FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:米金融引き締めに再警戒

注目されていた米ISM製造業景況指数が予想を上回る改善を示したことで、米FRBがインフレ抑制に向けた積極的な利上げサイクルを軌道修正することはないとの見方が強まった。米長期金利の上昇を促すと警戒する声が聞かれる。さらに、一時は落ち着きていた原油価格が再び上昇志向を鮮明にしたことも、インフレ圧力を強める要因として嫌気された。これを受けて日本株は朝方から軟調な展開となった。一時は前日比200円を超す下げとなったものの、中盤から押し目買いが入り下げ渋った。市場では一連の米経済指標の数値や原油価格の動向から、インフレ圧力が警戒されるとみられ、日本株も積極的に上値を買う雰囲気にはならないとの指摘もあった。結局、前営業日比44円安の27413円と反落して終了した。5月第4週(23~27日)の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家(外国人)は368億円売り越し、売り越しは2週ぶりとなった。個人投資家は1497億円の売り越し、売り越しは2週連続となった。信託銀行は85億円の売り越し、売り越しは5週ぶりとなった。

 

東京外国為替市場:130.00円を挟んで方向感の乏しい値動き

ドル/円は、高値警戒感から利益確定や持ち高調整のドル売り・円買いが入り、129.89円付近まで軟化した。米長期金利が小幅に低下したことも、ドルの押し下げに繋がった。しかし、下値では日米金融政策スタンスの違いを意識してドルを買い戻す動きも見られ、130円台前半へ切り返した。仲値にかけて国内輸入勢のドル買い・円売りが多く観測されたことも、ドル/円の下値を支えた。午後は、手掛かり材料難から積極的な売り買いは目立たず、130.00円を挟んで方向感に乏しい値動きが続いた。ユーロ/ドルは、英国市場でエリザベス女王在位70周年特別休日で休場となるため、積極的にポジションを傾けにくく、1.06ドル台半ばで小動きに終始した。

 

トルコ経済活動の鈍化が懸念:インフレが景気の足かせ

5月トルコ製造業PMIは49.2となり、3カ月連続で景況判断の境目となる50を下回った。オランダの金融大手INGグループも予想しているが、トルコ経済活動の鈍化が懸念されている。物価高による購買力低下、通貨安や供給不安などネガティブな材料が山積みである。なお昨日はトルコ国営の石油・ガス輸送会社ボタシュ(BOTAS)が、家庭用天然ガス価格を30%引き上げると発表した。また産業用については、10%から40%の値上げが決定された。電力価格に関しても、エネルギー規制当局が15%から25%上げるもようである。インフレ圧力は弱まるどころか高まるばかりであり、景気の足かせになり続けている。

 

トルコ調査機関ENAGはハイパーインフレを予想

トルコの経済学者や金融アナリストで構成される独立系の調査機関ENAGは先週、今後の同国消費者物価指数(CPI)は前年比で200%以上加速する可能性があるとの報告書を発表した。ENAGはこれまでも、トルコ統計局のインフレデータは現実を反映していないと主張している。統計局発表の4月CPIの前年比69.97%についても、同時期のENAGの調べでは156.9%としている。 ENAGの言い分に対し統計局サイドは、外国人投資家に誤った印象を与えるよう意図的に作られ、国家の評判を落とすと反発している。昨年秋になるが、当時のエルバン財務相がENAGの調査結果を無視するように国民に求めるなど、政府もかなり神経質になっている。3日には5月トルコCPIが発表予定である。一部通信社が調べた市場予想では前年比76%超えが見込まれている。トルコ中銀は先週の声明で『ディスインフレのプロセス開始』を述べていたが、中銀の期待通りにはなかなか行きそうにはない。

 

南アの5月ABSA製造業PMIが改善:回復は洪水の復興次第

南ア国内情勢のポジティブ要因としては、昨日発表された5月のABSA製造業PMIが54.8となり、前回や予想の50.7を上回ったことがあげられる。もっとも、クワズール・ナタール州東部は、4月の大洪水と停電の影響が5月にも響き、伸び悩んだとの結果が出ている。今後の製造業の回復は同州の復興次第となりそうである。

 

物価予想を『見誤った』:イエレン米財務長官

イエレン米財務長官は5月31日、米CNNテレビのインタビューで『物価上昇が辿る道筋について私は見誤った』とし、特にエネルギーと食料の値上がりや供給目詰まりが予想を超えて経済に悪影響を与えたと回顧した。イエレン長官は昨年、物価高騰リスクは小さいと述べていたが、当時の認識は間違っていたとした上で『今は理解している』とし、バイデン政権の最重要課題は物価対策だと強調した。

 

6月からFRBがバランスシート圧縮開始:どの程度の効果があるか分からず

米連邦準備制度(FRB)は6月1日から、計8兆9000億ドル(約1150兆円)に膨らんだバランスシートの圧縮を開始する。利上げと共にインフレ抑制が期待される措置だが、どの程度の効果があるのかは金融当局者も分かっていない。連邦準備制度のバランスシートは新型コロナウイルス禍を受けた量的緩和(QE)で規模が2倍に拡大。今回で2回目となる量的引き締め(QT)は最終的に前回2017-19年のほぼ2倍のペースで進められる。米国債の実際のランオフ(償還に伴う保有証券の減少)開始は約150億ドル相当が満期を迎える15日となる。ランオフのペースは月間で当初、米国債が300億ドル、エージェンシー債と住宅ローン担保証券(MBS)は175億ドルの計475億ドルに上限を設定。9月には最大で計950億ドル(内訳は米国債600億ドル、エージェンシー債・MBS350億ドル)と、前回(最大500億ドル)の2倍近くに拡大される。

 

5月米ISM製造業『景気』『物価』『雇用』指数に注目

5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明では、6月と7月のFOMCでの0.50%の追加利上げと6月からのバランスシート縮小開始が示唆された。本日発表される5月米ISM製造業『景気』『物価』『雇用』指数では、9月のFOMCでの追加利上げ幅を見極めることになる。タカ派のウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事は、5月30日に、『インフレが著しく低下するまで、毎回の会合で50ベーシスポイント刻みで利上げすることを提唱する』と述べ、9月FOMCでの0.50%の追加利上げを示唆した。米連邦準備理事会(FRB)は、『インフレピーク説』が囁かれる中、景況感、物価、雇用関連の指標にも関わらず、年末に向けて中立金利の予想中央値2.4%前後を超えて、2.75-3.00%程度までの利上げを目論んでいるのかもしれない。5月米ISM製造業『物価』指数が下落していた場合、インフレピーク説の可能性が高まることになり、ドル/円の上値を抑える要因となり、上昇していた場合は、インフレ率が再び上昇基調を回復する可能性が高まることで、ドル円の買い要因となる。

 

欧米市場イベント

○15:30   5月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.3%)
○15:45   ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○18:00   4月ユーロ圏卸売物価指数(PPI、予想:前月比2.3%/前年比38.5%)
○20:30   5月米企業の人員削減数(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社調べ)
○21:00   1-3月期ブラジル国内総生産(GDP、予想:前期比1.2%/前年同期比1.8%)
○21:15   5月ADP全米雇用報告(予想:30.0万人)
○21:30   4月カナダ住宅建設許可件数(予想:前月比0.7%)
○21:30   1-3月期米非農業部門労働生産性・改定値(予想:前期比▲7.5%)
○21:30   前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.0万件/132.5万人)
○23:00   4月米製造業新規受注(予想:前月比0.7%)
○24:00   EIA週間在庫統計
○3日00:15   デコス・スペイン中銀総裁、講演
○3日02:00   メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
○石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合(オンライン)
○エリザベス英女王即位70周年で英国休場(5日まで)

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