末、3万4500人いるドイツの駐留米軍を約9500人削減するように指示した。縮小が実施されれば、北大西洋条約機構(NATO)が仮想敵国とするロシアへの抑止力が低下することになる。通貨では、欧州の地政学リスクの強弱に影響されるユーロ/スイスフランの動意につながる可能性がある。またトランプ米大統領は、欧州連合(EU)が輸入する米産ロブスターの関税を引き下げなければ、EU製自動車への報復関税を示唆した。大統領選まで約5カ月となり、低迷する支持率を挽回させるためにトランプ大統領は、『アメリカファースト』と称して他国への圧力をあらゆる形で強めてくる。国際秩序を乱すトランプ大統領が、今後も大きな市場のリスク要因となりやすい。

 

共和党の有力者からもトランプ大統領から離反

米共和党のブッシュ(子)政権で国務長官を務めたコリン・パウエル氏は7日、米CNNテレビのインタビューで、11月の大統領選で民主党のジョー・バイデン前副大統領に投票すると明言した。ミネソタ州で黒人男性が白人警官に押さえつけられて死亡した事件への対応を巡り、トランプ大統領に対する批判は共和党の有力者から軍の元幹部らにまで広がっている。パウエル氏は、黒人男性の死亡事件に端を発したデモや暴動の収束に向け、軍の投入も辞さないとするトランプ氏の強硬姿勢について『合衆国憲法から逸脱している』と非難した。

 

今回のFOMCでは緩和を据え置く見通し

米連邦準備制度理事会(FRB)は明日9日から10日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。FRBはこの会合で、異例な大規模緩和を据え置く見通し。5月雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外の増加に転じ過去最大の伸びを記録したほか、失業率も上昇予想に反して低下するポジティブサプライズも、FRBの慎重な方針を1カ月の指標で翻すには十分ではない。ブルーンバーグが実施した調査によると、対象となった市場関係者の回答者のうちほぼ半数は次のFOMCの行動はイールドカーブコントロールだと見ていることがわかった。時期は9月会合で発表される可能性が強いと見ている。また、FRBの政策の意向がより反映し易い短期物で導入する可能性が強いと見ている。第1四半期の国内総生産(GDP)はマイナス5%成長となった。5月の雇用統計を受けて雇用の回復が警戒されていたより速く、V字型回復への期待も強まりつつある。金融機関は景気見通しを引き上げた。平均で第2四半期をマイナス29%(前回マイナス40%)、第3四半期はプラス成長に回復し+12%(前回+5%)へそれぞれ引き上げた。 多くのエコノミストは景気後退が4-6月期には終了すると予想 している。

 

米国株価はコロナ以前の水準に回復も注意が必要

米雇用の回復が勢いのあるものとなるかどうかは、経済活動再開後の需要(消費)の勢い次第でもある。所得面については、米政府の給付金支給もあって4月の可処分所得は高い伸びとなったものの、これが消費に回るかどうかは5月分の消費関連統計を見極める必要がある。 また、米国の感染者数は減少に転じているとはいえ、未だに1日あたり2万人を超えるペースで増加しており、不要不急の外出を抑制する動きが続くリスクはある。加えて、全米から米国外にまで拡大している人種差別デモも、消費の足を引っ張る要素となり得る。株価はコロナ以前の水準に近づいており、戻り売り圧力にも注意が必要である。

 

欧米市場イベント

○08:01   5月英小売連合(BRC)小売売上高調査(予想:前年同月比3.0%)
○10:00   6月NBNZ企業信頼感
○10:30   5月豪NAB企業景況感指数
○14:45   5月スイス失業率(季節調整前、予想:3.5%)
○15:00   4月独貿易収支(予想:116億ユーロの黒字)
○15:00   4月独経常収支(予想:141億ユーロの黒字)
○15:45   4月仏貿易収支(予想:30.00億ユーロの赤字)
○15:45   4月仏経常収支
○17:00   レーン・フィンランド中銀総裁、講演
○18:00   1-3月期ユーロ圏域内総生産(GDP)確定値(予想:前期比▲3.8%/前年比▲3.2%)
○20:00   5月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.51%)
○23:00   4月米卸売売上高(予想:前月比▲2.0%)
○23:00   4月米卸売在庫(予想:前月比0.4%)
○10日02:00   米財務省、10年債入札
○米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目

 

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