FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:売り一巡後は模様眺めの展開

米国をはじめとして主要中銀の利上げ発表が相次ぎ、世界景気の後退懸念が意識され、前日の米株式市場での下落した流れを引き継ぎ、日本株市場でも全面的に売りが先行した。日銀決定会合は政策現状維持で利上げがあると読んでいた投資家の買い戻しが入ったとの声が聞かれた。先物が急速に戻し、連れて現物にも買いが入って2万6000円まで引き戻した。ただ、買いの勢いは強まらなかった。引け後の黒田日銀総裁の記者会見を見極めたいとのムードがあるほか、週末とあって手がけににくいことから、戻り一巡後は模様眺めとなっている。結局、前営業日比468円安の2万5963円と反落して終了した。午後に入ると日経平均は下げ渋った。

 

東京外国為替市場:日銀金融政策決定会合を挟んで乱高下

ドル/円は、前日の海外時間に急落した反動から、利益確定などのドル買い・円売りが入り、133円台前半へ水準を切り上げた。仲値にかけて本邦輸入勢のドル買い・円売りが通常よりが通常より多く観測されたことも、ドル/円の押し上げ要因となった。昼前に、日銀は16~17日に開催された金融政策決定会合で、大規模な金融緩和を継続する方針を決めた。市場参加者の一部では、日銀が今回の会合で政策を変更するとの見方が浮上していたため、発表直後はドル買い・円売りが強まり、134.63円付近まで急伸した。しかし、声明で『金融・為替市場の動向や経済物価への影響を十分注視する必要がある』との見解が示されると、海外勢からまとまったドル売り・円買いフローが持ち込まれ、132円台半ばへ急落した。その後、日米金融スタンスの違いを意識したドルの押し目買いが入り、133円台後半へ急上昇する荒い値動きとなった。午後に入ると、日銀の大規模な金融緩和継続を受けて、東京債券市場で新発10年物国債利回りが0.22%付近へ低下したことが円売りを誘い、134.30円付近へ上昇した。しかし、黒田日銀総裁の会見内容を見極めたいとの雰囲気もあり、上値を追う動きは限られた。その後は、米国市場の3連休を控えた持ち高調整などのドル売り・円買いで134.00円近辺へ押し戻された。ユーロ/ドルは、1.05ドル台前半で小動きに終始した。欧州勢待ちの様相となっている。

 

日銀は大規模緩和の維持を決定

日銀は16-17日に開いた政策決定会合で、大規模緩和の維持を決めた。短期金利を-0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)方針を据え置いた。9人の政策委員会メンバーのうち8人が賛成し1人が反対した。国債買い入れについては、上限を設けず必要な金額を買い入れる方針を継続した。国債以外の資産買い入れは、ETF(上場投信)年約12兆円、REIT(不動産投信)年約1800億円相当の増加ペースを上限に必要に応じた買い入れを決めた。なお、企業が資金調達で発行するコマーシャルペーパー(CP)と社債は、買い入れ残高を新型コロナ感染症拡大前の水準(CP約2兆円、社債約3兆円)へ徐々に戻す等資産購入には全員が賛成した。大規模緩和の維持を受け、金融引き締めを見込んでいた一部投資家が円売りに動き、ドル/円は一時134円台後半を付けたが、声明文に『金融・為替市場の動向を十分注視する必要がある』との文言が盛り込まれ、日銀が円安・ドル高に警戒感を強めたとの見方が円買い戻しに繋がり一時132円台半ばに円高が進むなど荒い値動きとなった。

 

市場の英中銀は9月までに0.75%の利上げを織り込む

英中銀は金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ1.25%と2009年来で最高の水準に決定した。5会合連続の利上げを決定した。金融政策委員会は6人が0.25%の利上げ支持。3人は0.50%の利上げを支持した。声明では、『必要に応じてインフレに対し強力に行動する』と言及した。短期金融市場では50%の確率で英中銀が9月までに0.75%の利上げに踏み切ることを織り込んだ。

 

トルコでは実質金利改善ない限りリラの重し

主要国の金融政策では、一昨日が米国の大幅利上げ、昨日はスイスが15年ぶりの利上げ、英国も追加の金融引き締めを実施した。各国が積極的なインフレ抑制に乗り出しているにもかかわらず、トルコは利上げどころか利下げにさえもエルドアン大統領が言及する始末である。トルコの大幅な実質金利マイナスが改善しない限りは、リラを積極的に買う流れにはなりそうにない。トルコ中銀が昨日発表した先週末時点の外貨準備高は、ネットで81.5億ドルと前週比20億ドル以上減少し、水準としては5カ月ぶりの低さとなった。4月末からも半分以下まで減っており、準備高枯渇が現実味を増してきている。投機筋に狙う打ちされる可能性もあり、ドル/リラの動きには注意が必要である。

 

メキシコ中銀の金融安定化報告書:FRBの決定を睨みつつ慎重に進める

メキシコ中銀が半期に一度の金融安定化報告書を発表した。報告書によると、『メキシコの金融システムは堅固で弾力的な地位を維持している』とし、最低資本金水準を満たしていることを強調した。また、ロドリゲス総裁は今後の利上げ方針についてFRBによる決定を考慮しつつ、慎重に進めていきたいとの見解を示した。

 

原油価格が安定するまでは米FRBの利上げも続く可能性

米連邦準備制度理事会(FRB)が6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げに踏み切ったほか、追加利上げに踏み切る姿勢を示したため、同時に高金利が経済を損ねるとの見方が強まった。金利見通しによると、FRBは6月、7月FOMCでそれぞれ0.75%の利上げ、続いて、9月、11月にそれぞれ0.5%の利上げの軌道で、年末までに金利を3%-3.5%に引き上げる計画である。パウエル議長は、FRBがインフレ期待指数として注視しているミシガン大消費者信頼感指数の長期の期待インフレの上昇が大幅利上げを正当化すると説明した。同時に、エネルギーや食料品価格を含めたヘッドラインインフレが直接的にインフレ期待に影響することを認めた。原油価格が安定しない限り、利上げも続くことになる。

 

予想より弱い結果となった米国経済指標

米商務省が発表した5月住宅着工件数は前月比-14.4%の154.9万戸と、4月181万戸から予想以上に減少し昨年4月来で最小となった。5月住宅建設許可件数は前月比-7%の169.5万戸と、やはり4月182.3万戸から予想以上に減少した。住宅ローン金利の上昇や建築材料の高騰を受けた住宅価格の上昇で、売り上げが伸び悩むとの見解が背景となる。米6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-3.3と、5月2.6から上昇予想に反し20年5月来のマイナスに落ち込んだ。米労働省が発表した先週分新規失業保険申請件数は前週比3000件減の22.9万件と、前回23.2万件から減少したものの予想を上回った。失業保険継続受給者数は131.2万人と、減少予想に反し前回130.9万人から増加した。5月中旬来で最高となった。

 

欧米市場イベント

○16:00   シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○17:30   テンレイロ英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○18:00   5月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比8.1%)
○18:00   5月ユーロ圏HICPコア改定値(予想:前年比3.8%)
○21:30   5月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比0.1%)
○21:30   5月カナダ原料価格指数
○21:30   4月対カナダ証券投資
○21:45   パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、あいさつ
○22:15   5月米鉱工業生産指数(予想:前月比0.4%)
          設備稼働率(予想:79.2%)
○23:00   5月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.4%)
○23:30   ピル英MPC委員兼チーフエコノミスト、講演
○18日01:00  1-3月期ロシア国内総生産(GDP)改定値(予想:前年比3.5%)
○欧州連合(EU)財務相理事会(ルクセンブルク)

カテゴリー: 欧州タイム市場コメント

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