FITS エコノミックレポート

欧米タイム直前市場コメント!

日経平均株価:米国の金融政策に対する警戒感から売り優勢

前場中盤ではプラス圏に浮上する場面があったが、心理的節目の2万7000円回復後は利益確定売りに押され、再びマイナス圏に転落した。米長期金利が上昇する中、ハイテク株安となった米市場の動向を嫌気したほか、このところのアジア株の軟調な値動きも重石になった。市場では、上海でのロックダウン(都市封鎖)やウクライナ情勢などの懸念材料がある中で決算シーズンが始まり、積極的に買いづらいろの声が聞かれた。結局、前週末比164円安の2万6821円と反落して終了した。

 

東京外国為替市場:米長期金利上昇で125円前後の高値圏での売買が継続

ドル/円は、日経平均株価が軟調なスタートとなったことでリスク回避のドル売り・円買いが先行し、一時124.28円付近まで下落した。しかし、米長期金利が上昇に転じると、日米金利差拡大を意識したドル買い・円売りとなり124.52円付近までじり高となった。その後、仲値にかけて本邦輸入勢などのドル買い・円売りが通常より多く持ち込まれ、124.64円付近まで上値を伸ばした。仲値発表後も、ドル買い基調が続き、124.99円付近まで更に上値を伸ばした。黒田日銀総裁が支店長会議で『コロナの影響を注視し、必要なら躊躇なく追加緩和する』などと発言し、日米金融政策スタンスの違いが改めて浮き彫りになったことや、日経平均株価が一時プラスに転じたこともドル買い・円売りを促した。午後のドル/円は、米長期金利が、2019年3月以来の水準となる2.78%台に乗せるなどして、ドル買い圧力が増しているが、3月28日につけた125.10円が意識されており、一時125.05円付近まで上値を伸ばしたものの、上値を追う動きは鈍かった。大局的には、125円前後の高値圏での売り買いが続いている。午前中に内田日銀理事が『為替相場が短期的に過度に変動すると不確実性が高まる』などと発言したことも、市場の警戒感を誘いドル買いを控える動きにつながった。ユーロ/ドルは、1.088ドルの台を中心とする狭いレンジで取引された。欧州勢待ちの様相となっている。

 

ドル買い比率は低下・仏大統領選前にユーロ買い比率は上昇

QUICKが11日に算出した8日時点の店頭の外国為替証拠金(FX)5社合計の建玉状況によると、『ドル/円』取引の総建玉に占めるドル買い比率は前の週末から7.5ポイント低下の56.2%だった。前週は日米の金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが進んだ。円安・ドル高が進むなかで、相場の流れに逆らう『逆張り』戦略をとる傾向が強いとされる個人投資家は円買い・ドル売りの持ち高を増やした。『ユーロ/ドル』取引ではユーロ買い比率が58.4%と、前の週から13.1ポイント上昇した。前週のユーロ相場は対ドルで下落基調が続き、個人からは『逆張り』の買いがユーロに集まった。10日に1回目の投票が実施された仏大統領選を前に、極右国民連合のルペン党首が追い上げをみせるなど、欧州政治の不透明感がユーロ相場の重荷になっていた。

 

ECBはQE7月終了で12月利上げ開始か

欧州中央銀行(ECB)は、ウクライナの戦争がユーロ圏の経済成長に及ぼす脅威に目をつぶり、資産購入による量的緩和(QE)を今夏で終了する一方、12月に過去10年余りで最初の利上げに動く準備を整える見通しである。最新の調査に回答したエコノミストらが予想した。ユーロ圏のインフレ率はECBの物価目標(2%)の既に4倍近いペースに加速し、ロシアのウクライナ侵攻の影響でさらに拍車が掛かる状況にある。調査結果によれば、純資産購入は7月に終了し、中銀預金金利(現行マイナス0.5%)は約9年ぶりに来年3月時点でゼロに戻ると見込まれる。ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーも、12月の利上げ開始後に政策金利が漸進的に引き上げられるとみている。

 

ロシアから流出した投資資金がトルコに向かいリラの支え

ロシアのウクライナ侵略を巡っては、トルコ観光業への打撃が懸念される。ただ一方で、トルコ防衛産業にとっては追い風が吹いているとの報道も見られる。ウクライナへの武器輸出だけではなく、(攻撃力やコストパフォーマンスなどが認められ)他国からも軍事関連でトルコへの引き合いが増えてきている。また、欧米によるロシアへの経済制裁強化により、同国から流出した投資資金がトルコにも向かっている、または向かう可能性があることもリラの支えとなっている。露・富裕層がトルコの不動産を買いあさっているとされ、また同国・不良債権市場にロシアから資金を引き出した運用会社が興味を示しているとも一部通信社が報じている。もちろん、インフレ高騰にもかかわらず、トルコ中銀が利上げに動けないのはリラにとってはネガティブな材料である。3月トルコ消費者物価指数(CPI)は前年比61%台まで加速したにもかかわらず、中銀金融政策委員会(MPC)は今週、政策金利を14%で据え置くことが確実視されている。

 

代替輸出国の通貨としての南アランド買いが続きそう

先週6日より南アでガソリンやディーゼル価格の改定が始まった。ゴドンワナ南ア財務相が、5月末まで一般燃料税を1リットル当たり1.5ランド引き下げると発表したことで、当面は上げ幅が限られる。しかしながら、財政的にそれほど余裕があるわけでもなく、5月末以後もこの減税が継続されるかも不透明である。南アのインフレ圧力は高く、金利上昇によるランドの買い意欲は依然として強い。また、ロシアに対する追加制裁で、先週は下押しする場面もあったが、コモディティ価格が堅調な動きをみせている。代替輸出国の通貨としてのランド買いの流れも続きそうである。

 

日本とメキシコの金融政策の違いがペソ下支え:米国との対立が深まる懸念

前週に公表された3月メキシコ消費者物価指数(CPI)は前年比で7.45%の上昇となり、市場予想や前月分を上回る結果となった。メキシコ銀行(中央銀行)内でこれまで利上げに慎重な姿勢を見せていたエスキベル、ヒース両副総裁が足もとでタカ派寄りの発言をしていることもあり、今後も中銀の金融引き締め姿勢は継続すると思われ、日本とメキシコの金融政策の違いがペソ/円を下支えする。一方、懸念材料となるのがロペスオブラドール大統領が推し進める電力改正法案である。先月にはケリー米大統領特使がロペスオブラドール大統領との会談で電力改正法案の見直しを求めたほか、米国通商代表部(USTR)は電力改革が実現した場合は対抗措置を取る姿勢を示しており、米国との対立が深まることが予想される。

 

ハト派のブレイナード理事がタカ派に

米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長指名で、通常はハト派として知られるブレイナード理事が今週初めに開催されたイベントでバランスシート縮小を17-19年に比べてかなり速やかに実施していく方針も再表明した。早くて5月連邦公開市場委員会(FOMC)に速やかにバランスシート縮小開始する可能性が強いと言及した。加えて、FRBが今週公表した3月開催分のFOMC議事録の中で、保有資産の縮小を各月950億ドルペースと、2017-19年の2倍のペースで実施することで合意したことが明らかになった。また、多くのメンバーが年内0.5%ポイントの数回の利上げの必要性を主張したことが明らかになった。ウクライナ戦争は成長リスクになると同時に、インフレの上方リスクになるとの見方が影響した。22年の連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を有するセントルイス連銀のブラード総裁は、FRBの政策が立ち遅れており、下半期に政策金利であるFF金利誘導目標を3%-3.25%まで引き上げることが望ましいと急速な利上げの必要性を主張した。年内、利上げで3%、バランスシート縮小の効果で0.5-0.75%の利上げに相当、3.5-3.75%程度に金融政策が引き締まる見通し。今後は、経済がこのペースの利上げに十分なだけ強まるかどうかに注目が集まる。

 

欧米市場イベント

○15:00   2月英国内総生産(GDP、予想:前月比0.2%)
○15:00   2月英鉱工業生産(予想:前月比0.3%/前年比2.1%)
○15:00   2月英製造業生産高(予想:前月比0.3%)
○15:00   2月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:167.00億ポンドの赤字/71.50億ポンドの赤字)
○15:00   3月ノルウェーCPI(予想:前月比1.1%/前年比5.0%)
○16:00   2月トルコ経常収支(予想:53.0億ドルの赤字)
○16:00   2月トルコ失業率
○20:00   2月メキシコ鉱工業生産(季調済)
○22:30   ボスティック米アトランタ連銀総裁、あいさつ
○22:30   ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事、ウォラーFRB理事、あいさつ
○12日01:40   エバンズ米シカゴ連銀総裁、講演
○12日02:00   米財務省、3年債入札

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